第一部−2− 宇宙の科学

このページの目次
第4章 太陽系(7)
1.惑星(2) 惑星各論−6−
f.天王星
 f-1.天王星
 f-2.天王星の衛星
用語と補足説明
参考になるサイト

第4章 惑星

1.惑星(2) 惑星各論−6−

f.天王星

f−1.天王星(Uranus

 水星、金星、火星、木星、土星の5つの惑星は古来から知られていた。つまり、太陽や月の「発見者」がいないように、これら5つの惑星の「発見者」はいない。しかし、天王星以降の惑星には発見者が存在する。

 発見したのはウィルアム・ハーシェル(ドイツ→イギリス、1738年〜1822年)で、1781年のことであった。彼は偶然にこの惑星を見つけたときは彗星と思っていたが、のちの観測で惑星とわかり、当時のイギリス国王に敬意を表したジョージ星と名付けた。しかし、ボーデ(チチウス-ボーデの法則のボーデ)が、他の惑星と同じく(ギリシャ・ローマ)神話からとろうということで、「天王星」を提案し、これがその後受け入れられた。

 天王星の最大光輝は5.3なので、肉眼でかろうじて見える明るさである。じっさいに、ハーシェル以前にも観測されているようだが、惑星と認識したのはハーシェルが一番最初だったのだ。

 天王星の赤道半径は25559km(地球の4.0倍、体積では64倍)で、太陽系の惑星の中で3番目に大きい。しかし、質量は地球の14.5倍しかなく、海王星よりも小さい。つまり密度が小さく、その値は1.27×103kg・m-3と土星についで小さい。天王星の組成・構造は、木星や土星と少し異なりガスの割合が少なく、氷が主体である。中心部は岩石(融けている?)、そのまわりを氷(H2O)やメタン、アンモニアがおおっている。大気は水素とヘリウムにメタンがかなり混じっている。そのメタンが太陽光から赤い色を吸収するので、全体として緑がかった青色に見える。

 天王星の大きな特徴は、自転軸が公転面に対してほぼ横倒しのまま自転(自転周期0.718日=17時間14分)しているということである。自転軸の傾きは公転面に対して98°(90°以上の傾きということは、公転の向きと逆向きということである。金星は177°)であるが、これはほとんど公転面をころころと転がっているという感じである。だから、天王星は非常に奇妙な世界で、極の真上に太陽が来る(太陽の南中高度が90°になる)こともある。つまり、一方の極に太陽が当たり続ける42年間(公転周期84年)は、もう一方の極には太陽がまったく当たらない。もっとも太陽から遠く、太陽から送られてくるエネルギーは小さいので、季節により温度の差はせいぜい数℃でしかない。もしかすると、自転軸のこの大きな傾きは、大昔に超巨大隕石が天王星に衝突して、自転軸を傾けたのかもしれない。そうだとすると、まさに「地軸を揺るがす大事件」が起きたということになる。

 天王星にも地球程度の磁場があるが、この双極子の傾きは自転軸と60°も傾いている。他の惑星の磁場(双極子)の自転軸に対する傾きの大きさと比べて、この値は非常に大きい。これも不思議なことである。

 1977年、天王星が恒星を隠す(掩蔽(えんぺい))現象があった。このとき、天王星本体が恒星を隠す前後にも恒星からの光が9回遮られたことより、9本の環が存在していることがわかった。さらに、1986年にボイジャー2号が天王星のそばを通過して観測した際、新たに2本の環が見つかった。現在では土星ばかりではなく、木星海王星にも環があることがわかっているので、環の存在は木星型惑星の共通の性質ということになる。天王星の環は、ハッブル宇宙望遠鏡や、国立天文台がハワイに設置した巨大望遠鏡すばるによっても撮影されている。

ハッブル望遠鏡が撮影した天王星と環。色は強調してある。雲の一部が光っている。
http://hubblesite.org/newscenter/
newsdesk/archive/releases/1998/35/image/a
ハッブル望遠鏡が撮影した天王星
http://www.solarviews.com/
browse/uranus/uranus3.jpg
ボイジャー2号が撮影した天王星の環
http://www.solarviews.com/
browse/uranus/uring1.jpg
天王星の疑似カラー映像
http://www.windows.ucar.edu/tour/link=/
uranus/images/uranus_false_image.html

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f−2.天王星の衛星

 ハーシェルによってすでに2個の衛星(チタニアとオベロン)が発見されている。その後、現在(2003年10月21日)までに27個の衛星が見つかっていて、木星、土星に次ぐ多さである。最大のチタニアが半径が789km(地球の月の半径が1738kmなので、その半分よりも小さい)、2番目のオベロンでも761km、他に半径が500kmを越えるのは、ウンベリエル(585km)、アリエル(579km)であり、ついでミランダ(236km)が大きい。この5つが天王星の5大衛星である。他の衛星はいわゆるジャガイモ型の小さいものである。

 これらの衛星は、天王星の赤道面上近くを回っている。つまり、天王星の公転面とは大きく傾いた軌道上を回っている。他の惑星の衛星も母惑星の赤道面上近くを回っているが、その赤道面は母惑星の公転面とそれほど大きくは傾いていない。

天王星と衛星(ボイジャー画像の合成)、衛星は一番前がアリエル、そして時計回りにウンベリエル、オベロン、チタニア、ミランダ。一番小さいのはプック。
http://www.solarviews.com/browse/uranus/urfamily.jpg

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用語と補足説明

Uranus:ウラヌスはギリシャ神話の天空の神であり、ゼウスたちオリンポス族の前に君臨したタイタン族の長である。

ハーシェルプロの音楽家(Frederic William Herschel 1738年〜1822年)音楽を教え、またオルガン奏者でもあった)だったが、趣味の天体観測のために望遠鏡を自作して、妹のカロリンを助手にして、余暇のすべてを天文の研究に使った。その成果は1781年に新惑星天王星の発見につながった。この業績で、1782年に王室付き天文学官に任命され、プロの天文学者になった。当時はプロの音楽家とプロの天文学者の敷居が低かったのだろう、今日では考えられないことである。

 その後さらに大きな望遠鏡を作り、惑星とその衛星、さらには二重星(見かけ上同じ向きに見える、その中にお互い同士が回りあっている連星がある)の研究、また星雲は恒星の大集団(星団銀河)であることを見つけ、銀河系の研究の先鞭も着けた。

 なお、息子のJohn Frederick William Herschel(1792年〜1871年)も著名な天文学者となった。

天王星探査機:現在のところ(2004年9月)、天王星の観測を行った探査機は1986年1月のボイジャー2号だけである。ボイジャーについてはこちらを参照

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このページの参考になるサイト

日本惑星協会:http://www.planetary.or.jp/

宇宙航空研究開発機構のオンライン・スペースノート:http://spaceinfo.jaxa.jp/note/note_j.html

The Nine Planets(英語):http://www.nineplanets.org/(日本語に訳したサイトもあるが更新が遅れ気味)。本家では「nine Planet」→「nine() Planet」としている。

NSSDC Photo Gallery(英語):http://nssdc.gsfc.nasa.gov/photo_gallery/

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