世界の見方の転換1 みすず書房 山本義隆 ISBN978-4-622-07804-3 3,400円 2014年3月 |
世界の見方の転換2 みすず書房 山本義隆 ISBN978-4-622-07805-0 3,400円 2014年3月 |
世界の見方の転換3 みすず書房 山本義隆 ISBN978-4-622-07806-7 3,800円 2014年3月 |
第1巻 天文学の復興と天地学の提唱
まえがき 第1巻 天文学の復興と天地学の提唱 |
第2巻 地動説の提唱と宇宙論の相克 第5章 ニコラウス・コペルニクス――太陽系の体系化と世界の一元化 1 天文学者コペルニクスの生涯と背景 2 コペルニクス改革を導いたもの 3 惑星系の調和と秩序 4 分点の歳差と1年の定義をめぐって 5 等化点(エカント)をめぐって 6 小周転円モデルの導入 7 コペルニクスにおける軌道の決定 8 惑星理論におけるコペルニクス改革の実像 9 二元的世界とその解体 10 コペルニクス地動説の隘路 11 コペルニクスの自然学 第6章 初期のコペルニクス主義者たち――レティクス、ガッサー、ゲンマ 1 レティクスとペトレイウス 2 レティクスの『第一解説』 3 宇宙の大きさをめぐって 4 アキレス・ガッサー 5 ゲンマ・フリシウス 6 経度決定法をめぐって 7 三角測量とゲンマの学問の手法 8 『回転論』出版の前後 9 コペルニクス理論への傾斜 10 学問の序列をめぐって 第7章 不可知論と相対論――オジアンダーとルター 1 『回転論』の匿名の序「読者へ」 2 「読者へ」をめぐって 3 アンドレアス・オジアンダー 4 相対性と不可知論 5 終末論と年代学 6 ルターとコペルニクス 7 ルターにおける科学と神学 第8章 宗教改革と数学的天文学の隆盛――メランヒトン・サークル 1 宗教改革と大学改革 2 メランヒトンの教育改革 3 メランヒトンと天文学教育 4 メランヒトン改革と数学教育 5 ドイツにおける占星術の隆盛 6 メランヒトンと占星術 7 メランヒトンとコペルニクス 8 エラスムス・ラインホルト 9 ポイツァーとその教え子たち 10 「ヴィッテンベルク解釈」をめぐって 付記B コペルニクス『回転論』における惑星軌道 B-1 小周転円モデルのケプラー運動との比較 B-2 外惑星の例としての土星軌道の決定 B-3 コペルニクスの地球軌道の決定 B-4 コペルニクスにおける地球軌道の大きさの決定 注記 雑誌名・全集名・辞典名・著者名略記 |
第3巻 世界の一元化と天文学の改革 第9章 彗星についての見方の転換――二元的世界溶解のはじまり 1 彗星の自然学的理解 2 彗星予兆説と占星術 3 定量的彗星観測のはじまり 4 ポイルバッハと彗星観測 5 視差をもちいた彗星高度の推定 6 1531年のハレー彗星 7 アリストテレス気象論のほころび 8 彗星についての新しい見方の登場 9 セネカの『自然研究』をめぐって 10 パラケルススの宇宙 第10章 アリストテレス的世界の解体――1570年代の新星と彗星 1 1572年の新星 2 ヘッセン方伯ヴィルヘルムIV世 3 ティコ・ブラーエと新星 4 ミハエル・メストリンと新星 5 古代的宇宙像崩壊のはじまり 6 ティコ・ブラーエと天文学 7 1577年の彗星観測 8 ティコとメストリンのアリストテレス批判 9 メストリンによる月の観察 10 アリストテレス批判からコペルニクス説へ 11 ティコ・ブラーエと占星術 第11章 ティコ・ブラーエの体系――剛体的惑星天球の消滅 1 ティコ・ブラーエとコペルニクス理論 2 ティコ・ブラーエの天体観測 3 ティコ・ブラーエの観測精度 4 ティコ・ブラーエの体系にむけて 5 パウル・ヴィティッヒ 6 クリストフ・ロスマン 7 剛体的惑星天球の否定 8 ロスマンとコペルニクス理論 9 ティコの体系のもたらしたもの 10 ジョルダノ・ブルーノと無限宇宙 11 パトリッツィとリディアット 第12章 ヨハネス・ケプラー――物理学的天文学の誕生 1 メストリンとの出会い 2 ケプラーの出発点 3 宇宙の調和的秩序 4 ティコ・ブラーエとの出会い 5 ケプラーとウルスス 6 天文学の仮説について 7 幾何学的仮説と自然学的仮説 8 物理学としての天文学 9 物理学的太陽中心理論 10 ケプラーの第0法則 11 円軌道の破綻 12 地球軌道と太陽中心理論の完成 13 等速円運動の放棄と面積法則 14 楕円軌道への道 15 ケプラーの第1法則 16 第2法則の完成 17 第3法則とケプラーの物理学 18 プラトン主義と元型の理論 19 ケプラーにとっての経験と理論 20 おわりに――物理学の誕生 付記C ケプラーの法則に関連して C-1 火星軌道の決定 その1 第0法則の検証 C-2 火星軌道の決定 その2 等化点モデルの検証 C-3 地球軌道の決定 離心距離の二等分について C-4 卵型軌道近似の誤差 C-5 楕円軌道の磁気作用による説明 C-6 火星軌道の決定 その3 直径距離と面積法則 C-7 ケプラーの思考の実例 第3法則の力学モデル 付記D ケプラーと占星術 D-1 ケプラーの占星術批判 D-2 星相の理論と有魂の地球 注記 文献(一次資料/資料集・辞典/二次資料・研究書) 雑誌名・全集名・辞典名・著者名略記号 人名索引 |
磁力と重力の発見(全3巻)、16世紀文化革命(全2巻)に継ぐ3部作にして完結編。表題どおり、世界の見方の転換を詳しく分析する。
第1巻において書かれている、16世紀のプトレマイオスの再評価は意外だった。ローマ帝国がキリスト教を国教としたと同時に、プトレマイオスの理論もキリスト教が支持したと思っていた。また、一応知識としては知っていたが、プトレマイオスの観測結果から天動説モデルを出すための精緻な考察を再現されているので、プトレマイオスの偉大さがよくわかる。さらにプトレマイオスは地理もやっていたわけで、まさに天も地も一体のものとして研究していたことが明らかになる。その姿勢、コスモグラフィア(cosmographia=天地学)は今日においても色あせていない。
第2巻においてはのコペルニクスの天動説の意味を、地球も一つの惑星としたことにあると説く。また、こうした理論を考え出す背景として、もちろん古代ギリシャの文献の再発見ということもあるが、それ以上にその時代の要請、遠洋航海が始まり正確な位置を知るためには正確な星の運行表の必要性があり、計算が複雑な上に誤差が大きいプトレマイオス理論に変わるものが求められていたというものがある。
第3巻はティコとケプラーである。いまだかつてない観測精度を誇ったティコ、だがその豊富な資料をまとめることができない。その観測資料が欲しいケプラー。二人が同じ場にいたのは1年にも満たないが、火花散る攻防があったと思われる。だが結局その観測資料を使い、またそれを無視ないで考え抜いたケプラーは、惑星の軌道を円とした場合と観測結果の差8分から、最後には楕円軌道にたどり着く(第1法則)。さらに、第2法則、さらには惑星どうしの関係を表す第3法則におてい、惑星を動かす原動力は太陽にあるという考えを確信する。
この本に出てくる中世西洋の先駆者たちは、神という束縛(円運動という束縛)、プラトン主義・アリストテレス主義という桎梏のもとで苦闘し来たわけである。こうした縛りがなかったアジアで近代科学が生まれなかった不思議。
筆者の次の関心は、明治以後の日本の科学技術の問題点だそうだ。次作が楽しみ。
山本義隆の本
・磁力と重力の発見
・16世紀文化革命
・世界の見方の転換
2014年4月記