秩父事件(農民蜂起の背景と思想)

秩父事件−農民蜂起の背景と思想− 若狭蔵之助 埼玉新聞社
ISBN4-87889-249-8 1,890円 2003年11月

目次
はじめに 今、なぜ秩父事件か
第1章 風布村困民党、自由党の組織過程
 (1) 大野福次郎の三冊の書き出し
 (2) 山林集会で村方困民党の組織化
 (3) 請願運動で困民党中央の指導体制の確立
 (4) 集団交渉による動員体制づくり
 (5) 政治的民権と社会的民権の統一
 (6) 困民党スローガンの決定
 (7) 困民党中核とその周辺
 (8) 全村参加へ
第2章 秩父農民のおかれた社会経済的背景
 (1) 埼玉県における初期製糸業の展開
 (2) 組合製糸
 (3) 組合製糸の技術過程
 (4) 横浜製糸取扱所の葛藤
 (5) マニュファクチュア段階への到達
 (7) 資本制生産と新たな階級結成
 (8) 困民党の蜂起
   I 革命本部の開衛
   II 浮塵子虫如き農民軍
  III 時ナラサルニ雪ヲ降ラシタリ
  IV 無政の府
第3章 群馬事件に実像を探る
 (1) 革命情勢と革命思想
 (2) 「自由党挙兵派」「の虚構
 (3) 群馬県下で闘われていた負債騒擾
 (4) 菅原村における農民階層の分解
 (5) 北甘楽精糸会社の創立
 (6) 減祖願で自由党の農民へのアプローチ
 (7) 一ノ宮光明院の自由党春の政談演説会
 (8) 自由党懇親会のナゾ
 (9) 妙技山麓陣馬ヶ原の集合
 (10) 山田米吉の菅原アピール
 (11) 生糸生産者たちに宿った革命思想
 (12) うまれた連帯、聯合盟約
終章 歴史と真実
おわりに
参考文献・資料出典

 地元埼玉の埼玉新聞社から出版された研究書。資料をカタカナから平仮名に変えてもらえるとありがたいのだが。

 士族による自由民権運動、農民による負債弁財運動、その狭間で成長した秩父困民党。

 困民党スローガン(カタカナを平仮名に変え、句読点を加えた)
1. 高利貸しの為、身代を傾け生計に困むもの多し。依って債主に迫り、10ヶ年据置き、40年賦に延期を乞う事。
1. 学校費を省く為、3ヶ年間休校を県庁へ迫る事。
1. 雑収税の減少を内務省へ迫る事。
1. 村費の減少を村吏に迫る事。

 社会改革の具体的な現れが表現されている。すなわち相手が単なる高利貸しにはとどまらず(打ち毀しにとどまらず)、政府であることが視野に入っている。実際、大野苗吉は「恐れながら天長様に敵対する」とオルグをかけている。苗吉は幹部だからある程度当たり前だが、風布村から参加した坂本儀右衛門は逮捕後の尋問に対し、「脇差しや竹槍は何の為に携帯せしや。」に答えてはっきりと、「官に抗敵する積もりなり。」と答えている。

 そして大宮郷(現秩父市)の裁判所・警察署から書類を持ち出し、「書類の紙片は市中に散乱して時ならざる雪を降らしたり」(矢尾板商店日記簿)という状況を作り出した。

秩父困民党群像
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ガイドブック秩父事件
秩父事件(農民蜂起の背景と思想

2005年1月記

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