第二部−2− 地球の科学

第9章 火成岩(3)

目次
3. 火成岩の分類
a. 組織(構造)
b. 鉱物の組み合わせ(二酸化ケイ素の含有量)
c. 火成岩の分類
用語と補足説明
この章の参考になるサイト

3.火成岩の分類

 マグマが冷え固まってできた岩石を火成岩という。火成岩はその組織(構造)と、鉱物の組み合わせとで分類する。

a.組織(構造)

 地下深くでゆっくり冷えたマグマの中では結晶が大きく成長する。そのためにこうしてできた火成岩は結晶の粒の大きさがそろっている等粒状組織をしている。このような火成岩を深成岩という。

 粒の大きさがそろっているととっても、早く晶出する鉱物(晶出温度の高い鉱物)は自分本来の結晶形(自形)を取ることができる。しかし、晶出温度の低い鉱物は、すでにできている結晶の隙間で結晶することになり、自分本来の結晶形を取ることができずに、隙間を埋める形で結晶となる(他形)。こうした鉱物の形から、晶出の順番を推定することもできる。

 一方、地表に噴き出たり、また岩石・地層の間に細く貫入した場合、また細くなくても貫入してまわりの岩石・地層によって急激にマグマが冷えた場合は、大きな結晶を作ることができずに細かい結晶になるか、あるいは細かい結晶にもなれずにガラス質の固体になる。そのため、マグマが急に冷えてできた火成岩は、こうした細かい結晶やガラス質の間に、すでにマグマだまりの中で晶出した大きな結晶が散在するような構造になる。このような構造を斑状組織といい、このような火成岩を火山岩という。また大きな結晶を斑晶といい、斑晶を取り巻く細かい結晶やガラス質の部分を石基という。

等粒状組織(はんれい岩)、偏光顕微鏡(下方ポーラー)で撮影
国立科学博物館岩石標本データベース
http://svrsh2.kahaku.go.jp/rock/
等粒状組織(はんれい岩)、偏光顕微鏡(上方ポーラー)で撮影
国立科学博物館岩石標本データベース
http://svrsh2.kahaku.go.jp/rock/
斑状組織(玄武岩)、偏光顕微鏡(下方ポーラー)で撮影
国立科学博物館岩石標本データベース
http://svrsh2.kahaku.go.jp/rock/
斑状組織(玄武岩)、偏光顕微鏡(上方ポーラー)で撮影
国立科学博物館岩石標本データベース
http://svrsh2.kahaku.go.jp/rock/
自形と他形

戻る  このページのトップへ  目次へ  home

b.鉱物の組み合わせ(二酸化ケイ素の含有量)

 火成岩はまた、それを構成している鉱物の組み合わせでも分類する。見た感じでは有色鉱物(かんらん石輝石角閃石黒雲母)の割合が多いほど黒っぽく見える。逆に無色鉱物(斜長石カリ長石石英)の割合が多いほど白っぽく見える。そこで有色鉱物の割合(色指数)で火成岩を分類する。しかし、便宜的には火成岩の色は二酸化ケイ素(SiO2)の含有量が少ないほど黒っぽく見えるし、SiO2の含有量が多いほど白っぽく見えるので、ふつうは鉱物の組み合わせ(色指数)の変わりにSiO2の含有量で代用する。

 なお、マグマの分化による各鉱物の晶出の順はこちらを参照

 SiO2の含有量(重量%)が45%未満の火成岩を超マフィック岩(超苦鉄質岩)という。またSiO2の含有量が45%〜52%の火成岩をマフィック岩(苦鉄質岩)、52%〜66%の火成岩を中間岩、66%以上の火成岩をフェルシック岩(珪長質岩)という。苦鉄質の“苦”はマグネシウムのことである。また、珪長質の“珪”は二酸化ケイ素(SiO2)のこと、“長”はもちろん長石のことである。この言葉からもわかるように、マフィックな(苦鉄質の)火成岩はマグネシウムや鉄をフェルシック岩より多く含んでいるので、色は黒っぽく、密度は大きい。逆にフェルシック岩(珪長質岩)は、二酸化ケイ素(SiO2)を多く含んでいるので、色は白っぽく、密度は小さい。

戻る  このページのトップへ  目次へ  home

c.火成岩の分類

 上の構造(組織)と鉱物の組み合わせ(二酸化ケイ素の含有量)の二つを組み合わせて火成岩を下の図のように分類する。例えば、斑状組織をしている(つまり火山岩)、その斑晶はかんらん石、輝石、Caが多い斜長石であれば玄武岩だとわかる。また、等粒状組織をしていて有色鉱物としては黒雲母や角閃石を含み、無色鉱物としてはNaが多い斜長石や、カリ長石、石英を含んでいれば花こう岩だとわかる。

 実際の火成岩の写真は、例えば広島大学理学部地球惑星システム学地球構造学研究グループの火成岩類標本写真集
(http://www.geol.sci.hiroshima-u.ac.jp/~geotect/stonemuseum/ig-rock.html、2009年3月6日現在リンク先につながりません)を参照。

 もちろん、こうした分類は人為的なものであるから火山岩とも深成岩ともいいきることができない中間的な構造をしているものもある。また当然二酸化ケイ素の含有量での区分も人為的なものであり、その変化は連続的なので、実際にはどちらにするか迷うこともある。また、最近はフェルシックな(珪長質の)火山岩をデイサイト−流紋岩、深成岩を花こう閃緑岩−花こう岩と細分することも多い。

 この火成岩の分類表は、火山の噴火の形式(穏やかか爆発的か)、火山の形(盾状火山、成層火山、溶岩円頂丘)と関係が深いので、その表を下に再掲する。

 なお、コマチアイトを噴出するような火山は現在は見られない。これは、マントル(かんらん岩)が部分溶融してできる玄武岩質マグマが固まったものではなく、マントル(かんらん岩)が全部融けてそれが急激に固まったものである。そして、このコマチアイトは始生代(40億年前〜25億年前)、原生代(25億年前〜5.6億年前)の岩石としてしか存在しない。つまり、大昔のマントルの温度は現在よりも高く、マントルが全部融けてできたマグマもあったことが推定される。

溶岩の粘りけ ←小さく流れやすい 大きく流れにくい→
溶岩の温度 ←高い(1200℃くらい) 低い(900℃くらい)→
噴火の様子 比較的穏やか 爆発的な噴火
火山の形 盾状火山 成層火山 溶岩円頂丘
冷えた溶岩の色 黒っぽい 白っぽい
火山岩の名 玄武岩質 安山岩質 デイサイト質、流紋岩質
SiO2含有量 ←少ない 多い→
代表的な火山 ハワイの火山、三原山 富士山 浅間山、桜島 昭和新山

 

玄武岩 安山岩 流紋岩
はんれい岩 閃緑岩 花こう岩

戻る  このページのトップへ  目次へ  home


用語と補足説明

塩基性岩と酸性岩かつてはマフィック岩を塩基性岩、フェルシック岩を酸性岩、中間質の岩石を中性岩といっていた。もちろん、これら“塩基性””酸性”は化学の用語である“アルカリ性””酸性”とはまったく関係ないし、誤解を招くので、最近はマフィック、あるいは苦鉄質、フェルシック、あるいは珪長質というようになっている。またかつてはデイサイトを石英安山岩といっていたこともある。

色指数有色鉱物(かんらん石輝石角閃石黒雲母など)の体積比で火成岩を分類することもある。色指数が高ければ黒っぽく、低ければ白っぽく見える。

  色指数
超苦鉄質(超マフィック) 70%以上
苦鉄質(マフィック) 40%〜70%
中間 10%〜40%
珪長質(フェルシック) 10%以下

 

戻る  このページのトップへ  目次へ  home


この章の参考となるサイト

戻る  このページのトップへ 目次へ  home