第11章 気象観測と天気図
1.気象観測
気象庁は全国の観測所で、天気、気温、湿度、雨量(降雪量)、風向、風速、気圧、日照時間などを観測している。気象庁が使っている観測機器については、気象庁のサイト()を参照。気象観測は、6つの管区気象台、各地の気象台、さらに測候所などの観測網で行っている。
地上の観測網の他に気象衛星センター、高層気象台もある。また、よりきめ細かい観測を行うために、気象庁はアメダス(Automated Meteorological Data Acquisition System、地域気象観測システム)をいうシステムも運用している。これは、無人で降水量、気温、日照時間、風向、風速、積雪量)を観測し、リアルタイムでそのデータを気象庁に送るというものである。降水量だけの観測所が1300カ所以上ある。そのうち800カ所以上では風向・風速、気温、日照時間も観測している。海上では船や海洋ブイからのデータを利用する。全国の観測網は「気象庁の観測網」(http://www.kishou.go.jp/know/kansoku_guide/f2.htm#地域気象システム(アメダス)観測網)を参照。アメダスの観測装置については「用語と補足説明」の<百葉箱>を参照。
天気は、快晴(全天の雲量が1以下)、晴れ(雲量が2以上8以下)、曇り(雲量9以上で降水がない)のほか、雨、雪、さらに煙霧、砂塵あらし、地ふぶき(積もった雪が風で飛ばされている状態)、霧、霧雨、みぞれ、あられ(霰)、ひょう(雹)、雷もある。
気温は、直射日光が当たらず地面からの照り返しも少ない、芝生地などの上に設けられた風通しのよい百葉箱内、地表からの高さ1.5m程度の気温を測る。百葉箱の中には、他の観測機器も入っている。
百葉箱(東京管区気象台):http://www.tokyo-jma.go.jp/sub_index/yokoso/ksokki/data/kansokki.htm
雨量はある期間に降った雨がそのままたまったときの深さをmmで表したものである。降雪量はある期間に積もった雪の高さをcmで測ったものである。なお、積雪量は積もった雪全体の高さをcmで表したものである。
風向と風速は10分間の平均をとる。風向は16方位(例えば北北東までの細かさ)で表す。風速はm・s-1で表す。なお瞬間最大風速とは、10分間の平均ではない、文字通り瞬間ごとの風速の最大値である。風速は風力で表すこともあり、天気図上では風力がふつうである。
測定した気圧の値は必ず海面更正をしておく。
2.天気図
観測点からのデータを天気図用紙に記入し、また高気圧、低気圧の位置、前線の種類と進む向き、さらに等圧線を引いたものが天気図である。日本は天気図記号として、国際式ではなく独自の日本式の記号を用いている。
風向は風が吹いてきた向きに風向を表す棒の伸ばし(北の風なら北の方に)、のばした向きに対して右側に風力を表す横棒を風力の数だけ出していく。風力が7を越えたら反対側に横棒を出していく。前線は進む向きにそれぞれの種類を表す三角、半円の記号を出す。三角は青、半円は赤で塗ることが望ましい。高気圧、低気圧は指定された位置に「高」(「H})、「低」(「L」)を書き、気圧も書く。また進行方向と速さも指定されたら、進行方向に矢印、その横に速さも記入する。
日本式天気図記号(気象庁):http://www.data.kishou.go.jp/yohou/tenkizu/image/nihon.gif
等圧線は、気圧の等しい地点をなめらかな曲線(前線で急に曲がることがある)で結んでいく。地形図の等高線と同じように、等圧線は交差したり枝分かれしたりしない。ふつう等圧線は、1000hPaから4hPaごとに引いていく。また見やすくするために20hPaごとに太い線にする。1000hPa、1020hPa、1040hPa、また980hPa、960hPaが太い線、その間を4hPaごとの細い線で引いていく。あまり等圧線の間隔が広くなったときは、2hPsごとの等圧線を点線で引いてもよい。
4hPaごとの観測地はなかなかないので、そのときは下図のように近い値を持つ観測点の間を比例配分する。
実際のデータと、それから描かれた天気図の例は気象庁の「天気図の解説」(http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/tenkizu.html)を参照。
3.天気予報
天気図が描けると、ある程度の天気予報が可能になる。
一般的に下降気流がある高気圧は雲ができにくく天気がよいことが多い。逆に低気圧や前線付近では上昇気流のために雲が発生しやすいので天気が悪いことが多く、雨になることもある。
さらに寒冷前線が近づいてくると、急に天気が悪くなり、通過時はにわか雨が降ったり、突風が吹いたりする。前線通過後は急に気温が下がる。また風向も前線通過前は南西よりの風だったものが、北西よりの風に変化することが多い。
温暖前線が近づいてくると、徐々に天気が悪くなり(巻雲のような高い雲から始まり、だんだん雲が低くなってくる)、半日から1日後には乱層雲から持続的な雨が降ることが多い。
また日本付近では偏西風のために、高気圧(移動性高気圧)、低気圧とそれに伴う前線は西から東に向かって移動することが多い。さらには、日本は四季に応じた天気の特徴がある。
こうしたことをすべて考えて、天気を予報するのである。
気象庁は、現在のデータから将来の天気図をスーパー・コンピュータを使って作成し、それを用いて天気予報を行っている。これを数値予報という。数値予報については気象庁「数値予報とは」を参照。
「当たらない」といわれることもある天気予報であるが、とくに台風による死者が1959年の伊勢湾台風を最後に、1000名を越えていないことは評価すべきことだと思う。高価な気象衛星(ひまわり6号で衛星本体が160億円くらい?)はそれなりに役割を果たしているということである。気象衛星については気象庁「気象衛星観測について」(http://www.data.jma.go.jp/obd/sat/data/web/satobs.html)を参照。
百葉箱:1993年3月に東京大手町の気象庁での百葉箱での地上気象観測が終了した。1974年にアメダス観測がはじまると、気象庁を補助してきたボランティア観測者(学校、試験場、篤志家)も必要がなくなり、全国の百葉箱は減少の傾向にある。気象庁は、「温度計と湿度計の設置に関して、気象庁は感部(通風筒の場合は通風筒の下部、自然通風の百葉箱に設置されたガラス製温度計の場合は水銀やアルコールを溜めている球部)を地上から1.5mの高さに設置することを標準としています。」(気象庁気象観測ガイドブック)としているが、気象庁自身は、温度・湿度は通風筒内での温度・湿度センサで観測を行っている。
気象庁:http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/d1.htm#通風筒
アメダスの観測装置 | 観測装置の模式図 |
気象庁:http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/a3.htm |
国際式天気図記号:国際式の天気図記号は下の通り。
気象庁「天気図の解説」:http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/tenkizu.html
気象庁「天気図の解説」:http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/tenkizu.html