第2章 生物の進化(2)
2.植物の進化
a.植物
生物の分類の一つの考え5界説での植物界は、いわゆる陸上植物である。陸上植物を大きく分けると、コケ植物と維管束植物になり、さらに維管束植物は、胞子で繁殖するシダ植物と、種子で繁殖する種子植物わけられ、その種子植物は、裸の種子を持つ裸子植物と、種子が子房によって包まれる被子植物に分けられる。
陸上植物の配偶子は多細胞器官によって保護されていて、とくに卵細胞を保護する器官を造卵器という。受精はこの造卵器内で行われ、胚としてそのまま親植物上に残る。
b.植物の上陸
生命は海で発生して進化してきた。しかし、今日では陸上にもたくさんの生物が生活している。生物の上陸は植物から始まった。部分的な化石の産出から、植物が上陸したのは今から約4億7000万年前のオルドビス紀のころと思われる。
4億2000万年のシルル紀の地層からはクックソニア(コケとも違うが、維管束がないのでシダ植物とも違う、そこでリニア植物といわれる)という植物や、現在のヒカゲノカズラとあまり変わらないバラグワナチアという植物の化石が出る。このころにはほぼ完全に上陸を果たしていたことになる。
最初陸上植物の一つクックソニア:インターネット自然史博物館
http://www.museum.fm/2D_Web/Land%20Plants/j-text/03.htm
デボン紀(4億1600万年前〜3億5900万年前)になると、根・茎・葉の分化がはっきりしてくる。さらに、菌類との共生も始まる。
初めは胞子(乾燥に強い、陸上で繁殖するための必須条件)で繁殖していた植物の仲間に、種子で繁殖するものが登場するのはデボン紀の後半である。このころ、茎に形成層を持つものを現れた。
デボン紀の末には、まだ胞子繁殖ではあるが、高さ20mを超えるような巨大な木質植物(カラミテス、リンボク)が登場し、大森林をつくった。この大森林が、多様な生態系をつくる下地となった。脊椎動物の上陸もこのころである(昆虫などはもっと早い)。この大森林が、今日の良質の石炭の原料となった。
カラミテス:大阪市立自然史博物館 http://www.mus-nh.city.osaka.jp/ tokuten/2002plantevo/virtual/3/3_2_3.html |
リンボク(幹にこのような鱗状の模様があるので鱗木という):東北大学総合学術博物館 http://www.museum.tohoku.ac.jp/ exhibition_info/jyousetuten/hyohonkan/paleo2j.html |
3億7000万年前の地層からは、種子植物の化石が出てくる。種子は胞子よりも乾燥に耐えることができるし、種皮により昆虫からの食害を防ぐこともできる。休眠もできる。デボン紀(4億1600万年前〜3億5900万年前)から石炭紀前半(3億6000万年前〜2億4500万年前)は、二酸化炭素の濃度が現在よりかなり高く、地球は温暖な時期であったらしい。しかし植物が増えてくると、光合成により二酸化炭素を消費する。また、土壌の発達がさらに二酸化炭素を吸収する。つまり、風化を促進して炭酸塩の沈殿を促すのである。こうして、石炭紀の後半には大気中の二酸化炭素が急減し、地球は寒くなっていったらしい。これまで湿地を中心に繁栄していたシダ植物は衰え、上に書いたように胞子よりは繁殖能力が上回る種子植物が分布を拡大する。
その代表がゴンドワナ大陸のグロソプテリス(グロッソプテリス)である。
グロソプテリス:東海大学自然史博物館
http://kurosio.scc.u-tokai.ac.jp/sectu/sizensi/2002/ex_z0101.html
石炭紀後期にはソテツ類、イチョウ類も登場する。これらは自分で運動できる精子を持っている(他の裸子植物や、被子植物は花粉管をのばして受精する)。針葉樹の祖先の登場のこのころである。中生代(2億5100万年前〜6550万年前)の初期には、裸子植物の祖先群がほとんどすべて登場する。現在の針葉樹の仲間(科)は、中生代のジュラ紀(2億500万年前〜1億3500万年前)には出そろう。マツ科がもっとも原始的な針葉樹の仲間といわれる。
被子植物は種子(胚珠)を完全に心皮で包み込み、閉じこめている。被子植物は単子葉植物と双子葉植物に分けられる。この被子植物の起源はよくわかっていない。現生の裸子植物とはかなり遠い関係で、それらは直接の祖先ではないらしい。被子植物の花粉らしい化石はイスラエル産の1億4000万年前(白亜紀初期)、大型の植物体の化石は中国産で、1億2500万年前よりは古いらしい。被子植物は現在の植物の主流をなしている。
維管束:シダ植物と種子植物にある水分や栄養分を通す管。木部と師部に別れる。木部には道管があり、根で吸収した水分や無機養分を運ぶ。師部には師管があって、葉でつくった有機養分を運ぶ。師は古くは篩(ふるい)と書き、「ふるいかん」と呼ぶ場合もあった。その名の通り断面が篩のようになってる。維管束は植物の体を支える働きもしている。
形成層:双子葉植物の中の木本(もくほん、“木”のこと)と裸子植物の茎と根にある円周状の成長組織。外側に師部、内側に木部をつくることによって、根や幹が太く成長する。
イチョウ:イチョウは不思議な植物である。1億7000万年前のジュラ紀の地層から、現在のイチョウとほとんど変わらない形をした化石が出てくる(現在と同じものは、新生代パレオジーン以降、6550万年前から)。こうしたことから、「生きている化石」の代表ともいわれる。イチョウの祖先はさらに遡り、2億7000万年前には登場している。
現在のイチョウの原産地はよくわかっていない(中国の浙江省に自生しているらしい)。また、日本におけるイチョウの起源も解明されていない。なお、イチョウの学名Gingyoは、イチョウの漢字“銀杏”の音読みが誤って伝わったものという。
イチョウには実(銀杏(ぎんなん))を付ける雌株と、つけない雄株がわる。イチョウの精子は日本人の平瀬作五郎(1856年〜1925年)が1896年に発見している。この件については、「日本植物研究の歴史」(小石川植物園300年の歩み)のなかの、「精子発見とその意義」(加藤雅啓)参照。
針葉樹:針葉樹は広がった葉をもつ広葉樹に対し、針状(あるいは鱗状)の葉を持つ。裸子植物のうち、ソテツ類とイチョウ類をのぞいたもの。現在540種程度の針葉樹があるといわれているが、広葉樹の20万種類以上には遠く及ばない。じっさい、広葉樹に対して高地や寒冷な場所に分布することが多い。かつては広葉樹(その中の照葉樹森(光沢のある常緑の広葉樹の森、カシ、シイ、クスノキ、ツバキ、あるいはブナ(落葉の広葉樹))の森が広がっていた日本だが、人工の植林ではスギなどの針葉樹を植えることが多い。日本は先進国の中では森林面積は大きい。日本の国土の66%が森林、そのうち40%が人工林である。この件についてはこちらも参照。
平成12年林業白書 http://www.hakusyo.maff.go.jp/ books_b/WR01H120/html/r1060101.htm |
平成12年林業白書 http://www.hakusyo.maff.go.jp/ books_b/WR01H120/html/r1010105.htm |
岐阜大学教育学部地学教室全地球史:http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/e-history/html_/eh/index.html