第一部−2− 宇宙の科学

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第4章 太陽系(10)
2.太陽系小天体−1−
a.小惑星
用語と補足説明
参考になるサイト

第4章 太陽系(10)

2.太陽系小天体−1−

a.小惑星

 火星と木星の軌道の間は奇妙なほど広いので、惑星の存在が考えられていた。そしてようやく1801年に、イタリアのピアジによって新天体「セレス」が発見された。しかしこの天体は、直径が910km(月の1/4くらい)しかなかった。その後、火星と木星の軌道の間に続々と天体が見つかったが、結局セレスよりも大きいものはなかった。セレスのように大きなものは球形をしているが、小さいものは火星の衛星フォボス・ダイモスのように不定形をしている。

 なお、セレスは2006年8月24日の国際天文連合により、新しくできた太陽系の種別の一つであるdwarf planet ということになった。この件についてはこちらを参照。つまりセレスは、小惑星帯に存在するdwarf planetということになった。

 これらの小天体をまとめて小惑星という。現在、名前が付いたものだけでも(軌道がはっきりとわかっているものだけでも)6000個以上、存在だけなら数十万個以上の小惑星が発見されている。しかし、これらの小惑星の質量を全部合計しても地球の質量の1/1000以下(月よりも小さい)、しかもセレスがその半分くらいを占める。

 小惑星は反射する太陽光のスペクトルによって大きく3つに分類されている。一つは炭素質で非常に暗いC型小惑星(75%)、もう一つは比較的明るい灰色がかったケイ素質(石質:15%)のS型小惑星、最後に非常に明るい金属質のM型小惑星(10%)の3つである。

 小惑星の大部分は、火星と木星の間を回る軌道を持っている。さらに細かくいえば、2.2AU〜3.2AUの間に多い。しかし、火星、あるいはさらに地球の軌道の内側に入り込み、太陽に近づくものもある(アポロ・アモール群)。その中には地球に近づくものもあり、これらを地球近傍小惑星(NEO)という。たとえば、小惑星エロスは地球へ2300万kmまで、小惑星アポロは400万kmまで、そしてヘルメスは77万kmまで接近した。ちなみに地球と月の距離は38万kmである。もっと小さいものならば、月の軌道の内側にまで近づくものもある。こうしたものの中には、地球に衝突するものもあり、それが隕石と考えられている。また、木星の軌道上に存在する小惑星(トロヤ群、太陽-木星と正三角形になる位置)というものもある。さらに木星の軌道の外側に軌道を持つものもある。

 火星の軌道と木星の軌道の間に存在する小惑星も均一に分布しているのではない。ところどろに小惑星があまり存在していない範囲もあり(カークウッドの間隙)、そこは木星の公転周期と1:2とか、2:5というと尽数関係になる場所である(太陽からの距離で公転周期は決まる=ケプラーの第3法則)。惑星どうしでは安定である尽数関係が、木星と小惑星では不安定になるようである。もっとも、木星の公転周期と3:4や2:3になるところには小惑星がたくさん存在している。このように尽数関係の意味はよくわかっていない。

 小惑星の起源については、大きな惑星が壊れてできたものという説と、惑星になれなかった微惑星という説の2つがあるが、今のところどちらが正しいのかはわからない。しかし、地球や太陽系の起源を探る上で重要な手がかりを与えるだろうと思われている。そこで、直接探査機を飛ばしての探査も行われている。

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用語と補足説明

小惑星探査機木星探査機ガリレオは木星への飛行の途中で、1991年10月29日に小惑星ガスプラ、1993年8月28日に小惑星アイダとその衛星のダクティルの撮影に成功した。これは、衛星を持つ小惑星の初めての発見でもあった。

 またアメリカは、より早くよりよくより安く(Faster,Better,Cheaper)というディスカバリー計画の第1弾として、1996年に小惑星探査機シューメイカー・ニア(Near Earth Asteroid Rendezvous)を打ち上げた。1997年にまず小惑星マチルダを観測したのち地球を利用したスウィングバイ(スイングバイ)を行い、本来の目標であるエロスに向かった。2000年2月14日(バレンタインデー)にエロスとランデブーしたニアは、その後1年あまりに渡り、ときにはエロスの地表3kmにまで接近してエロスを周回した。そしてミッションが終了した2001年の2月にエロスへの軟着陸を試みてこれに成功した。ニアのサイトではエロスや着陸の様子を動画でも見ることができる。なお、エロス表面からの脱出速度は3.1〜17.2m・s−1(場所によって違う、地球表面からの脱出速度は11.2km・s-1)しかないので、あまり厳密な制御をしなくても(高いところから自由落下しても)それほどの速さで衝突するわけではない。

 現在(2004年9月)、小惑星を目指して飛行しているのは、2003年5月に打ち上げられた日本の“はやぶさ”(工学実験衛星ミューゼスC)である。ハヤブサは、イオンエンジンなどの新技術を試しつつ、地球近傍小惑星“イトカワ”(1998SF36)を目指して飛行中である。順調にいけば2005年夏に到着し、サンプルを採集したのち、2007年に地球に戻る予定である(サンプルリターン計画)。

 ※ はやぶさは2005年10月10日にイトカワに到着。その後、11月に数回イトカワに軟着陸、さらにはサンプル採集を試みた。軟着陸(タッチダウン)には成功したようだが、サンプルを採集できたかは不明である。また、姿勢制御エンジンが壊れたために、メインエンジン(イオンロケット)を姿勢制御にも使わざるを得ない状態になっている。地球帰還も3年遅れの2010年ということになるが、それすらも難しい状態になっている。(2006年1月10日記)

※ その後、関係者の必死の努力もあって、2010年6月に奇跡の地球帰還を果たした。大気圏再突入で本体は燃え尽きたが、カプセルの回収に成功した。そのカプセル内には、タッチダウンの時に巻き上げられたものと思われるイトカワの粒子も入っていた。

木星探査機ガリレオが撮影したガスプラ
http://nssdc.gsfc.nasa.gov/
photo_gallery/photogallery-asteroids.html
アイダと衛星
http://nssdc.gsfc.nasa.gov/
photo_gallery/photogallery-asteroids.html
ニアが撮影したマチルダ
http://near.jhuapl.edu/Mathilde/images.html
エロスの表面。範囲は250m。
http://near.jhuapl.edu/iod/archive.html
エロスの全体と部分拡大
http://near.jhuapl.edu/iod/archive.html
小惑星イトカワを目指して飛行するはやぶさ
http://www.jaxa.jp/
missions/projects/sat/exploration/muses_c/index_j.html
はやぶさが撮影したイトカワの全体像(JAXAはやぶさのページ)
http://www.hayabusa.isas.jaxa.jp/j/index_30.html
はやぶさが撮影したイトカワの部分拡大像(JAXAはやぶさのページ)
http://www.hayabusa.isas.jaxa.jp/j/index_35.html
地球に帰還するはやぶさのカプセルの光跡(小惑星探査機はやぶさ物語)
http://spaceinfo.jaxa.jp/hayabusa/photo/index.html
オーストラリアのウメーラ砂漠に降り立ったカプセル(小惑星探査機はやぶさ物語)
http://spaceinfo.jaxa.jp/hayabusa/photo/index.html
はやぶさが持ち帰ったイトカワの粒子。石質隕石の仲間であることが確認された。
http://www.isas.jaxa.jp/j/topics/topics/2011/0311.shtml

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地球に接近した小天体2004年8月24日段階での、地球に最接近した天体の一覧表。

接近距離(地球の中心から) 接近日 天体名 直径(推定)
1万3000km  2004.03.31 2004 FU162 8m
4万9000km  2004.03.18 2004 FH 30m
8万4000km 2003.09.27 2003 SQ222 5m
10万8000km 1994.12.09 1994 XM1 10m
11万8000km 2002.12.11 2002 XV90 45m
12万0000km 2002.06.14 2002 MN 95m
14万8000km  1993.05.20 1993 KA2 7m
14万8000km 2003.12.06 2003 XJ7 35m
16万2000km 2003.09.19 2003 SW130 7m
16万6000km 2004.07.16 2004 OD4 20m

佐治天文台:http://www.saji.city.tottori.tottori.jp/saji103/NEWS/news0119.htm

 もっとも接近した1万3000kmとは、地表から6600kmの距離であったということになる。ただしこの天体の直径は8mということなので、地球に衝突したらまず大気との衝突、また大気を押しつけることで(断熱圧縮)高温となり、粉々に砕けるであろう。あとサッカーの日韓ワールドカップが開催されていた2002年6月14日には、直径95mというかなり大きな天体が接近していたことがわかる。

 こうした地球に異常接近する小天体を見張る団体として、世界何カ国(日本、アメリカ、オーストラリア、フィンランド、イギリス、ドイツ、イタリア)にスペースガード協会(財団)がある。日本のスペースガード協会のホームページはこちらを参照

 2013年2月15日、大きさ45mの小惑星2012DA14が高度28000mという静止衛星軌道(高度36000m)よりも近いところを通過した。

In this oblique view, the path of near-Earth asteroid 
2012 DA14 is seen passing close to Earth on Feb. 15, 2013
2012DA14の軌道(地球付近)。月の軌道どころか、静止衛星の軌道の内側に入った。
http://neo.jpl.nasa.gov/news/news174.html
2012DA14の軌道。地球の軌道に近い。
http://blogs.discovermagazine.com/badastronomy/tag/2012-da14/

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このページの参考になるサイト

日本惑星協会:http://www.planetary.or.jp/

宇宙航空研究開発機構のオンライン・スペースノート:http://spaceinfo.jaxa.jp/note/note_j.html

The Nine Planets(英語):http://www.nineplanets.org/(日本語に訳したサイトもあるが更新が遅れ気味)

NSSDC Photo Gallery(英語):http://nssdc.gsfc.nasa.gov/photo_gallery/

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