第二部−1− 地球の歴史

第1章 太陽系の形成

目次
1. 原始太陽系星雲
2. 微惑星から惑星へ
用語と補足説明
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1. 原始太陽系星雲

 恒星は星間ガス(分子雲)の中で誕生する。分子雲はいくつかの塊に分裂しながら、恒星へと進化を始める。そしてその分子雲は収縮と同時に回転を始めて、円盤形の原始太陽系星雲(原始惑星系星雲)になっていく。そしてその中でさらに塊に別れていき、中心は原始太陽(原始恒星)へと成長を始める。太陽系は50億年前に、こうして成長を始めたと考えられている。

 円盤部はガスであり、その主成分は水素をヘリウムである。中心部の原始太陽が分子雲のほとんどの質量を集めてしまうため、円盤部のガスの質量はその100分の1程度と考えられている。

 また、地球をはじめ太陽系の物質には鉄よりも重い元素が存在していることから、われわれ太陽系の材料となった元素は、どこかの超新星爆発によってまき散らされた元素であることもわかる。その超新星爆発が一つであったか、複数の超新星爆発のものによるのかはよくわからない。ただ、例えばウランの同位体の存在比がどのウランをとっても同じ(ウラン235:ウラン238=1:137.8)ということは、太陽系の材料の起源となる超新星爆発が複数であっても、爆発の時期はほぼ同じということになる。また、この存在比から、超新星爆発のときにはウラン235:ウラン238が0.6:1であるのなら、超新星爆発は54億年前に起こったことになる。つまり、元素の生成から5億年ほど、太陽系の材料は星間物質としてただよっていたことになる。ウランの同位体比のことについてはこちらも参照


原始太陽系星雲:日本惑星協会
http://www.planetary.or.jp/solar_system_02jpg.html

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2.微惑星から惑星へ

 原始太陽系星雲の温度が下がると、ガスが凝縮して塵(ダスト)ができてくる。そのとき、温度が高い太陽に近い内側では岩石(けい酸塩と金属)が、温度が低い遠いところでは氷(水、アンモニア、メタン)が、それぞれの主成分となる。この境界は3AU付近であったと考えられ、これを雪境界線という。

 ダストは衝突・合体を繰り返して、だんだんと大きくなっていく。数kmの大きさになったもの(質量は1015kg〜1018kg程度)を微惑星という。当然、雪境界線より内側では岩石の微惑星が、雪境界線の外側では氷の微惑星ができる。微惑星への成長は10万年程度の短い時間と考えられている。

 微惑星の中でも大きいものは、さらにまわりの微惑星を集めて暴走的に成長する。ある程度大きくなったころには、まわりの微惑星も少なくなり、成長の速さは鈍ってくる。外側の原始惑星ほど大きく(質量が大きい)、集めることのできる微惑星が分布する範囲が広いが(惑星間の距離が大きい)、それだけ成長に時間がかかる。

 こうして原始惑星が形成される。原始惑星の質量は地球型で地球質量の10分の1程度、木星型で地球質量の5〜10倍程度、天王星型で15〜20倍程度となる。また、原始惑星への成長時間は地球型で100万年、木星型で1000万年〜1億年、天王星型で1億年〜10億年といわれる。

 

図は「地球惑星学入門」(岩波地球惑星学講座1、1996年)の図5.10と、「宇宙と生命の起源」(岩波ジュニア新書、2004年)第7章の図3〜図7をもとにして作成。

 木星型惑星は、円盤部に残ったガスを大量に集める(降着させる)ことによって、自分自身のまわりに分厚いガスの層を持つようになる。地球型惑星は小さいために表面重力も小さく(ガスの降着に時間がかかりすぎる、いったとらえても逃がししまう)、ガスをたくさん集めることができない。また、天王星型惑星は惑星への成長が遅いためにガス円盤がその間に失われてしまう。こうして、太陽に近いところでは地球型が、太陽から遠いところでは天王星型が、その間では木星型の惑星ができることになる。

 

図は「地球惑星学入門」(岩波地球惑星学講座1、1996年)の図5.10と、「宇宙と生命の起源」(岩波ジュニア新書、2004年)第7章の図3〜図7をもとにして作成。

 原始惑星は、今の惑星と比べると小さい。地球型の原始惑星では大きくても火星大である。つまり地球になるためには、さらに原始惑星の巨大衝突・合体が繰り返されることになる。これは惑星どうしの引力、さらには木星の引力により不安定になって衝突するのである。その際に月もできたと考えれれている。火星や水星は原始惑星が残ったものかもしれない。

 木星型惑星は、たくさんの微惑星を集めることができたため(それが固体核になる)、重力も大きく円盤部のガスもたくさん(だいたい太陽質量の10000分の1)集めることができたのである。木星は実際この程度である。しかし土星は少し少ない。これは、木星よりは時間がかかった土星の固体核ができたことには、円盤部のガスの逸散が始まっていたためかもしれない。

 天王星型惑星は、固体核の成長に時間がかかり、円盤部のガスが逸散してしまったために、大量のガスを集めることができなかった惑星と考えられる。

 木星型惑星や天王星型惑星衛星のうち、惑星の自転・公転の向きに惑星の赤道面上をほぼ円軌道で回っているものを規則衛星という。規則衛星は上で説明した惑星の形成のミニ版と考えられる。また、逆行衛星や奇妙な軌道を持つ不規則衛星は、微惑星が惑星に捉えられたものらしい。

 小惑星は木星や土星の引力の影響を受けやすいところにある。そのために、微惑星や原始惑星ができても強く軌道を揺すられて、お互いの衝突速度が大きくなり、合体衝突ではなく、破壊衝突になってしまってできたものらしい。

 カイパーベルト天体は、成長がすごく遅い(太陽から遠いほど成長が遅い)ためにまだ微惑星から惑星への成長段階の天体、またオールトの雲は惑星の重力のために遠くへはねとばされた微惑星と考えられている。

 円盤部のガスが逸散する時期や、そのメカニズムについては不明な点が多い。

 また上に述べたのは、いわゆる「標準モデル」であり、太陽系の起源をある程度うまく説明できる。しかし最近、他の恒星にも惑星を持つものが多く発見されてきた(2009年末で400個以上)。その中には木星程度の大きさのの惑星が、水星の軌道よりも小さい軌道で恒星のまわりを回っていたり、また彗星のように大きな離心率(つぶれただ円軌道)を持っていたりする。こうした惑星系に対してはまだ未知なことが多い。

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用語と補足説明

原始太陽系星雲回転している分子雲の中のある塊に注目する。その塊は分子雲の中心に向かう引力と、回転による遠心力を受ける。この二つの力の合力は、下図の赤い矢印の向きになる。この力のため、分子塊はだんだんと中心に近づきながら、円盤の赤道面に落ちていく。こうして分子雲はだんだんとつぶれて、円盤形になっていく。微惑星ができるころになると、慣性も大きくなり、またガスの抵抗もなくなっていくので、それ以上太陽に近づくことはなくなっていく。

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重力圏その惑星の重力の方が、太陽の重力よりも大きい範囲。その大きさは、惑星の質量の1/3乗と、太陽からの距離に比例する。つまり、惑星が大きいほど、また太陽から遠いほどその範囲は大きくなる。原始惑星が質量を集めることができる範囲は、重力圏の10倍程度の大きさと考えられている。こうして、太陽から遠いほど、惑星間の間隔が大きくなっていく。

海王星海王星は標準モデルを使って計算すると、その成長には太陽系の年齢(約50億年)以上の時間がかかる。だから、海王星はもう少し内側でできたものが、木星・土星の重力によって現在の位置まで移動したと考えられている。また、カイパーベルト天体の分布は、海王星がこうして移動してきたと考えるとうまく説明がつくともいわれている。

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