6 地球の環境

 複雑な地球環境を研究するには、どのような手法が必要であろうか。

6・5 温暖化問題、そして地球環境を考える

 地球温暖化に代表される環境問題はたんに自然科学の問題ではなく、経済問題・社会問題でもあり、さらには政治問題・国際問題でもある。つまり、有限な地球の中で経済格差をどうするかという南北問題(資源と人口を巡る先進国と発展途上国の利害の対立)でもあり、これまた有限な地球の中でツケを後に回してしまうという世代間の問題でもある。それに東西の文化(宗教観・自然観)の違いが加わる。「『社会主義』の弊害」が明らかになった今日、今度は「資本主義の幻想」をも打破しなくてはならない。

 いずれにせよ、2006年の統計では日本は全体では世界第5位の二酸化炭素排出国(アメリカ、中国、EU、ロシアに次ぐ)、一人当たりでも世界第9位の排出国(アメリカ、ブルネイ、オーストラリア、シンガポール、カナダ、ロシア、ドイツ、イギリスに次ぐ)である。その責任は重い。


図6-19 国別二酸化炭素排出量 環境循環型社会・生物多様性白書平成25年版(2013年版)。
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h25/html/hj13020102.html#n2_1_2
一人あたりの二酸化炭素排出量:地球温暖化防止活動推進センター
http://www.jccca.org/chart/chart03_02.html

 「炭素税」(石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料に、炭素の含有量に応じて税金をかけることによって価格を上げて、結果として二酸化炭素の排出量を抑えるという制度、すでにフィンランド・オランダ・スウェーデン・ノルウェー・デンマークの5カ国で導入され、ドイツ・イギリス・イタリアでも同趣旨の制度が導入されている)や、「排出量取引」(先進国間で温室効果ガスの排出枠の一部を取引することができる制度、つまり排出枠を達成できない国が、削減枠以上に削減できた国に対して対価を払うことによって排出枠の余剰分を譲り受けることができる制度、両国合わせると排出枠を達成できたということになる。)などという生々しい言葉が新聞をにぎわせている。

 1997年12月の京都における温暖化防止国際会議(気候変動枠組み条約第3回締結国会議)における、小国の悲鳴と大国の駆け引きも記憶に新しい。日本だけでも、政府(それも曲がりなりにも京都会議で決められた二酸化炭素削減の数値目標を遵守しようとする環境省と、それをできるだけ骨抜きにしようとする経済産業省などとで意見が食い違う)や政党、産業界、市民団体などで様々な意見がある。こうした中、鳩山首相(当時)は2009年9月の国連総会で、2020年までに1990年比で25%削減を目標とすると宣言した(各国の足並みがそろえばという前提で)。

 また、2000年11月、オランダにおける気候変動枠組み条約第6回締結国会議は、森林による二酸化炭素の吸収を最大限に見込もうとする日本とアメリカの強引な主張と、それに反対するEUの対立が浮き彫りになった(いちおう森林による吸収量を見込むことは認められたが、森林は数十年の期間をとると、二酸化炭素を吸収して体をつくるが、死んだら微生物が分解して、あるいは燃やすことによって二酸化炭素に戻るので収支はゼロ、つまり二酸化炭素を吸収していないという意見も強い。)。6・3(2)b参照。

 何はともあれ、1997年に締結された「京都議定書」は2005年に発効した。ここでは、各国は1900年の二酸化炭素などの温室効果ガスの排出レベルに対する削減(2008年から2012年度までに実行)が義務づけられている。ただし、二酸化炭素排出大国であるアメリカ(図6-19参照)は京都議定書を批准していない(2011年1月段階)。もう一つの大国であるロシアは2005年に批准した。


図6-20 京都議定書で決めらた各国の削減量(増加を認められた国もある)
経済産業省キッズページ http://www.meti.go.jp/intro/kids/kankyo/earth08.html

 温室効果ガス(二酸化炭素など)の排出の規制は、とくに先進国に住む人間にとっては、ライフ・スタイルそのものの変更を迫るものかもしれない。そして、地球の環境に影響を与えるものは、二酸化炭素ばかりではない。

 こうした環境問題をどのように考えていったらよいのだろう。自然科学的な面だけとっても、できるだけ対象を単純化してとらえる近代科学の方法、つまり「森を見ないで木を見る」(要素還元主義)という方法では限界がある。逆に「木を見ないで森を見る」という方法も見つけなくてはならない。すでに「持続的成長の限界を越えた」ともいわれている今日、これは時間との戦いでもある。

 

※ 京都議定書の概要

 1992年採択(1994年発効)の気候変動をめぐる国際連合枠組条約に基づく、1997年京都で開催された気候変動枠組条約の第3回締約国会議(COP3)で、いわゆる「京都議定書」が満場一致で採択された。これにより、先進国に対して二酸化炭素などの温室効果ガスの削減量の割合が決められた(発展途上国に対してはない)。

 削減目標を実行すべき2012年以降、いわゆるポスト京都議定書についてはまだ決まっていない(2010年11月現在)。日本やアメリカなどの各国は高い目標値を掲げているが先行きは不透明である。


図6-21 京都議定書の概要 環境白書平成18年版
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/img/225/tb3.1.2.2.gif

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