このページの目次 | ||
第4章 太陽系(8) | ||
1. 準惑星(dwarf planet) | ||
a.めい王星 | ||
a-1.めい王星 | ||
a-2.めい王星の衛星 | ||
b.セレス | ||
c.エリス | ||
d.マケマケ | ||
e.ハウメア | ||
用語と補足説明 | ||
参考になるサイト |
1.準惑星
a.めい王星
a−1.めい王星(Pluto)
従来めい王星は9番目の惑星とされてきた。ところが、2006年8月24日の国際天文連合の決議により、めい王星は惑星ではなく、 準惑星(dwarf planet) の一つ、また典型的な太陽系外縁天体(trans-Neptunian object(エッジワースカイパーベルト天体(EKBO)ともいう))の新しい種族の典型とされた。さらにこうした天体をめい王星型天体と呼ぶことも決まった(2008年6月)。この件については惑星の定義、めい王星の位置づけを参照。
海王星が天王星の動きからその存在を予想されたように、海王星や天王星の動きからその外側にも惑星があると予想する人がいた。ローウェル天文台のローウェルもその一人で、まさに生涯をかけて「第9番惑星」の探索を行った。しかし彼は見つけることはできなかった。結果的にはめい王星の質量は小さすぎて、海王星の軌道を乱すほどではなかったのだ。
結局、「第9番惑星」を見つけたのは、ローウェルの弟子のトンボーで、彼は想像を絶する苦労の上、1930年3月13日に新惑星(当時はそういう判断)を発見した。
めい王星の公転軌道は他の惑星とはかなり異なっている。まず、公転面が他の惑星の公転面に対して大きく傾いている(地球の公転面に対して17°)。また軌道の離心率も惑星の中で最大(0.2490)である。つまり近日点距離(約44億km)と遠日点距離(約78億km)と大きな差がある。めい王星はこうした軌道を248年という周期で回っている。そして、ときどき海王星の軌道の内側(最近では1979年〜1999年)がそうであった。
しかし、めい王星の公転周期:海王星の公転周期=3:2という尽数関係にあるので、もっとも近づくときの位置関係が決まっている。そしてその距離は18AUなので衝突の可能性はない。
めい王星の軌道(宇宙航空研究開発機構) http://spaceinfo.jaxa.jp/note/taiyo/j/tai12_j.html |
めい王星は地球からは非常に遠いので、観測が難しい(ハッブル宇宙望遠鏡でもかろうじて表面の明暗がわかる程度)。衛星カロンが発見されたのは1978年のことであった。それでも、この衛星の発見によって少しはめい王星の様子がわかるようになってきた。表面には固体の(氷の)メタンが存在し、太陽に比較的近いときは薄いメタンの大気を持っているらしい。
めい王星の半径は1153kmしかなく、これは月、あるいは木星の衛星イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト、土星の衛星タイタン、海王星の衛星トリトンよりも小さい。質量は地球の0.0023倍(約1/500)で、密度は2.21×103kg・m-3である。これはめい王星が地球型惑星、木星型惑星とは構造・組成が違い、木星や土星の氷衛星に近いということを示している。
実際には 太陽系外縁天体(trans-Neptunian object(海王星以遠の太陽系天体という意味))、エッジワース・カイパーベルト天体(EKBO、Edgeworth-Kuiper Belt Object)と呼ばれる天体と似ている、あるいはその仲間(代表)そのものを思われている。EKBOは彗星をも供給していて、つまりめい王星は惑星よりも彗星に近い存在ともいえる。この件についてはこちらも参照。
a−2.めい王星の衛星
1978年に発見された衛星カロン(charon)は半径が586km(めい王星の約半分、質量はめい王星の0.08倍)もあり、母惑星に対する大きさとしては太陽系の惑星の中で最大である。また、めい王星とお互いに同じ面を向き合って回っている。ここでも尽数関係が見られる。お互いの距離も非常に近く、2万km(地球と月の距離の1/20以下)でしかない。こうしたことから、惑星−衛星ではなく、二重惑星ととらえた方がいいかもしれない。じっさい、2006年8月24日の国際天文連合において、一時はカロンも惑星(ほかにセレスとエリスも)とする案も出た。惑星の定義を参照。表面には水の固体(氷)があるらしい。
ただし、地球−月系の重心は地球内部にあり、一方、めい王星−カロン系の重心はめい王星の中心から約1500kkm、すなわちめい王星の外側にあるという違いがある。
2006年、めい王星にはさらに小さな衛星が二つあることがわかっり、それぞれニクス(Nix)、ヒドラ(Hydra)と名付けられた。
冥王星については、2006年に打ち上げられたアメリカの探査機ニュー・ホライズンズが、2015年7月めい王星に到着、通過する過程で写真の撮影や観測に成功した。
b.セレス(Ceres)
従来小惑星の一つとされてきたセレスは2006年8月の決議によって、dwarf planetの一つとされた、日本列島くらいの大きさの天体である。。1801年に発見されている(パレルモ天文台J.ピアッツ)。大数学者ガウスは、少ない観測結果をもとに正確な軌道を決定した。セレスの発見は後の多くの小惑星発見の端緒をなし、これらの小惑星は火星軌道と木星軌道の間隙を埋めるものであった(チチウス・ボーデの法則参照)。
2007年に打ち上げられたアメリカの探査機ドーンは、2015年3月セレスの周回軌道に入り観測を開始した
セレスの全体像。クレーターの中に光っているもの(現在正体不明)が見える。http://dawn.jpl.nasa.gov/ |
光る点を持つクレーター(φ90km、深さ4km)の拡大。http://dawn.jpl.nasa.gov/ |
c.エリス(Eris)
2003年に撮影され(そのため2003_UB313というコードネームがついていた)、2005年にめい王星の外側を回る、めい王星よりも大きなtrans-Neptunian object(海王星以遠の太陽系天体という意味、エッジワース・カイパーベルト天体(EKBO、Edgeworth-Kuiper Belt Object)ともいう)であることが確認され、惑星の定義を考えるきっかけにもなった。2006年9月エリス(トロイア戦争を巻き起こした不仲の神)という名称がついた。
2005年には衛星も発見され、エリスと同時にディスノミア(Dysnomia、エリスの娘で破壊と不法の神)という名称が与えられた。。
エリス(左)とエリスから太陽(想像図)http://www.jpl.nasa.gov/events/lectures/sep06.cfm
エリスと衛星ディスノミアhttp://www.gps.caltech.edu/~mbrown/planetlila/moon/index.html
d.マケマケ
2008年7月、国際天文連合は2005年に発見された太陽系外縁天体の一つを準惑星とすることにして、マケマケと命名した。マケマケは冥王星の約3分の2程度の大きさと見られ、太陽のまわりを回る公転周期は約300年である。
なおマケマケの名はギリシャ神話からではなく、イースター島の豊穣の神である。この名が選ばれたのは、マケマケが発見されたのがイースターの日(キリスト教の復活祭)だったからだという。
マケマケについては国立天文台アストロトピックス402(2008年8月4日)を参照。
e.ハウメア
ハウメアはハワイの豊穣の神の名である。その他の詳細はcoming soon !
Pluto:Plutoは冥界(死者の国)の王の名である。太陽から非常に遠く暗いのでこの名が付いたと思われるが、生涯をかけて第9番惑星を探し続けたPercival Lowel)の頭文字を意識したのかもしれない。なお、カロンは「三途の川」の渡し守。
トンボー:トンボー(アメリカ、1906年〜1997年、Clyde William Tombough、計算で「予想」されたところとは違うところで発見した。またじつは、3月13日以前に発見したらしいが、ローウェルの命日である13日に発見を報告したともいわれている。トンボーやめい王星の名前についてはこちらも参照。
母惑星と衛星の大きさ:地球:月 3.7:1、火星:フォボス261:1、木星:ガニメデ 27:1、土星:タイタン 23:1、天王星:チタニア 32:1、海王星:トリトン 18:1。こうしてみると、地球も二重惑星かもしれない。ただし、月の質量は地球の0.0123倍しかない。衛星の一覧表を参照。
ニュー・ホライズン計画:かつてプルート・カイパー・エクスプレス計画というものがあり、当初は1999年打ち上げ予定(延期されて2004年打ち上げ予定)だったが、資金不足ということで(無期)延期になってしまった(資金はカッシーニ・ホイエンスに回された)。しかし科学者達の、このチャンスを逃すとめい王星が太陽から遠ざかってしまうためにごくわずかにあるめい王星の大気が凍結して観測できなくなること、木星を利用して加速するスウィングバイ(スイングバイ)ができなくなる(次のチャンスは200年先)という反対にあい、新たにニュー・ホライズン計画が起ち上がった。ニュー・ホライズンは2006年に打ち上げられ、2007年に木星を利用したスウィングバイ(フライバイ)に成功している。順調にいけば2015年にめい王星に到着、さらにその外側のカイパーベルトの観測を行うことになる。
NASA(ニューホラインズンズのページ):http://www.nasa.gov/mission_pages/newhorizons/main/index.html
ジョンズホプキンズ大学のページ:http://pluto.jhuapl.edu/
トロイア戦争:ギリシャ時代のホメロス(紀元前8世紀ころの伝説的詩人)の「イリアス」「オデッセイア」で有名な、ギリシャ諸都市と小アジアのトロイアの戦争。ヘラ(ゼウスの妻)、アフロディテ(ビーナス)、アテナの3女神が誰が一番美しいかをめぐって争う原因となった黄金の林檎(エリスが一番美しい女神のものといって3人の中に投げ込んだ)をめぐり、トロイアの王子パリスに審判を頼んだ。アフロディテのスパルタ王メネラウスの妃ヘレン(ヘレネ)を与えるという賄賂が成功し、林檎はアフロディテのものとなったが、これが原因でスパルタとギリシャ諸都市とトロイアの戦争が始まる。ギリシャ側では総大将アガメヌノン、アキレウス(アキレス腱を射抜かれ戦死)などの英雄が活躍するが、10年間なかなか決着がつかず、最後に「トロイの木馬」の計略でようやくトロイアを攻め滅ぼす。勝利したギリシャ側諸将も大変で、アガメムノンは帰国後妻の愛人に惨殺され、メネラウスは8年がかりでようやく帰国、オデッセイスは10年かかって(いろいろな苦難を経て)ようやく帰国できた。
この話を事実と信じたH.シュリーマン(1822年〜1890年、ドイツ)は、トロイアの発掘に成功した。ただし、この話には異論があるし、シュリーマンがトロイア戦争のあとと信じた第2層(紀元前2000年ころ)は古すぎるのでトロイア戦争とは関係がないと思われている(第7層=紀元前1200年ころがそうらしい)。
日本惑星協会:http://www.planetary.or.jp/
宇宙航空研究開発機構のオンライン・スペースノート:http://spaceinfo.jaxa.jp/note/note_j.html
The Nine Planets(英語):http://www.nineplanets.org/(日本語に訳したサイトもあるが更新が遅れ気味)。本家では「nine
Planet」→「nine
NSSDC Photo Gallery(英語):http://nssdc.gsfc.nasa.gov/photo_gallery/