第一部−2− 宇宙の科学

このページの目次
第4章 太陽系(5)
1.惑星(2) 惑星各論−4−
d.木星
 d-1.木星
 d-2.木星の衛星
 付録:宇宙人へのメッセージ
用語と補足説明
参考になるサイト

第4章 惑星

1.惑星(2) 惑星各論−4−

d.木星

d−1.木星(Jupiter

 木星は太陽系最大の惑星である。その赤道半径(71492km)は地球の約11倍(太陽の約1/10)、質量は地球の約320倍(太陽の約千分の1)もあり、他の太陽系の天体の質量の合計よりもまだ2倍も大きい。ただ、半径が11倍(体積では1000倍以上)あるのに、質量が320倍ということは、密度が地球よりかなり小さいことを示している。実際、木星の密度は1.33×103kg・m-3(地球は5.52×103kg・m-3)でしかない。木星の密度が小さいのは、木星は地球型惑星のような岩石(マントル)と金属(核)というものではなく、水素とヘリウムを主成分とするガスの惑星(木星型惑星)だからである。木星は巨大な質量を持っているので、表面重力も大きく(地球の2.37倍)、脱出速度も59.53km・s-1(地球は11.18km・s-1)と大きい、また太陽から遠く表面温度が低い(-130℃)ので、水素やヘリウムといった軽いガスを保持できるのである。木星は水素90%、ヘリウム10%で、この二つでほとんどを占めている。あとは、微量のメタン、水、アンモニア、さらに中心部は氷と岩石の核が存在していると考えられている。

 木星は太陽系最大の惑星であるが、自転も惑星の中で一番速い。自転の周期は0.414日(9.9時間)である。もっとも地球型惑星のような固体の表面がないので、この自転周期は外側の大気の模様から見たものである。木星はガスの惑星といっても、その中は超高圧になっているので、水素は液体に、さらに液体金属状態になっていると思われる。木星には強い磁場があり、その強い磁場は広大な磁気圏をつくっていた、木星の衛星はすべてこの中に入っている。また、地球のバン・アレン帯のような強い放射能帯も持っている。これは木星探査機を送り込むときの障害になる。また、強い磁気は極地方の明るいオーロラ(下写真参照)を作り出す。

 自転が速いために遠心力も強く、扁平率は0.065と土星(0.108)に次いで大きい。なお、地球の扁平率は0.0034(約1/300)である。公転周期は11.862年で、これは土星の公転周期29.458年とほぼ2:5という尽数関係になっている。

 木星の表面には、赤道に平行なたくさんの縞模様が見られる。白っぽいところは大気の上昇部分、暗いところは大気の下降流部分といわれる。朱っぽい色は硫黄やリン、もしかすると有機物の存在を示すものかもしれない。木星はガス体で、縮むことによって熱を今でも出している。この木星内部から出てくる熱は、太陽から送られてくるエネルギーよりも大きく、それが地球の大気の運動(地球ではほとんど太陽からのエネルギーが大気の運動の原因)とはまったく異なるメカニズムで大気の運動がを生んでいる。中心部の温度は数万℃に達していると思われる。もちろんこれは太陽のような核融合反応の熱ではない。ただ、もし木星の質量があと50〜100倍程度あれば核反応が始まり、第2の太陽になったともいわれている。

 もう一つ表面の模様で特徴的なのは、多くの斑点が見られることである。これらは大気の渦である。その中でも最も大きいものは大赤点(大赤斑)といわれていて、17世紀にカッシーニ(イタリア、フランス、1625年〜1712年、土星の環の「カッシーニの間隙」の発見者、パリ天文台長を勤める。カッシーニについてはこちらも参照)が見つけから、今日まで300年以上も続いている。大きさは地球3個〜4個という巨大な、左巻きの大気の渦である。こうした大気の渦がなせ、数百年間も安定で存在できるのかはわかっていない。もっとも、小さな渦の寿命は短い。

 木星の表面の反射率は高く(0.73)、また大きさも大きいので、最大光輝(見かけの等級)は-2.8に達する。これは惑星の中では金星(-4.7)、火星(-3.0)に次ぐ。

 ボイジャーの観測によって、木星にも環があることが発見された。ただし、土星の壮大な環とは異なり、細くて暗いものである。おそらく岩石の粒でできているのだろう。

ハッブル宇宙望遠鏡で見た木星。右に大赤点が見られる。 ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた木星のオーロラ。極(磁極)をドーナツ状に取り巻いて輝いている。土星にも同じようなオーロラが見られる。
大赤点。渦巻きの様子がわかる。ハッブル宇宙望遠鏡。 ガリレオが撮影した木星の環
http://ringmaster.arc.nasa.gov/jupiter/galileo/PIA01621.html

NSSDC Photo Gallery:http://nssdc.gsfc.nasa.gov/photo_gallery/

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d−2.木星の衛星

 木星は発見されているだけでも60個以上の衛星をもっている。しかし、大きいのは4つで、ガリレオ(イタリア、1564年〜1642年)が、自分で作成した望遠鏡で木星を観測したときに見つけた(1609年ころ)。そこで、この4つの衛星(木星に近いものから、イオエウロパガニメデカリスト)を総称してガリレオ衛星という。これ以外の衛星は小さく、火星の衛星のようにジャガイモ形をしている。ガリレオは、ガリレオ衛星が木星のまわりを回っていることから、惑星が太陽のまわりを回っていること(地動説)を確信したという。

イオガリレオ生成の中では、木星に一番近い軌道を回っている。半径1821kmで、月より少し大きい。密度は3.57×103kg・m-3で月(密度3.34×103kg・m-3)に近い。このことより、岩石主体の天体であることがわかる。イオには数多くの活火山が存在している。地球以外で、活火山の存在が確認できたのは、ほかに海王星の衛星トリトンだけである。大きさのほぼ等しい月は、すでに数十億年前に火山活動が終わっている(内部が冷えてマグマが存在できなくなった)のに、なぜイオでは火山活動は現在でも続いているかは謎であるが、おそらく木星と、外側を回っている巨大衛星ガニメデ、カリストの引力(正確には潮汐力)により、内部に摩擦が生じ、その摩擦熱でマグマが発生していると思われる。イオの火山は溶岩を流し、また二酸化イオウの噴煙を300km近い高さ(表面重力が地球の0.23倍と小さいので地球とは単純に比較できないが)まで噴き上げている。こうした活発な火山活動により、表面波恒に更新されているので、クレーターは見られない。

エウロパ半径1565kmで、ガリレオ衛星の中では最も小さい(月よりも小さい)。密度は3.01×103kg・m-3と、イオより少し小さい。中心部は岩石の核があり、外側は氷であり、その中間には液体の水が存在していると考えられている。表面には不思議な網目模様や、表面の氷の割れ目から下の水が噴き出して固まったような地形も見られる。ほぼ確実に液体の水が存在しているので、生命がいる可能性があるのではないかともいわれている。

ガニメデ半径は2634kmであり、月はもちろん水星(半径2440km)よりも大きい太陽系最大の衛星である。密度は1.94×103kg・m-3と小さいので、岩石の核は小さく、その外側を氷(内部は水になっている可能性もある)がおおっている。表面波大変に暗いので、氷には岩石の粒(塵)がたくさん混じっているようだ。クレータもたくさん見られるが、ガニメデは氷の表面なので、月の表面(岩石)のクレータとは少し様子が違っている。

カリスト半径は2403kmであり、水星(半径2440km)に近い。太陽系の中では土星の衛星タイタン(半径2575km)に次いで、3番目の大きさの衛星である。密度は1.86×103kg・m-3とガニメデに近いので、内部構造・組成はガニメデに似ていると思われる。ガリレオ衛星の中では木星から一番遠いところを回っている。

イオの表面。たくさんの火口(カルデラや溶岩湖も)が見られる。 100km以上の高さに噴き上がる壮大なイオの噴煙。右の上はボイジャー、下がガリレオが撮影。地形が変わっている。
エウロパの表面の網目模様。 エウロパの表面の拡大。氷の破片がぶつかり合っている?
暗いガニメデの表面。クレータがたくさん見られる。 表面の拡大写真。クレータの形が月などと違うことがわかる。
ボイジャーが撮影したカリスト 表面のクレータ。ガニメデに似ている。
その他の小さな衛星。球形ではなく、いびつな形をしている。 木星とガリレオ衛星(上からイオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)のボイジャーの合成画像。

上の写真(ボイジャー以外はガリレオ)はNSSDC Photo Gallery:http://nssdc.gsfc.nasa.gov/photo_gallery/

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用語と補足説明

Jupiterローマ神話では神々の中の王である(ギリシャ神話のゼウス)。いつも浮気がばれて、妻のヘラに頭が上がらない、あまり威厳のない神だが。

液体金属水素密度が高くなると水素原子の間隔が狭くなって電子軌道が接近してくると、電子が原子核の束縛から逃れて自由に動くことができる自由電子になる。つまり金属と同じ状態になって、伝導体になる。この液体金属水素の存在と、高速の自転が電流を作り出し、それが木星の強い磁場(地球の1200倍の磁気圏を持つ)の原因と考えれている。

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木星探査機アメリカは1972年3月に重量250kg程度のパイオニア10号、1973年4月に11号を打ち上げた。パイオニア10号は1973年12月に木星に最接近(131500km)した。パイオニア10号はその後も飛行を続けている(1997年で67AU、めい王星までの平均距離は39.5AU)にあり、おうし座のアルデバランを目指している。アルデバラン到着は200万年後の予定)。最後の通信は、2003年1月で、このときの距離は81AUであった(2004年8月13日で86.11AU)。パイオニア11号は1974年12月に木星に最接近(41000km)した後土星に向かい、1979年9月に土星に最接近(21000km)した。パイオニア11号の最後通信は1995年9月で、このとき太陽から47.8AUの距離にあった。年間2.5AUの速さで太陽系外を目指している。パイオニア10号、11号には知的生命に拾われたときに、地球と人類のことがわかるようなペナントが取り付けられている。この件についてはこちらを参照

 アメリカは1977年9月と8月に重量700kgを越えるボイジャー1号、2号を打ち上げた(1号にトラブルがあり打ち上げが遅れた)。1号は1979年3月に木星に最接近(350000km)、さらに1980年11月に土星に最接近(120000km)した。2号は1979年7月に木星に最接近(74000km)、さらに1981年8月に土星に最接近(10100km)したばかりではなく、1986年1月に天王星(10700km)、1989年8月に海王星(48000km)のも接近してさまざまな観測を行った。ボイジャー1号はすでにパイオニアを追い抜いて、年3.5AUの速さで太陽系外を目指している(2003年11月で90AU)。ボイジャー2号も、年3.13AUの速さで太陽系外を目指している。ボイジャーにも、知的生命に拾われたときのために、地球の情報を入れたレコード盤が摘まれている。これについてもこちらを参照

 現在、太陽系外を目指して飛行しているのは(太陽(系)からの脱出速度を得たのは)、このパイオニア10号、11号、ボイジャー1号、2号の4機のみである。これらの探査機はスウィングバイ(スイングバイ)という手法で太陽系からの脱出速度を得た。

 1977年に打ち上げられたボイジー1号、2号は観測データを現在(2012年)も地球に送り続けている(あと10年程度?)。そして2012年にボイジャーは「太陽系の縁」に到達したようである(この場合の「縁」は太陽の磁気圏(磁気シールドの範囲)を越えたため、観測される宇宙線が急増したことで判断された)。2012年8月8日現在、ボイジャー1号は太陽から121.5AU(太陽−地球間の距離の121.5倍)、ボイジャー2号は99.2AUの距離にまで達している。

 アメリカはさらに、1989年にスペースシャトルからガリレオを打ち上げた。ガリレオは2トンを超える巨大な探査機で、オービター(周回機)とプルーブ(大気に投下される観測器)に別れている。ガリレオはまず金星に向かって飛び出し、金星でスウィングバイ(スイングバイ)を行い、さらに地球に戻って2回にわたってスウィングバイを行って加速して木星に向かい、1995年に木星に到着した。オービターから切り離されたプルーブは、木星大気を降下しながら1時間以上に渡ってデータを送ってきた。木星に到着する前には、小惑星の観測を行ったりしている。ガリレオについてはこちらも参照

パイオニア
http://www6.uniovi.es/solar/cap/craft/pion.htm
ボイジャー
http://nssdc.gsfc.nasa.gov/
planetary/voyager.html
木星大気を降下するガリレオのプルーブ(想像図)。
http://nssdc.gsfc.nasa.gov/
planetary/galileo.html#overview

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このページの参考になるサイト

日本惑星協会:http://www.planetary.or.jp/

宇宙航空研究開発機構のオンライン・スペースノート:http://spaceinfo.jaxa.jp/note/note_j.html

The Nine Planets(英語):http://www.nineplanets.org/(日本語に訳したサイトもあるが更新が遅れ気味)。本家では「nine Planet」→「nine() Planet」としている。

NSSDC Photo Gallery(英語):http://nssdc.gsfc.nasa.gov/photo_gallery/

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