第二部−2− 地球の科学

第12章 地質構造と地質調査(4)

目次
4. 地層の対比
用語と補足説明
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4.地層の対比

 地下の地質構造が明らかになれば、その場所での地史を組み立てることができる。しかし離れた場所、例えば関東地方と北海道、あるいは日本とアメリカなどのそれぞれの地層の新旧をも調べなくては、地球全体の歴史を明らかにすることができない。限られた地域からは、限られた時代の地層しか存在しないからである。

 離れた場所の地層の新旧を調べて決定することを地層の対比という。地層の対比に役に立つ地層(単層)を鍵層という。鍵層としては、火山灰(凝灰岩)、示準化石を含む地層などが多く使われる。

 火山の1回の噴火は1〜2週間程度で終わることが多く、これは長い地球の歴史の中ではほぼ一瞬の出来事といってもよい。そして火山灰は同じ火山からのものでも、噴火のたびにその組成を変えるので、火山灰(凝灰岩)を詳しく調べると、どの火山の一の噴火のものかを決めることができる。だから火山灰はとくに風下側に広く一度に堆積するので、広い範囲の同時代性を示すよい指標になる。

 約22000年前に起きた九州姶良火山(現桜島)のような超巨大噴火による火山灰は東北地方までを覆っている。


姶良火山の火山灰の分布:群馬大学早川由起夫氏のフィールド火山学より
http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/kazan/field/0112.html

 下図のように、A、B、C三地域の地質柱状図から、火山灰Xと火山灰Yを鍵層として使った地層の対比ができる。また、貝化石をアサリは海水、シジミは汽水(海水と淡水が混ざったもの)、ヌマガイを淡水性の生物として、これらを示相化石とした使うこともできる。例えば、B地域は淡水−汽水−海水−汽水−淡水と環境が変わったことがわかる。たぶんこの地域ではこの柱状図が示す堆積時の初期から注記に書けて南から北へと海進が起こり、逆に中期から後期にかけては北から南へと海退が起きたのであろう。


1995年センター試験地学追試験

 

 ふつうの火山噴火ではこのように広範囲に火山灰が覆うことはないが、こうした超巨大噴火であっても日本とアメリカなどの離れた地層の対比を行うことはできない。このように離れた地域の地層の対比には示準化石を使うのがふつうである。有孔虫(フズリナなど)や放散虫の化石は、顕微鏡(や電子顕微鏡)を使わないと細かい構造を見ることができない微化石であるが、時代とともに形態の変異が大きく、広範囲に分布するのでよい示準化石である。

 下図のように、地点Aと地点Bの地質柱状図から、放散虫a〜dの中で同じ種類の化石が出る地層は、岩石の種類が違っても同じ時代のものであることがわかる。なお、タービダイトとは混濁流の堆積物であり、砂岩の層は級化層理をしていることが多い。


1997年度センター試験地学追試験に加筆

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用語と補足説明

フズリナの進化フズリナは下図のように、短期間に大きく形を変えている。さらに広い地域に分布している。こうした点で、非常に優れた示準化石となる。フズリナはらせん状に巻いた石灰質の殻を持つ単細胞生物であるが、下図のような複雑な構造をしている。フズリナの石灰質の殻が集まって石灰岩をつくることがある。比較的暖かい浅い海に生息していたので、そうした意味では示相化石にもなる。なお、フズリナ化石の写真はこちらを参照


1990年度センター試験地学

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