第10章 堆積岩と地層(3)
3.地層
a.地層の形成
風化・侵食で細かくされた粒子は、堆積するときに同じ大きさのものが同じ場所に堆積することが多い。例えば河口からの距離に応じて、粗粒→細粒へと変化する。しかし、堆積環境の少し変化(例えば季節変化による河川の流量の変化、海水面の変動など)に応じて、ある場所で堆積する粒子の大きさが異なる。こうして地層が形成される。地層形成のアニメーションはこちらのサイトを参照。
地層は本のページのように何枚も何枚も重なっている。その地層の一枚を単層(stratum)といい、何枚かの単層が集まって地層(strata)を形成する。単層と単層の境界面を層理面、あるいは地層面という。層理面(地層面)は堆積したときの堆積面である。
伊豆大島の火山灰の地層。風で運ばれた火山灰の地層である。火山は噴火のたびにマグマの組成が変わるので、1回ごとの噴火で吹き出る火山灰の組成も異なり、こうした地層を作る。2004年12月撮影。
b.単層の構造
単層の中にも細かい縞模様が見られることがある。これをラミナ(葉理)という。単層に対し斜めになっているものをクロスラミナ(斜行葉理)という。ラミナは堆積時(例えば三角州を作るときの先端に順に堆積するとき)や、まだ固結していないときの水流(風)によって粒子が少し動かされてできる。こうしたラミナの様子から当時の水流の向きや地層の上下(地層の反転があっても)を判定できることがある。
クロスラミナの例。このように上が断ち切られているのは、次の堆積物が堆積する前に少し削られてできる。
また、単層の中で粒子の大きさが変化しているものがある。これを級化層理(graded bedding)という。級化層理は、一度河口近くできれいに分粒(同じ大きさの粒子が同じ場所に集まる)した堆積物が、混濁流(乱泥流、turbidity current)によりいろいろな大きさの粒子を含む流れとなり別な場所に運ばれて堆積するときに、粗粒ほど速く、細粒ほど遅く沈殿するためにできる。こうした級化層理により、地層の本来の上下関係を判断することができる。
c.層理面の構造
層理面(地層面)は堆積時の堆積面であり、当時の様子が残っていることがある。例えば砂浜の浅い海底を見ると波の模様が砂に描かれている。これがそのまま残ることがあり、それを漣痕(れんこん、リップルマーク)という。“漣”は波のこと。また、まだ固まっていない堆積面を流れに運ばれてきた石が流れの痕を刻んだり、またそれを埋めたりした痕跡が残ることがある。。これを流痕という。あるいは、固まっていない堆積面を生物がはい回った痕や巣穴の痕が残ることもある。こうして情報も、堆積環境を復元するのに重要である。
群馬県神流町(かんなまち、旧中里村)瀬林の漣痕。恐竜の足跡も見える。2005年4月撮影。足跡の拡大写真はこちらを参照。 | 左の漣痕の拡大。置いてあるのはキーホルダー。 |
単層(stratum)と地層(strata):単層と地層は英語では単に同じ言葉の単数形と複数形で表現されている。日本語には単数形と複数形という違いはないので、わざわざ別な言葉である単層と地層として区別する。なお、stratum-strataのような単複の変化はdatum-dataにも見られる。
漣痕:漣痕に対してよく「波の化石」という表現が使われる。確かに波の痕跡だが、厳密にいうと化石は生物とその生活の痕跡をいうので、生物とは関係のない漣痕に対しては正しい表現ではない。