2007年7月30日〜8月2日。蝶ヶ岳と常念岳に行ってきました。四半世紀ぶりの日本アルプスです。
槍ー穂高の西側からの展望コースである鏡平はこちら。
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(1) 1日目(7月30日)
去年、三股からの登山道へ通じる烏川林道が崩壊していたため断念した、蝶ヶ岳〜常念岳を目指すことにしました。東京はこのところ天気が不安定で、強いにわか雨がしばしばあります。7月30日もそうでした。天気予報では、信州は天気が良くなりそうだし、ぐずぐずしていると台風5号の影響が出そうなので、雨混じりの中、思い切って昼過ぎに自宅を出ました。
中央高速では断続的に雨。豊科ICで降り、カーナビの目標にセットした「ほりでーゆー四季の郷」には16時前につきました。ところが、烏川林道はまだ修復工事が終わっていませんでした(8月31日開通予定?)。一般車は通行禁止ですが、タクシーならかなり奥まで入れるということで、林道入り口に待機していた(?)タクシーに翌朝のタクシーを予約して、とりあえず登山者用に解放されているほりでーゆーの駐車場に落ち着くことにしました。
持ってきた本(新潮文庫版星の王子様)を読んだり、ビールを飲んだりしてぐだぐだ過ごします。途中のコンビニでゲットした食料で夕食。19時ころには寝てしまいました。
(2) 2日目(7月31日)
タクシーを5時40分に予約したので、少し前から林道ゲートで待ちます。間もなく到着したタクシーに乗って、三股登山道を目指します。途中で検問(?)があり、ここで登山届けを出して、タクシーはもう少し上まで(2,700円)。ここから歩き始めます。5時55分ころでした。少し行くと林道がスパッと落ちているところがあり、まだ復旧工事中、脇に登山者用の通路は確保されています。ここからまもなく大きな整備された駐車場に出ます。本当はここで夜を過ごすはずでした。トイレや水もあります。
通常でも一般車通行禁止ですが、林道はもう少し続いています。林道終点にもトイレや水場のある小さな駐車場。ここで登山届けを出すことになっていたようです。小さな事務所(?)もありました。なぜか、ミニ四駆が止まっていました。1年以上放置されているはずですが、とてもきれい。
ここから登山道に入ります。6時25分ころでした。沢を渡る吊り橋を過ぎると常念岳への登山道と別れます。蝶ヶ岳はしばらく沢沿いの道をたどります。最後の水場「力水」を7時ころ通過。ときどき急登も混ざる樹林の中の道に入ります。サルがいました。
まめうち平は8時半ころ。ベンチがあり休憩に適した場所です。この前後にはギンリョウソウがところどころに見られます。。ギンリョウソウは一輪ずつ寂しく咲いているのかと思っていましたが、大きな群落もありました。
少し登ると、木々の間からスケール感のある常念岳が見え出します。高山植物も現れてきます。蝶ヶ岳ヒュッテへあと900mの最終ベンチは11時5分。ここで昼食をとりました。大滝山への分岐を過ぎると、もう稜線は眼前です。大きなお花畑もありました。
ここを少し登ると、稜線の後ろに突然槍ヶ岳が見え出します。さらには穂高連峰も。なだらかに続く稜線に出て、テント場脇から頂上へ。蝶ヶ岳頂上(2,677m)は11時50分でした。大展望です。のんびりと展望を楽しみます。穂高では北穂に通じる登山道、奥穂に通じるザイテングラートも見えます。昔、若かったころ、よくあんな急峻なところを登れたと思います。望遠レンズ(35mmフィルムカメラで360mm相当)では、涸沢には涸沢小屋、奥穂と涸沢槍の間の鞍部に穂高岳山荘、北穂の北穂岳小屋も見えます。
見飽きないのですが、いったん蝶ヶ岳ヒュッテで宿泊手続き。夕食・朝食つきで9,000円でした。部屋は通常の山小屋スタイル、2段になっている蚕棚方式。2畳程度に3人くらいの感じ。早めに手続きをしたので、隅に案内されました。トイレは外トイレと内トイレ(バイオトイレ、ただし17時以降)があります。飲料水は有料で、1Lが150円でした。
少し休んでから、ヒュッテ脇の瞑想の丘に。ここには展望指示板もあります。また写真を撮ったり、ふたたび蝶ヶ岳頂上方面を散歩したり、気儘にときを過ごします。ホシガラスも飛んできました。だんだん日も西に傾き、穂高方面がシルエットになってきたので、部屋に引き返します。
17時半から夕食。昨日が土用丑の日、昨日が雨で登山者が少なかったのでしょうか、この日の夕食にウナギが出ました。
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まめうち平のベンチ。 | 蝶ヶ岳への急坂。 | 常念岳から前常念の稜線です。 | 最終ベンチ。 | 蝶ヶ岳頂上で記念写真。背景は穂高連峰から槍ヶ岳の稜線。。 |
左から前穂、奥穂、涸沢岳、北穂。 | 大キレット。きれいなカール。 | 南岳から槍ヶ岳の稜線。 | 蝶ヶ岳ヒュッテ。背景は喜作新道が通る大天井岳〜赤石岳〜西岳の稜線。 | 雄大な穂高から槍の稜線。下には梓川も見える。手前の花はダイコンソウ。 |
槍ヶ岳と槍沢。氷河地形がよくわかる。槍の肩にある槍ヶ岳山荘も見える。 | 右に野口五郎岳。少し頭を出しているは水晶岳か鷲羽岳か。 | 常念岳の稜線。明日の登山路。 | 瞑想の丘。 | 大キレットに沈む夕日。 |
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(3) 3日目(8月1日)
朝食は5時半から。その前にご来光の写真を撮ろうと、4時過ぎに瞑想の丘に。ここは360度開けているので絶好の撮影ポイントです。ただ、風がものすごく強いので、スポーツTシャツ、ウールの薄いカッターシャツ、ウールの厚いカッターシャツを重ね着して、その上からダウンジャケット、風防にレインコートの上下という完全防寒にしました。こうでもしないと、たちまち体が冷えてきてしまいます。
写真をたくさん撮ってから小屋に戻って朝食です。この日は常念岳までなので、朝食後も少しのんびりします。
6時半ころ出発。昨日は見えなかった、富士山、南アルプス、八ヶ岳も、逆光でシルエットになっていますが、よく見えます。写真を撮りながらポレポレ(のんびりのんびり)と歩き出します。贅沢な、そして気持ちのいい稜線漫歩。横尾へ下りる道との分岐が7時ころ。蝶槍(2,664m)は7時15分ころ。少し休憩。
蝶槍からはかなり下ります。風は相変わらず強いのですが、道が稜線の東側に来ると風も弱く、日当たりのいい場所は高山植物の大群落になっていました。さらに下って、一度樹林帯の中に入ります。
かなり降りたあと、いよいよ登りです。結構きつい。常念に近づくと厳しく険しい岩稜の登りとなります。目印の赤ペンキでルートを確認して、苦しいですが雄大な景色に慰められながら頑張ります。やったー、常念岳頂上(2,857m)は11時20分でした。大展望を心ゆくまで楽しみます。そしてお湯を沸かしての昼食。
名残は尽きないのですが、1時間ほどで出発。あとは常念小屋まで下るだけ。でも、かなり急な道です。
小屋の前のベンチで一休み。蝶ヶ岳では入らなかった携帯電話がここでは入りました。チェックすると職場から留守電。それほどの急ぎの仕事ではないようです。携帯電話は便利ですが、こういうところまで仕事がやってくるので少し悲しい。でも、最近は登山届けにも携帯の番号を書かされるので、持ってきた方がいいようです。
風の通り道という常念乗り越しに建つ小屋は大きく立派なものでした。夕食のみで8,000円でした。部屋6畳程度を最大12人で使うようです。この日は5人の相部屋でした。左右は確保できるのですが、前後が狭く、足を互い違いにしないとダメです。荷物は入らないので廊下に置きます。トイレは内トイレ(バイオトイレ、蝶ヶ岳ヒュッテのものとは方式が違うようです)、飲料水は(小屋に泊まる人は)無料でした。
食堂をのぞいたら、蝶ヶ岳ヒュッテで一緒だった方(熊本からいらしたそうです)が一人で生ビールを飲んでいました。私も早速注文。ついでに日本酒も。しばらく歓談します。
夕食は17時が早組、17時50分からが遅組、食券の色によって自分がどちらかがわかります。私は早組でした。夕食はかなり豪華なものでした(下の写真参照)。
18時半ころから、食堂前のテラスに出て、槍に沈む夕日を楽しみます。時々刻々色が変わっていくので見飽きません。この日はとりわけ見事な夕焼けを見せてくれました。
19時半ころから寝ようとしたのですが、廊下の明かりがまぶしく(結局“消灯”はなく、一晩中点いていた、自家発電なのに贅沢?)、また部屋も暑くてなかなか眠れません。でも、そのうちにうとうとと寝てしまったようです。
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東側の空が明るくなってきました。下には安曇野の街の灯が見えます。 | うっすらと槍が見えてきました。槍ヶ岳山荘の灯もも見えます。 | 穂高の上にはほぼ満月の月が出ています(月齢約17日)。 | ご来光です。残念ながらこの方向には雲があります。雲の上に頭を出ているのは、左側が雨飾山、火打・妙高、戸隠、高妻山など、右が浅間山などです。 | 穂高連峰が、鮮やかなモルゲンロートとまではいきませんが、少し赤くなりました。 |
朝日を浴びる槍ヶ岳。 | 常念岳へ出発。瞑想の丘から木曽御嶽(左)と乗鞍岳。 | 上高地の焼岳。 | 八ヶ岳方面。 | 瞑想の丘から富士山と南アルプス。 |
キキョウの群落。 | 蝶槍から槍ヶ岳と東鎌尾根。 | 蝶槍から富士山と南アルプス。 | 蝶槍から浅間山。頂上にかすかに噴煙? | 蝶ヶ岳ヒュッテを振り返ります。このあたりは二重山稜になっています。 |
槍沢上部。登山道も見えます。見事なカールとU字谷。 | ニッコウキスゲの群落と青い空。 | 常念山頂へはきつい岩稜の登りです。 | 常念岳山頂(2,857m) | 大キレットの後ろにはかすかに白山。 |
上高地方面。手前は六百山、霞沢山、後ろは乗鞍と木曽御嶽。 | 穂高連峰をバックに記念写真。 | 薬師岳。手前は裏銀座の稜線。 | 立山から剣岳。 | 横道岳から大天井岳への稜線。背後には後ろ立山連峰(白馬岳など)も見えます。 |
常念小屋が真下に見えますが、なかなかたどりつきません。 | 槍ヶ岳。肩にある槍ヶ岳山荘、下はヒュッテ西岳も見えます。 | 常念小屋の夕食です。 | 槍ヶ岳に沈む夕日。 | 色がどんどん濃くなってきます。 |
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(4) 4日目(8月2日)
3時過ぎから起き出し、持参した食料(パンと飲み物)で朝食。休息所にお湯やお茶が入れてある魔法瓶が置いてあるので、バーナーでお湯を沸かす必要がありませんでした。4時15分ころフロントが開いたので、三股登山道からのタクシーを予約します。何時に降りられるか不安でしたが、とりあえず12時にしました。
外に出ると、もうヘッドランプは必要のない程度の明るさになっていました。まず常念岳をめざします。相変わらず風が強い。Tシャツ、ウールの薄いカッターシャツの上に、レインコート(上)を重ねます。
歩き始めたころは快晴だったのですが、だんだんガスが湧いてきました。吊し雲も出ているし天気は下り坂。台風5号は九州に上陸しそうだということです。前にガスが湧き上がってきたとき、背後から朝日が差しこんでくれればブロッケン現象が出始るかもしれないと少し期待します。期待通りブロッケンが出始めました。ちょうど穂高方面です。写真を撮りながらゆっくり登ります。前常念岳への分岐にザックを置いて、カメラと三脚だけを持って頂上へ。
5時半過ぎに頂上到着。幸いガスは流れているので、穂高から槍の稜線が見えるときもあります。まわりの山々の写真を撮ったり、まだ見えるブロッケン現象の写真を撮ったりしてしばらく頂上に滞在。
本当に名残は尽きないのですが、6時10分ころ出発。少し下ってから、前常念岳への道に分岐します。サックを回収して、分岐を6時50分に出発。細い稜線、風がものすごく強く、岩稜の下りで足下がふらつきます。それでもお花畑もあり、心が和みます。常念乗り越しからの巻道(通行止めになっていました)との合流が6時50分。
どこが前常念岳かは定かではありませんが、三角点(2,661.8m)は7時10分。少し下に石室があります。ここから急降下です。最初は岩稜、ところどころ滑りやすい砂礫。やっとの思いで樹林帯に入ると傾斜も緩くなり、また風もなくなります。上を脱いで、Tシャツだけにしました。
樹林帯のあちこちにギンリョウソウを見ました。この蝶・常念あたりはギンリョウソウが多いのでしょうか。あとはともかくひたすら下ります。登ってきた人は、前常念岳をピストンするという一人だけ。疲れはて、ようやくの思いで三股の登山道入り口にたどり着いたのが10時半。近くの沢で顔を洗ったり、家に持ち帰る水を汲んだりします。
荷物を整理していたら、林道を若者3人が登ってきました。蝶ヶ岳を目指すそうです。上でも若い人のグループも何組かいました。11時ころ出発。あとは林道を歩くだけ。大きな崩壊箇所は工事中でした。タクシー待ち合わせ場所には既にタクシーが待っていました。11時半にタクシーで「出発、ほりでーゆー」に。途中の林道にサルがたくさん出てきていました。ぜんぜん逃げません。
「ほりでーゆー四季の郷」は立派な公共(堀金村村立、今は安曇野市立?)の温泉・宿泊施設です。温泉(露天風呂ありの500円、天然ラドン温泉だそうです)で汗を流し、レストラン四季で天ぷらそば、そしてお土産コーナーでいくつかのお土産を購入しました。まあ、只で駐車場を使わせてもらって、そこで泊まったわけですから、少しはお金を使わないと申し訳ない。
帰りも順調で、13時半ころ出発、16時半には自宅に戻ることができました。
蝶ヶ岳から常念岳は稜線の散歩コースかと思っていましたが、常念岳の前後が厳しい岩稜でした。少し甘く考えていました。さすが日本アルプスの一角。でも、最高の天気に恵まれ(風は猛烈でしたが)、おまけに穂高をバックにしたブロッケン現象まで見ることができ、思い切って決行して正解でした。
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朝日に染まる吊し雲。 | 槍ヶ岳から南岳の稜線が赤く染まりました。 | 雲の上にそびえる槍ヶ岳。 | ブロッケン現象が現れました。さらなるブロッケン現象の写真はこちら。 | 常念岳頂上で記念写真。背景は槍ヶ岳。 |
奥穂高の岩壁。右に穂高岳山荘に向かうザイテングラートが見えます。 | 蝶ヶ岳から常念岳への縦走路。昨日歩いた道。 | 槍ヶ岳と槍ヶ岳山荘。そして、天狗原の見事なカール。 | 北穂高山頂に建つ北穂高小屋。 | 前穂高。右が奥穂高岳に通じる吊り尾根。下へ北尾根が延びています。 |
奥穂高岳の全容。 | 鹿島槍から白馬岳などの後立山連峰。 | 立山から剣岳。 | 前常念岳への道。 | 常念岳を振り返ると、ガスに覆われ始めていました。右に常念乗り越しへの道(通行止め)が見えます。 |
常念岳頂上には人影が見えます。 | 前常念岳から急降下。ペンキでルート確認。 | ギンリョウソウ(銀竜草)の群落です。 | 林道終点、登山道入り口のスペース。なぜかミニ四駆が。 | 長野自動車道梓川SAから見た常念岳。 |
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(5) 高山植物(名前には自信がありません)
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2007年8月記
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