破壊することは簡単でも、修復することは難しい。環境もまず、できるだけ壊さないようにしなくてはならない。
都市はそのまわりよりも気温が高くなっていることが多く、それを“ヒートアイランド現象”という。とくに風のない冬の晴れた日の東京などでは、郊外との気温の差が10℃に達することもある。
都市ではエネルギーがたくさん消費されている。コンクリートなどの建造物・舗装道路で覆われているため、水分の蒸発による温度の低下も少ない。また、コンクリートそのものが夜に熱を放出する。とくに夏には、エアコンの排熱が室外の気温をさらに上昇させ、エアコンの使用をさらに拡大するという悪循環を生み出す。また、大気汚染物質による温室効果もある。
実際、東京の年平均気温を見ると、1870年代の約14℃から2000年には16℃にと、この130年の間に2℃も上昇し、年平均湿度も約77%から約63%に下がっている。ただし、これは日本全体(地球全体)の気温が上がっているためかもしれない。そこで、1900年以降の熊谷の気温と比較してみると、夏(8月)の気温の差はそれほど大きくなっていないが、冬(1月)の気温の差が0.5℃程度だったものが2℃程度にと大きくなっていることがわかる。図5-6a、図5-6b参照。
このような気温の上昇、湿度の低下ばかりか、雲や霧の増加(塵が凝結核になる)、さらに雷雨の増加もいわれる。いったん大雨が降ると、コンクリートはあまり水を吸い込まないので、たちまち中小河川の氾濫を起こす。
都市気候を緩和するためには、都市における廃熱をできるだけ小さくする(車の規制、空調の効率化、建物の断熱化など)、また都市部における緑地の拡大、暗渠(あんきょ)になった水路の復活、風の通り道をつくるなどが必要である。
図5-6a 東京の年平均気温の推移(1900年〜2013年):気象庁のデータをもとに作成
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php
図5-6b 東京と熊谷の気温の差(1900年〜2013年):気象庁のデータをもとに作成
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php
図5-7 都市気候
環境白書平成18年版
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/img/225/fb3.2.1.18.gif
なお、環境破壊・環境汚染については他に、森林の減少(2・3参照)、地球温暖化(6・3参照)がある。さらに、野生生物種の減少の問題、有害廃棄物の越境問題、開発途上国の環境(公害)問題、騒音や日照権の問題、水・食品の安全性の問題、リサイクルなどの問題もあろう。