第13章 年代測定法(2)
目次 | |
1. | 時(とき)を刻むもの(2) |
d.放射性同位元素の崩壊 | |
e.分子時計 | |
用語と補足説明 | |
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化石などを使って地層の新旧を決めることはできても、その地層や岩石がいったい何年前のものだったのかということをどうやって調べたらいいのだろう。自然界には規則正しいリズムを持った現象があり、それが地層や岩石中に残されていれば、それを利用して年代を求めることができる。
1.時(とき)を刻むもの(2)
放射性同位元素は、α(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線などの放射線を放射して別な元素に変わっていく。例えば、238U(ウラン238)は途中経過はいろいろあるが、最終的には206Pb(鉛206)になっていく。このときの238Uを親元素といい、親元素が壊変(崩壊)してできた236Pbを娘元素という。
親元素の数が半分になるまでの時間は一定であり、それを半減期という。238Uの半減期は44.68億年であり、この長さはいかなる熱や圧力によっても変えることはできない。だからこうした放射性同位元素の壊変(崩壊)は、きわめて正確に時を刻んでいるということになる。数式は下を参照。
年代測定に使われる放射性同位元素の半減期
放射性同位元素(親元素と娘元素)の例 | 半減期(元素111の新知識、桜井弘、講談社ブルーバックス、1997年) |
238U(ウラン235) → 206Pb(鉛206) | 44.68億年 |
235U(ウラン235) → 207Pb(鉛207) | 7.037億年 |
40K(カリウム40) → 40Ar(アルゴン40) | 12.5億年 |
14C(炭素14) → 14N(窒素14) | 5730年 |
だが問題は、測定できるのは現在の親元素の量、あるいは娘元素の量でしかないことである。この現在の量をもとに、過去にさかのぼることはできるが、最初にあった親元素の量、あるいは娘元素の量がわからないと、その最初の時(つまり年代測定)ができない。最初にあった量を初期値という。放射性同位元素を使った年代測定のポイントは、いかにしてこの初期値を推定するのか、あるいは初期値を推定しないですませるのかにある。
このように初期値がわかれば、放射性同位元素を利用して絶対年代を求めることができる。ただし、こうした方法で求めた年代の誤差は大きく、時間の分解能(新旧の決定精度)では化石を使った方法よりも劣ることがある。そこで絶対年代という言葉を使わずに、放射年代という人もいる。
もうひとつ、放射性同位元素を使って年代測定をするときは、その放射性同位元素の半減期に注意する必要がある。理想的には放射性同位元素の半減期が、測定しようとする時間の長さ程度であることが望ましい。半減期が長すぎると親元素はほとんど減らない(娘元素はほとんど増えない)、逆に短すぎると親元素はほとんどなくなってしまう(娘元素があっという間に現在の値近くになってしまう)からである。このような観点から上の放射性同位元素の半減期の表を見ると、数十万年から数億年程度の長さを測る適当な元素が見あたらないことがわかる。
e.分子時計
生物の遺伝を司るDNAは、その中の塩基の配列が時間に比例して置換されていくことがわかった。このDNAの変化を時計に使うこともできる。具体的にはこちらを参照。
放射性同位元素の崩壊の式:放射性同位元素の壊変速度は親元素の数に比例する。これを微分の形式で書けば
このときの比例定数λ(ラムダ)を壊変定数(崩壊定数)という。壊変定数と半減期の関係は下を参照。(1)を解いていくと、自然対数の底(てい)eを用いて
現在の親元素の数(N)とその初期値(N0)がわかっているときは(2)式を使って、また現在の娘元素の数(n)とその初期値(n0)がわかっていれば(4)式を使って年代を測定ができることになる。
壊変定数と半減期:半減期は親元素の数が半分になるまでの時間(tとする)である。(2)式でN=1/2×N0とすると、
なお、(常用)対数についてはこちらを参照。
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