秩父事件史 浅見好夫 言叢社
ISBN4-905913-38-1 3,200円 1990年11月
目次
はじめに
一 秩父困民党
二 蜂起準備
三 蜂起
四 制圧から瓦解まで
五 信州転戦
六 事件のあと
七 事件の背景
秩父事件史料一覧
人名索引
「幻の革命 秩父事件顛末記」(埼玉新聞社 昭和50年=1975年)の筆者による秩父事件研究の集大成。索引を入れると370ページを越す大部の本である。購入したのはこの2月であるが、1990年の初版のままであった。
大正12年(1923年)に秩父に生まれた筆者は、陸軍(満州の国境警備から終戦時は九州勤務)から戦後は警察官となった人。昭和57年に退職後、埼玉県県民部県史編纂室に5年ほど勤務した経験がある。「幻の革命」は警察官時代の著書ということになる。
筆者が秩父事件の研究を始めた経緯は「幻の革命」の前書きにある。それによると警察官時代に「埼玉県警察史」の編纂を命じられて、秩父事件のことを調べ始めたとある。警察関係の文書を見やすい立場にあった利点もあった。また、子供のころから田代栄助の話は聞いていて、畏怖の念を持っていたという。秩父事件を誇りに思っていたともいう。
そういう筆者の立場は基本的には困民党に同情的である。そうした筆者の67歳の時の集大成の本といえる。
はじめから乗り気でなかった田代栄助(死刑)の本部からの離脱、それをきっかけとした困民党の瓦解、それにもかかわらず死闘を演ずる大野苗吉(戦死)、信州に転戦する困民党トリオの一人坂本宗作(死刑)、東京に逃げたが捕まった加藤織平(死刑)、逃げ切った井上伝蔵(欠席裁判で死刑)など、それぞれの心情はどうだったのだろう。
私の評価は「早すぎた革命」と「遅すぎた一揆」の間で揺れている。
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秩父事件(農民蜂起の背景と思想
2005年2月記