第二部−3− 大気と海の科学

第12章 日本の天気

目次
1. 日本の天気に影響を及ぼす気団
2. 日本の季節
a.
b.春と秋
c.梅雨と秋雨
d.
用語と補足説明

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1.日本の天気に影響を及ぼす気団

 日本は中緯度に位置しているため、北の寒気、南の暖気の境が季節に応じて日本の北に位置したり(日本が北の寒気に包まれる)、また南に位置したり(南の暖気に包まれる)、寒気と暖気の境界が日本付近を通過したり、また停滞したりする場所である。これに応じて季節の巡り合わせが起こる。

 気団は発生した場所の地表の影響を受けている。高緯度で発生した気団は低温で、低緯度で発生した気団は高温、大陸で発生した気団(大陸性気団)は乾燥、海洋で発生した気団(海洋性気団)は湿潤である。また、気団は発生した場所の名前が付けられている。だから気団は名前でその性質がわかる。

 日本の天気に影響を及ぼす気団は下の通りである。

シベリア気団 冬、シベリアや中国東北区に発達する大陸性寒帯気団。
オホーツク海気団 梅雨や秋雨のころにオホーツク海や三陸沖に現れる海洋性寒帯気団。
小笠原気団 北西太平洋の亜熱帯高気圧域に現れる海洋性熱帯気団。(北)太平洋気団ともいう。
長江気団(揚子江気団) 春と秋に長江(揚子江)流域で発現する。移動性高気圧として日本付近を覆う大陸性亜熱帯気団。
熱帯気団 熱帯または亜熱帯に発現する気団の総称。日本には台風によってその気塊が運ばれてくる。

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2.日本の季節

a.

 冬はシベリア気団(シベリア高気圧)が発達し、また日本の東の海上には低気圧が発達して、西高東低の気圧配置になる。日本付近の等圧線は南北に密集して、シベリア気団(シベリア高気圧)から吹き出す北西の季節風が吹く。

 本来は大陸性の乾燥したシベリア気団であるが、日本海を吹き渡るときに日本海(対馬暖流が流れている)から大量の水蒸気が供給される。この湿った空気が日本列島中央部を走る山脈(脊梁山脈)にぶつかり、上昇気流となって積乱雲が発生する。この雲から雪が降ることになる。また、雷を伴うこともある。冬の日本海側の積雪量は世界的に見ても、大変に多いものである。例えば冬のシベリアの気温は大変に低いが、北極海の水温も低く水蒸気があまり供給されないので、降雪量そのものは冬の日本海側ほどではない。


気象庁新潟地方気象台(原図は宮沢清吉)
気象庁秋田地方気象台(http://www.sendai-jma.go.jp/tidai/akita/4season/winter.htm

 気象衛星の画像では日本海の筋状の雲が目立つ。こちらの写真も参照。よくみると、脊梁山脈の風下側だけが晴れている。このとき、この地域では「空っ風」「おろし風」が吹いている。

2005年1月12日:気象庁「日々の天気図」
http://www.data.kishou.go.jp/
yohou/kaisetu/hibiten/
高知大学「気象衛星画像書庫」
http://weather.is.kochi-u.ac.jp/sat/gms.fareast/

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b.春と秋

 春や秋は、低気圧や移動性高気圧(長江気団)が交互に通過していく。そのために天気が周期的に変わるようになる。低気圧の通過前には南風が強まり気温が上昇し、通過後は北風が強まり気温が低下する。このような寒暖を繰り返しながら、春から夏に向けて次第に気温が上昇し、夏から秋に向けて低下する。

 冬から春にかけては、三寒四温というように天気が変化する。冬から春へ移り変わるときに、初めて吹く南よりの強い風を、気象庁では、「春一番」として発表している。また、4月、場合によっては5月、逆に10月、11月にこの移動性高気圧おおわれると晴天になり、五月(さつき)晴れ、秋晴れなどいう。こうしたときの早朝は、放射冷却のために地表の温度が下がり、大気中の水蒸気が昇華して(直接小さな氷晶になって)遅霜や早霜が降りることがある。

2005年4月4日:気象庁「日々の天気図」
http://www.data.kishou.go.jp/
yohou/kaisetu/hibiten/
高知大学「気象衛星画像書庫」
http://weather.is.kochi-u.ac.jp/sat/gms.fareast/

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c.梅雨と秋雨

 春から夏への季節の変わり目には、梅雨と呼ばれる雨の多い時期がある。この期間は、多雨(西日本に多く、年間雨量の1/3に達するところもある)ばかりではなく、東日本での低温・日照不足などが起こることがある。東北北部、北海道では梅雨は明瞭ではない。

 この時期は、オホーツク海気団と小笠原気団(太平洋気団)の間に停滞前線(とくに梅雨前線という)ができ、その上を次から次へと低気圧が通過する。

 梅雨の末期には、短時間に多量の雨が降るいわゆる集中豪雨が起こりやすい。これは、大気の下層(3000m以下)では、はるか赤道付近から高温多湿の気流が流れ込み(その形から湿舌という)、上空には北西の冷たい乾いた空気が流れ込んでいるため、大気が不安定になり積乱雲が次から次へと発達して、局地的な豪雨となる。このような積乱雲は数100km程度のスケール(メソスケール)の大気の乱れ(擾乱(じょうらん))によって生ずる。

 梅雨前線と同じような前線は初秋にも現れ、秋雨(あきさめ)前線、または秋霖前線と呼ばれる。ただし、秋雨は梅雨ほど明瞭ではなく、オホーツク海気団もはっきりしないこともある。こうしたときはまだ未発達なシベリア気団との間の前線が停滞する。

 また、梅雨や秋雨は、日本付近という局所的にとらえるのではなく、北側の寒冷な気団と南側の温暖な気団の境(寒帯前線帯)が梅雨・秋雨の時期に日本付近を北上・南下すると大きくとらえた方がいい。つまり、夏は南の暖気団の範囲が広くなり、この前線がすっかり北に押し上げられた状態、冬は逆に北の寒気団の範囲が広くなり、この前線が南に押し下げられた状態、梅雨や秋雨はこの前線が日本付近を南から北へ、また北から南に動いてちょうど日本付近に位置する季節というようにとられた方がいいだろう。実際この時期の前線は日本付近にだけではなく、日本から東南アジアに伸びていることが多い。このことについては、前線も参照。

 梅雨前線や秋雨前線があるときに、台風が近づくと前線の活動が活発になり(南から湿った空気が供給されるため)に、大変な豪雨になることもある。

2004年6月25日:気象庁「日々の天気図」
http://www.data.kishou.go.jp/
yohou/kaisetu/hibiten/

※ オホーツク海高気圧が1気圧(1013hPa)よりも気圧が低いことに注意。低気圧の項参照
高知大学「気象衛星画像書庫」
http://weather.is.kochi-u.ac.jp/sat/gms.fareast/
「こんにちは気象庁です」(平成17年1月号)
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/jma-magazine/0501/index.html
「こんにちは気象庁です」平成17年5月号
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/jma-magazine/0505/index.html

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d.

 夏の日本は小笠原気団(太平洋気団)におおわれて蒸し暑い日が続く。晴天が続くが、強い日射のために積乱雲が発生しやすく、午後雷雨になることもある。気圧配置は南高北低型である。ただし、の天気図と比べると等圧線の間隔が広く、南よりの季節風はそれほど強い風ではない。

 また、7月から8月は台風が日本にもっとも接近、あるいは上陸する季節でもある。

2004年8月6日:気象庁「日々の天気図」
http://www.data.kishou.go.jp/
yohou/kaisetu/hibiten/
高知大学「気象衛星画像書庫」
http://weather.is.kochi-u.ac.jp/sat/gms.fareast/

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用語と補足説明

ヒマラヤ山脈・チベット高原と日本の天気冬は、ヒマラヤ山脈・チベット高原がダムのようにシベリアの寒気団の南下を遮るために、シベリア寒気がたまり、シベリア気団は強大な気団に成長する。

 梅雨のころは北上してきた地球を取り巻くジェット気流が、ちょうどヒマラヤ・チベット高原にぶつかる時期である。ヒマラヤ・チベット高原に衝突して二つに分かれた気流が、オホーツク海の東で再び合流する。このためにオホーツク海の空気がよどみ、オホーツク海気団となる。さらにジェット気流が北上すると、ジェット気流はヒマラヤ・チベット高原とぶつかることがなくなり、オホーツク海の気団も消滅する。つまり、梅雨が明けることになる。

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カルマン渦下左のような強い北西の季節風が障害物にぶつかると、気流が乱れてその風下側で渦の列を作る。これをカルマン渦という。下右では韓国のチェジュ (済州)島の風下側に見事なカルマン渦が見られる(屋久島の風下側にもかすかにできている)。強風のときに電線や小枝がヒューヒュー鳴るのも、電線や小枝にぶつかった強風がその風下側でカルマン渦を作り、その渦が空気を振動させてヒューヒューという音になるのである。

2007年2月15日、冬の季節風が韓国済州島(チェジュ島)にぶつかり、カルマン渦が発生している。
高知大学気象情報頁(http://weather.is.kochi-u.ac.jp/wiki/inWxhome/20070215Karman_e6_b8_a6

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五月(さつき)晴れかつて日本で用いられていた暦(太陰太陽暦)では、梅雨の時期が5月であった。そのために梅雨を五月雨(さみだれ)といい、五月雨の合間の晴れ間を五月晴れといった。現在では、春の晴天を五月晴れということが多い。

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