1.惑星(2) 惑星各論−5−
e.土星
e−1.土星(Saturn)
土星でもっとも目立つのは、その壮大な環(輪)である。すでに、ガリレオ(イタリア、1554年〜1642年)が望遠鏡で土星を見たときにそれを見たが、彼ははっきりと環とは認識できなかった。環であることを確認したのはオランダのホイへンス(オランダ、1629年〜1695年)で、1655年のことである。
土星の環は30万km以上の幅を持つが、厚さは100m以下、せいぜい数十mといわれている。このため、この環を真横から見ることになると、地球からは大望遠鏡でも環が見えなくなる。環は板ではなく、おもに細かい氷の粒でできていて、岩石の粒(表面は氷で覆われているかもしれない)なども混じっている。
環は一様ではなく、A環からG環に別れる。A環とB環の間のすき間が“カッシーニの間隙”である。カッシーニについてはこちらも参照。さらにボイジャー1号、2号の観測により、環はさらに細かい環からなっていること、これまでに発見された間隙にも薄い環があることなどを発見した。また、B環にはスポーク状の模様があることも見つけた。これは、環が粒でできていれば、土星本体に近い粒ほど速く、遠い粒ほど遅く土星のまわりを回るために、こうした模様は維持できないはずであるので、不思議な模様である。おそらく土星の強い磁場が関係しているといわれている。外側のF環もねじれた構造をしていて不思議である。
土星本体の大きさは、木星に次いで太陽系2番目の惑星である。赤道半径は60268km(地球の9.4倍、体積では1000倍近い)であるが、質量は地球の95倍しかない。これは土星の密度が小さいことを示している。実際土星の密度は0.69×103kg・m-3でしかない。これは水の密度(1.0×103kg・m-3)より小さい(水に浮いてしまう密度)。惑星の中で最小である。
土星の自転は木星に次いで速く、自転周期は0.444日(10時間40分)である。このため赤道方向に大きく張り出し、扁平率は0.108と太陽系の惑星の中で最大となっている。なお、地球の扁平率は0.0034(約1/300)である。
土星の公転周期は29458年で、これは木星の公転周期11.862年とほぼ5:2という尽数関係になっている。
土星も木星と同じく、内部から流れ出てくるエネルギーの方が、太陽から送られてくるエネルギーよりも大きい。このため、大気の運動も木星のようになっているが、木星のような顕著な縞模様は見られない。木星のような大赤点はないが、白斑と呼ばれる大きな大気の渦が発生することはある。また、上空にはつねに50m・s-1以上の強い風が吹いている。木星よりも太陽から遠いために、(雲の)表面の温度-170℃程度である。
土星の主成分は木星と同じく水素とヘリウムで、この水素が高圧に達している内部では液体金属水素になっていると思われる。そして、高速の自転と相まって、木星のように強い磁場を持っている。上の写真はハッブル望遠鏡が撮影した土星のオーロラ(http://imgsrc.hubblesite.org/hu/db/1998/05/images/a/formats/web.jpg)。木星と同じように極(磁極)のまわりにオーロラが見られる。
土星探査機については下を参照。
e−2.土星の衛星
土星には30個以上の衛星が発見されており、これは木星の衛星の数に次いで多い数である。中には環に影響(引力)を及ぼしてその形を支配している“羊飼い衛星”と呼ばれているものもある。
そうした惑星の中で、もっとも注目されるのは土星最大のタイタン(チタン、Titan)であろう。半径は2575kmで、これは木星のガニメデ(半径2634km)に次ぐ太陽系2番目の衛星であり、水星(半径2440km)よりも大きい。そして何よりもタイタンには、ちっ素を主成分とする濃い大気(資料によって地球の1.5倍〜4倍)を持っている。大気にはまたメタンやエタノールも含まれている。さらに、水蒸気の存在も確認されている。タイタンの大気の上部には、メタンと太陽光が反応してできたと思われるオレンジ色の分厚い赤いもや(スモッグ)があり、タイタンはそれにおおわれているので表面を見ることができない。密度は1.8×103kg・m-3なので、氷を主成分として、内部に岩石の核がある天体だと思われる。木星の衛星エウロパと並んで、生命が存在する確率が高いと思われている。また、地球以外でちっ素を主成分とする唯一の惑星・衛星である。
タイタンの表面は、ボイジャー1号、2号の精巧なカメラでもスモッグしか撮影できなかった。2004年からカッシーニ・ホイエンスが土星の観測を行っていて、ホイヘンスは2005年1月14日、タイタンに軟着陸した。タイタンの表面では液体のメタン(あるいはエタノール)が存在していて、それが地球の水の役割を果たしているようである。
ホイエンスが撮影したタイタンの地表。液体(メタン?)の流路(川)と海らしき地形が見える。 http://www.nasa.gov/mission_pages/cassini/main/index.html |
着陸したホイエンスが撮影したタイタンの地表。真ん中で二つ並んでいる岩(メタンの固体?)の大きさは15cm程度。 http://saturn.jpl.nasa.gov/news/ press-release-details.cfm?newsID=532 |
カッシーニが撮影した衛星フェーベ http://www.nasa.gov/mission_pages/cassini/ main/index.html?flash=0 |
カッシーニが撮影した衛星イアペタス。赤道に巨大な山脈(高さ20000m、長さ1300kmに達する)。 http://saturn.jpl.nasa.gov/news/ press-release-details.cfm?newsID=526 |
Saturn:Satrunはローマ神話では農業の神。ギリシャ神話ではクロノス。クロノスはゼウスの父。
土星探査機:土星に最初に近づいたのは、アメリカの1979年のパイオニア11号であった。地球からは絶対に見ることができない土星の極地方の写真を送ってきた。ついで、1980年、81年にボイジャー1号、2号が接近して、土星本体や衛星の観測を行い、たくさんの見事な写真を送ってきた。パイオニアやボイジャーについてはこちらも参照。
現在進行中(2004年9月)のミッションは、カッシーニ・ホイヘンスである。カッシーニもホイへンスも、土星観測の初期に功績のあった人たちである。カッシーニ・ホイヘンスはアメリカNASAの土星と衛星を外側から観測するカッシーニと、ヨーロッパのタイタンを観測して最終的にはタイタンに突入する予定のプルーブであるホイヘンスからなる。カッシーニ・ホイヘンスは1997年に打ち上げられ、金星-金星-地球-木星とスウィングバイ(スイングバイ)して、2004年7月1日ようやく土星に到着した。ホイヘンスは2005年1月ににタイタンに突入して、タイタンの地表の画像をはじめとする貴重なデータを地球に送ってきた。(右は土星に近づくカッシーニ・ホイヘンス:http://saturn.jpl.nasa.gov/operations/index.cfm)
恐怖の大王?:カッシーニ・ホイヘンスは太陽から遠い土星を観測するために、太陽電池ではなくプルトニウム電池を積んでいる(プルトニウム238の崩壊熱で発電、ボイジャーも同じ)。プルトニウム238もプルトニウム239と同じく非常に危険な物質である。このため、1999年8月に地球でのスウィングバイを行ったとき、それに失敗して地球に激突するとそのプルトニウムが飛び散って大変なことになる、これこそが例の“恐怖の大王”の正体であるというということをいう人たちがいた。旧宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構JAXA)は、1999年8月にわざわざ、「カッシーニ探査機の地球スウィングバイは、1999年8月18日(日本時間)に無事完了しました。」という声明を出した。
日本惑星協会:http://www.planetary.or.jp/
宇宙航空研究開発機構のオンライン・スペースノート:http://spaceinfo.jaxa.jp/note/note_j.html
The Nine Planets(英語):http://www.nineplanets.org/(日本語に訳したサイトもあるが更新が遅れ気味)。本家では「nine
Planet」→「nine
NSSDC Photo Gallery(英語):http://nssdc.gsfc.nasa.gov/photo_gallery/