酸性雨 シリーズ地球と人間の環境を考える03
畠山史郎 日本評論社 ISBN4-535-04823-1 1,600円
目次
まえがき
1章 酸性雨とは
2章 酸性雨の生成
3章 酸性雨の影響
4章 森林衰退と大気汚染・酸性雨
5章 酸性雨の原因がアジア大陸から
6章 東アジア地域の酸性雨対策はどうなっているか
7章 途上国の酸性雨原因物質を減らす技術
おわりに
索引
この本は、01地球温暖化、02ダイオキシンと比べると「常識的」な書き方をしている。
森林の衰退の原因を、単純に酸性雨ではなく、光化学オキダントの中のオゾン(NO2の光分解でできる※)が、陸風によって山岳地帯に運ばれ、そのオゾンの毒性と、さらにそのオゾンが森林が発するフィトンチッド(炭化水素の一種)と反応して、過酸化水素や有機過酸化物を生成し、そのために森林がダメージを受けるのではないかとしている。そしてダメージを受けた森林は病虫害などにも弱くなり、森林が衰退しているだろうという。
中国や韓国の工業化により、そこで発生した硫黄酸化物や窒素酸化物が日本にやってきて、酸性雨の原因にもなる。韓国はかなり汚染防止が進んできたが、中国はまだである。中国は石炭の消費が多い。その石炭も粉炭が多いので、筆者達のグループは麦わらなどで粉炭を団子状にするバイオブリケット(着火温度が低い、一酸化炭素軽減、含まれているカルシウム化合物が硫黄分を吸収する=SO2削減)の各家庭への普及を提案している。
「おわりに」にあるように、オゾンホールをなくすためにオゾンを発生させると、そのためにエネルギーを使わなくてはならないし、CO2やNO2の放出が増えて、温暖化や酸性雨が増えてしまうということが、環境問題の一つのポイントだと思う。大気や環境の問題は、それぞれが密接にかかわっているからである。
※ NO2 + 可視光線 → NO + O
O + O2 → O3
NO + O3 → NO2 + O2 ← オゾンが酸素に戻る
OH(ラジカル)+RH(炭化水素) → H2O + R
R + O2 → ROO
ROO + NO → RO + NO2 ←OHラジカルとRH(炭化水素)があるとNO2に戻る
つまり、オゾンを破壊しない
蛇足:p.143飛行機から円形の虹を見たとあるが、ブロッケンのことだろう。
シリーズ 地球と人間を考える
01 地球温暖化
02 ダイオキシン
03 酸性雨
04 環境ホルモン
05 エネルギー
06 リサイクル
2003年4月記