16世紀文化革命

16世紀文化革命1 山本義隆 みすず書房
ISBN978-4-622-07286-7 3,200円 2007年4月

目次
序章 全体の展望
第1章 芸術家にはじまる
第2章 外科医の台頭と外科学の発展
第3章 解剖学・植物学の図像表現
第4章 鉱山学・冶金学・試金法
第5章 商業数学と16世紀数学革命

16世紀文化革命2 山本義隆 みすず書房
ISBN978-4-622-07287-4 3,200円 2007年4月

目次
第6章 軍事革命と機械学・力学の勃興
第7章 天文学・地理学と研究の組織化
第8章 16世紀後半のイングランド
第9章 16世紀のヨーロッパ言語革命
第10章 16世紀文化革命と17世紀科学革命
あとがき

文献
人名・署名索引

 17世紀の科学革命がいかに準備されていったかを明らかにする。目次にあるように、知識人ではない職人・商人・技師、さらには船乗りたちが事実を見てそれを解釈し、さらにはそのことを自分たちの言語(ラテン語ではない)で書いていったことが(誰もが知識を共有できるようになったことが)、そして自分たちの体験から生み出した技術が積み重なって、近代科学の礎を築いていく。彼らは知識を公共化すること(独占することではなく)を自らの使命ともしていた。彼らによる活動を16世紀文化革命と位置づけることができるという。

 17世紀科学革命は、知識人たちが職人たちから科学のヘゲモニーを奪い返したと捉え返すことができること、だが、その「近代科学」は極めて限られた問題にしか答えていないこと、さらにはその自然に対する攻撃性が21世紀以後には大きな問題となるだろうと警告している。

 「(古代遺跡が)観光資源として現在活用されている。ところが、〜略〜あちこちに廃炉と放射性廃棄物の貯蔵所を遺し、何百年も後の人たちがそれらの維持と漏れ出る放射線の対策に追われるという図はおぞましい。」「問題の根っこをたどれば、16世紀の職人たちがもっていた自然に対する畏怖の念を17世紀のエリート科学者が捨て去り、人間の技術が自然と対等、ないしは自然を上回ると過信したとことにあるのではないだろうか。」(あとがきから)は、ごく当たり前の自然な感覚だと思われる。この感覚は多くの人が共有できるのではないか。

 なお、ニュートンの言葉として伝えられる(ニュートンがライバルであるフックに送った手紙)、「われわれが巨人よりも多くの、そして遠くにあるものを見ることができるのは…」は、1130年に死んだシャルトル学派の創始者ペルナルドゥス(ベルナール)の言としている(2の627ページ)。この言葉(成句)については、「われわれは何者か」内の「ニュートン」も参照。ここからさらに、科学本翻訳家の青木薫氏のサイトに飛べるようになっている。青木氏のサイトで詳しい考察を読むことができる。

山本義隆の本
磁力と重力の発見
・16世紀文化革命
世界の見方の転換

2007年8月記

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