第二部−2− 地球の科学

第8章 鉱物(1)

目次
1. 鉱物
a.
b.硬さ
c.割れ方
d.光学的性質
2. 鉱物の化学組成
用語と補足説明
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1.鉱物

 岩石をよく見ると粒々が見える。この粒々が鉱物である。つまり、岩石は鉱物が集まってできていることがわかる。鉱物の一粒一粒は、物理的に、また化学的にほぼ均一な性質を有する。そして、結晶をしていることが多い。鉱物は、色や形、透明度や光沢などの見た感じ、硬度(硬さ)、割れ方、光学的な性質、比重、磁性があるかなどによって区別し、分類することができる。

a.

 鉱物は特有な形(外形)を持っていることが多い。それは内部で原子が規則正しく並んでいるからである。これを結晶という。実際には同じ種類の鉱物でも、異なった形をしていることが多い。しかし、同じ鉱物の対応する面がなす角度は一定であるので(これを“面角一定の法則”という)、理想的な形を考えることできる。例えば岩塩は立方体、ダイヤモンドは正8面体、ザクロ石や黄鉄鉱は正12面体、方解石は平行6面体の形になる。

面角一定の法則:左のような形をしていても、側面のの隣り合った面がなす角度はすべて120°、上と下の面と側面がなす角度は90°なので、右のように理想的な形としてして正6角柱を考えることができる。

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b.硬さ

 鉱物によって硬さが異なる。そこで代表的な鉱物を、柔らかいものから硬いものの順に並べたものがモースの硬度計である。モースの硬度計はたんに硬さの順番であり、例えば硬度6の正長石が、硬度2の石膏(石こう)の3倍の硬さ、硬度3の方解石の2倍の硬さという意味ではない。また硬さは、互いをこすって傷が付くかどうかで調べる。傷を付けた方が硬く、傷を付けられた方が柔らかい。お互いに傷が付いたら、同じ硬さということになる。また、硬度6.5ならば、正長石を傷つけるが、石英によって傷が付けられるという硬さである。

 ヒトの爪はだいたい硬度2〜2.5くらい、貨幣は硬度4くらい、ナイフの刃やガラスは硬度5.5〜6くらいである。

硬度 鉱物 化学組成 備考・用途
1 滑石 Mg3Si42(OH)2 ロウセキ(蝋石)として用いられることもある。
2 石膏(石こう) CaSO4・2H2O 白墨・セメントの原材料、彫刻の素材。
3 方解石 CaCO3 石灰岩の主成分。
4 ホタル石 CaF2 フッ化水素(HF)の原料。フッ化水素はガラスを腐食するので、ガラスに模様や目盛を刻むのに用いられる。
5 燐灰石(リンカイ石) Ca5(PO4)3(OH,F,Cl) リン酸肥料や、クリーム・歯磨きの原料。
6 正長石 KAlSiO3O8 肥料やガラス・陶磁器の原料。
7 石英 SiO2 きれいなものは水晶という。
8 トパーズ Al2SiO4(Oh,F)2 きれいなものは宝石になる。黄玉(おうぎょく)ともいう。
9 コランダム Al2O3 赤い色をしたものをルビー、青い色をしたものをサファイアという。
10 ダイヤモンド C 屈折率が高く、きれいに輝いて見える。宝石や研磨剤など。

モース硬度計

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c.割れ方

 鉱物に力を加えると割れる。そのとき、結晶の面に平行に割れることが多い。このように規則的に割れることを劈開(へき開)という。硬いダイヤモンドも平行8面体の面に沿って割れる。岩塩は立方体の各面に沿って、方解石も平行6面体の各面に沿って割れる。割れる面を劈開面という。雲母は薄く剥がれる性質を持っているが、これは雲母の結晶のある面が劈開面に成っているからである。

 一方、石英は決まった形に割れずに、ガラスの塊を割ったように貝殻状の割れ口になる。このような不規則に割れることを断口という。劈開を示す鉱物も、劈開面以外はの割れ口は断口となる。

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d.光学的性質

 ほとんどの鉱物は、薄くけずると光を通すようになる。鉱物によって、透過する光に対する性質が異なる。

 光はいろいろな方向に振動する横波である。それを偏光板に通すと、一定方向に振動する光(偏光)が得られる。この偏光を使って、薄片(2/100mm〜3/100mmの厚さ)にした鉱物を、偏光顕微鏡という顕微鏡で見ると、光に対するさまざまな性質を見ることができる。下の写真は同じかんらん石のサンプルを、偏光顕微鏡の二つの状態で見比べたものである。

かんらん石(オープンポーラーで見た状態) かんらん石(クロスポーラーで見た状態)
国立科学博物館岩石標本コレクション:http://svrsh2.kahaku.go.jp/rock/

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2.鉱物の化学組成

 ほとんどの鉱物はケイ素(Si)のまわりに、酸素(O)が4面体状に配列((SiO42-)して骨格をつくり、その間にマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)などの陽イオンが入り込んだケイ酸塩鉱物である。(SiO42-の骨格だけだと電気的に負(マイナス)になっているので、陽イオンを取り込んで全体として電気的に中性になっている。ケイ酸塩鉱物だけで、地殻中の鉱物の90%近くを占める。そのなかでも多いのが長石(斜長石、カリ長石)、ついで石英、輝石である。

 下にSiO44面体と、その4面体がかんらん石、輝石角閃石雲母でどうつながっているかの図を示す。

SiO4の4面体

 

 その他に1種類の元素からなる元素鉱物(炭素(C)はダイヤモンドや石墨という鉱物になる、金や銀はそのまま出てくる)、イオウ(S)の化合物である硫化鉱物(黄鉄鉱(FeS2)、黄銅鉱(CuFeS2)、方鉛鉱(PbS)など)や、炭酸塩鉱物(方解石(CaCO3)、硫酸塩鉱物(CaSO4・2H2O)、さらにはハロゲン化鉱物(岩塩(NaCl)などがある。

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用語と補足説明

ダイヤモンドのカット硬いダイヤモンドも劈開があるので、劈開面に沿って割ることができる。宝石となるダイヤモンドは、この劈開を利用して加工(カット)される(下図)。いろいろなカットの方法があるが、いずれも屈折率が高いことを利用して入ってきた光ができるだけ内部で全反射して外に出て行くように工夫されている。だから、あのようにきらきらと光って見えるのである。

 なおダイヤモンドを磨くのには、ダイヤモンドの粉を用いる。最近では研磨剤としてのダイヤモンドは人工的につくられる。

ネットで百科(日立システムアンドサービス):http://ds.hbi.ne.jp/netencyhome/index.html

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偏光と偏光板:光は波の性質を持っていて、波としては横波(波の振動方向と進行方向が垂直な波)である。ふつうの光はいろいろな方向に振動する光が入り混じっている。この光を偏光板というものに通してやると、振動方向が揃った光(偏光)が得られる。偏光板はサングラスなどでも使われている。

 偏光板(を通った光の振動方向)と平行に、さらにもう1枚の偏光板を置いても、光はそのまま通っていく。

 

 ここで、もう1枚の偏光板(を通った光の振動方向)と直角に偏光板を置くと、光は通ることができなくなる。ただし、完全に直角に置かないと、光は少し通ることができる。偏光板を使ったサングラスが二つあったら、互いの置き方を変えて試してみよう。

偏光板を2枚重ねたところ。 片方の偏光板を90°回転させて重ねたところ。
日本博物館協会:http://www.j-muse.jp/kagaku_tanken/vol3/hikari02/page01.html

 ところが、2枚の偏光板の間に鉱物(など)を置くと、鉱物に入った光の振動方向が二つの振動方向に分かれる(福屈折)ことがある。すると偏光板を直角に置いても、鉱物を通過した光の振動方向が変わったために、その光は2枚目の偏光板を通過することができる。また、この二つの振動方向の光が干渉してきれいな色が付いて見えることもある。これらの見え方は鉱物によって異なるので、こうした性質から鉱物を区別・分類することができる。

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偏光顕微鏡偏光した光を使って、鉱物などの光に対する性質を見るための顕微鏡。下図のように、下の偏光板を通った光(偏光)で鉱物を見る。鉱物は2/100mm〜3/100mmの厚さまで薄くけずって薄片にしておく。

 薄片を載せるステージは回転できるようになっている。下の偏光板だけを用いた状態をオープンポーラー(下方ポーラー、開放ニコル)という。この状態で、鉱物の屈折率を調べたり、多色性(ステージを回転させると色が変化する性質、黒雲母で顕著)を見ることができる。

 上の偏光板は下の偏光板の偏光板の振動方法校とは直角になっていて、これは出し入れができる。上の偏光板を入れた状態をクロスポーラー(上方ポーラー、直交ニコル)という。この状態では、消光(サンプルを回転させると90°ごと光を通さなくなる、このときの結晶軸に対する角度は鉱物によって異なる、それを消光角という)、干渉色(複屈折した光が干渉してきれいな色が付くことがある、かんらん石で顕著)などの性質を見ることができる。

偏光顕微鏡の概念図

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