地球は有限なので、当然資源も有限である。このまま消費を続けていると、そのうちなくなってしまうのではないだろうか。
森林は古くから、薪炭材として燃料を供給してきた。さらに木材、近年ではパルプとして利用されているし、水の保有、地形・土地の保全、大気の浄化などのさまざまな役割を果たしている。「遺伝子資源」(生命の多様性を保証することによって、栽培植物の原種を保存したり、また将来有用な植物を発見する可能性を残す)としての役割も考えられている。さらに、人にとってはリクリエーション・リフレッシュの場としての意味もある。
世界の森林の分布 森林・林業白書(林野庁平成24年(2012年)版) http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/24hakusyo_h/all/a40.html |
森林面積の変化 森林・林業白書(林野庁平成24年(2012年)版) http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/24hakusyo_h/all/a40.html |
だが、その森林は世界的に危機に瀕している。1999年から2000年の間に熱帯雨林は毎年1420万ha(本州の2/3倍の広さ)ずつ減少しているといわれている(環境省パンフレット「世界の森林とその保全」(http://www.env.go.jp/earth/shinrin/pamph/index.html))。熱帯雨林ばかりではなく、シベリアなどの森林の減少も無視できない。森林全体として、地域的には東南アジアで回復の兆しがあるが、南米では森林の減少が加速している。
森林が少なくなれば、そこに生息する野生生物種の減少を招くし、森林に保護されていた土壌(表土)の流出も起こる。さらに、森林から切り出された木材を燃やすこと、あるいは腐らせることは、森林に蓄積された炭素を二酸化炭素として大気中に放出することを意味する。これは、現在心配されている地球温暖化を加速する方向に働く。水源の涵養機能や熱循環、海と陸との相互作用機能の低下も心配される。
では、なぜ森林が減っているのだろう。原因はもちろん、先進国への輸出(木材・パルプ)、現地の燃料用薪材、大規模な農地開発、不適切な焼き畑、違法伐採などである。これらは、発展途上国の貧困とは無関係ではない。
図2-7 ブラジル・ロンドニア州(右図)の熱帯雨林の破壊(赤っぽく見えるのが森林を伐採してできた農地) 1975年と2012年の比較NASA http://www.desdemonadespair.net/2012/08/image-of-day-satellite-view-of.html |
日本は最後の商業用伐採には大きな責任がある。日本の木材の供給状況を見ると、輸入木材が約80%程度を占めている。日本の森林面積は約66.4%もあり(国土交通省平成21年(2009年)版「土地白書」(http://tochi.mlit.go.jp/05_01.html)、それは先進国中では大変に高い。内訳を見ると、その約40%が人工林である。しかし、「安い」輸入材に押され、日本の林業は壊滅寸前である。それゆえ、人工林の管理もままならない。なお、この件については、こちらも参照。
図2-11 国土交通省平成25年(2013年)版「土地白書」(http://tochi.mlit.go.jp/05_01.html)より作成
林野庁スギ・ヒノキ林に関するデータ(2012年3月31日現在)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/kafun/data.html
また人工林の大部分はスギ・ヒノキであり、その花粉による花粉症の問題も深刻化している。
林野庁
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/hozen/pdf/111227-03.pdf
これは非常に難しい問題である。温暖化防止京都会議(1997年)でも、人類が排出した二酸化炭素を森林が吸収するかどうかは、議論の一つの焦点であった。きちんと森林全体の二酸化炭素−酸素の収支を測定することは困難なのである(6・3の(2)b参照)。
一般的には極相(安定な状態)に達した森林では、二酸化炭素−酸素の収支はバランスが取れているだろう。つまり呼吸によって酸素を消費する分と、光合成によって酸素を作り出す量が同じになっている。つまり二酸化炭素を吸収してはいない。当然こうした森林を伐採すれば、直接には二酸化炭素の吸収がその分減るし、伐採された木材を燃やしたり、腐らせたりすれば、そこで発生した二酸化炭素は大気中に入り、大気の二酸化炭素を増やす。
森林は大気の浄化フィルターの役目を果たしていると思った方がいいだろう。目に見える塵を吸収するだけでなく、窒素酸化物、イオウ酸化物などもその葉で吸着してくれる。