2.太陽の表面の様子
a.光球
肉眼で見たときの太陽が光球である。つまり、可視光線発せられる層である。温度は約6000K(ケルビン)。
b.黒点
光球表面には黒っぽく見える部分がある。ふだんは望遠鏡でないと見えないが、ときには肉眼で見えるほどの巨大なもの(地球の何倍もの大きさ)が出現することがある。黒点には強い磁場があるために、下からエネルギー(熱)を運ぶ対流が妨げられて、まわりより1000K〜2000K程度温度が低くなっている。もし黒点だけが宇宙に浮かんでいるとしたら橙色〜赤色に見えるはずであるが、まわりの光球が明るいので黒く見えてしまうのである。黒点を詳しく見てみると、暗い部分(暗部)と周辺のすじ状の構造を示す半暗部からなっていることがわかる。黒点についてはこちらも参照。
黒点とその移動(太陽観測衛星SOHO画像)。白斑も見える。
http://sohowww.nascom.nasa.gov/
c.白斑
黒点とは逆に、まわりよりも温度が高い領域もあり、白っぽく見えるので白斑とよばれる。黒点の近くによく現れる。上の写真参照。
d.粒状斑
空気の状態がいいとき、望遠鏡で太陽の表面を見ると粒々の模様が見られる。これを粒状斑という。粒の一つ一つが下からわき上がってくる対流の渦(セル)の一つ一つに対応している。
黒点とそのまわりの粒状斑、黒点の縁の狐の毛みたいな構造は黒点の強い磁場によるものである。
太陽系ギャラリー:インパクぐんまパビリオン
http://www.astron.pref.gunma.jp/inpaku/gallery/gallery.html
e.彩層
光球を包む太陽の大気ともいうべき層。横から見ると光球表面から放射されるガスが針のように見え、これをスピキュールという。このスピキュールを上から見ると羊の毛のようにも見えるので羊毛斑という。密度は1気圧の1万分の1にも達しない。
f.コロナ(太陽風)
彩層のさらに外側に、太陽表面から飛び出してきた荷電粒子(陽子、ヘリウム原子核、電子)が広がっている。これをコロナという。また、太陽表面から外側に広がっていくその動きに注目して、太陽から噴き出てきた風、すなわち太陽風ということもある。太陽表面から一様に太陽風が吹き出すのではなく、多く噴き出てくる場所がある。
コロナの温度は数百万Kにもなっている。これは太陽表面の爆発によって生ずる衝撃波によって熱せられるためと考えられている。ただし、コロナは彩層に近いところでもその密度は光球の百万分の1以下(粒子の数が108個・m-3程度)でしかないため、淡い光しか出さない。このためにコロナを観測するには、光球が隠れる皆既日食のときか、光球を隠すことができる望遠鏡(コロナグラフ)で観測する。
コロナの中には密度と温度の低い領域があり、これをコロナホールという。ここは太陽の磁力線が外に向かって開いている場所で、ここから太陽風が噴き出ている。コロナホールは太陽の地球に対する自転周期である約27日ごとに地球の方を向くことになるので、太陽風も27日周期で強くなる。
太陽から飛び出たコロナ(太陽風)は、だんだん希薄になりながら太陽系全体おおっている(コロナがおおっている範囲が太陽系という見方もできる)。通常地球付近ではその速さは500km・s-1程度であるが、太陽表面の大きな爆発があったときにはその速さは2000km・s-1にも達することがある。
太陽風は地球の磁場に妨げられて、地球を直撃することはなく、地球を取り巻くような形で通り過ぎていく。この太陽風の空洞が地球の磁気圏である。こうして地球はその磁場によるシールドで、太陽風の直撃から守られている。太陽風の実体は上に書いたような荷電粒子である。このなかで電子の流れは放射線でいうとβ線、ヘリウムの原子核はα線である。つまり、地球はその磁場によって、太陽の放射線から守られていることになる。ところがその地球の磁場はそれほど安定なものではなく、磁場の向きが変わったり、磁場そのものがなくなったりすることもある。こうしたことについては、地球の科学の「第4章 地磁気(2)」の<7−a 地磁気の逆転>を参照。
皆既日食の際に見られたコロナ、線は磁力線がつくる模様である。
http://www.solarviews.com/raw/sun/eclips91.gif
地球の磁気圏 左:太陽風がない場合 右:太陽風によって太陽側では押されて、太陽の反対側では吹き流しのように伸びている。
科学技術振興事業団:http://st6.stelab.nagoya-u.ac.jp/jst/pdf/panel2.pdf
g.プロミネンス
太陽に近いコロナの中には、炎のように見えるプロミネンス(紅炎)が見られることがある。これはコロナの中に浮かぶ雲のようなものである。コロナの温度が数百万Kにもなるのに、プロミネンスは10000K程度の温度でしかない。これは、プロミネンスを支えている磁力線が熱の流入も妨げているためと考えられている。
X線で撮影された巨大なプロミネンス(スカイラブ衛星、1973年12月19日)。太陽表面から約60万km(地球半径の約90倍)も噴き出ている。
http://www.solarviews.com/browse/sun/sun.jpg
h.フレア
太陽面爆発ともいう。黒点群上空のコロナ中に蓄えられた磁場のエネルギーが爆発的に放出される現象である。最大級のフレアでは、大型の火力発電所が数10億年分の発電量に相当する莫大なエネルギーを、数時間という短い時間で放出するすさまじいものである。
このとき強いX線が放出されるので、地球のまわりを回っている人工衛星に影響を与えることもある。かつては地球大気の電離層を利用した通信に障害を及ぼし、デリンジャー現象を呼ばれた。またこのときに放出される荷電粒子は、フレアのあと1日半程度で地球に到達し、地球の磁場を乱して磁気嵐を起こしたり、極地方でオーロラを発生させることがある。
フレア:http://www.solarviews.com/raw/sun/halphafl.jpg
国立天文台ひのでのホームページ:http://hinode.nao.ac.jp/index.shtml