第二部−3− 大気と海の科学

第6章 空気中の水蒸気

目次
1. 空気が含むことができる水蒸気
2. 露点
3. 湿度
用語と補足説明

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1.空気が含むことができる水蒸気

 空気が含むことができる水蒸気量(水蒸気圧)は、限りがある。その限界まで水蒸気を吹くんだ状態を飽和状態という。そのときの水蒸気量を飽和水蒸気量といい、1m3の空気に何gの水蒸気が含まれるかで表す。また、飽和水蒸気の代わりに水蒸気の圧力(分圧、hPa)で示すこともある。飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)は温度が高いほど多い(高い)。それはちょうど水に溶ける砂糖が、水の温度が高いほどたくさん溶けるのと同じである。その様子を下に示す。温度が高くなるとうなぎ登りに飽和水蒸気(飽和水蒸気圧)が増えていくことがわかる。気温が0℃以下の場合については下を参照

 飽和水蒸気量(g・m-3)と飽和水蒸気圧(hPa)の関係は下を参照。また、飽和水蒸気圧を求める式としてよく使われるのがTetensの式である。近似式だが、実用上はこれで十分という。

0℃以下の拡大は右を参照。 0℃以下


数値で表したのが下の表である。飽和水蒸気圧の測定の仕方は下を参照。Excel形式のファイル(飽和水蒸気圧と水蒸気量は別シートになっています)はこちら

温度(℃) 飽和水蒸気mmHg 飽和水蒸気圧hPa 飽和推移蒸気量g・m-3   温度(℃) 飽和水蒸気mmHg 飽和 気圧hPa 飽和水蒸気量g・m-3
0 4.6 6.11 4.85   20 17.5 23.4 17.3
1 4.9 6.57 5.20   21 18.7 24.9 18.4
2 5.3 7.06 5.57   22 19.8 26.4 19.4
3 5.7 7.58 5.96   23 21.1 28.1 20.6
4 6.1 8.14 6.37   24 22.4 29.8 21.8
5 6.5 8.73 6.81   25 23.8 31.7 23.1
6 7.0 9.35 7.26   26 25.2 33.6 24.4
7 7.5 10.0 7.76   27 26.8 35.7 25.8
8 8.1 10.7 8.28   28 28.4 37.8 27.2
9 8.6 11.5 8.83   29 30.1 40.1 28.8
10 9.2 12.3 9.41   30 31.8 42.4 30.4
11 9.9 13.1 10.0   31 33.7 44.9 32.1
12 10.5 14.0 10.7   32 35.7 47.6 33.8
13 11.2 15.0 11.4   33 37.7 50.3 35.7
14 12.0 16.0 12.1   34 39.9 53.2 37.6
15 12.8 17.1 12.8   35 42.2 56.6 39.6
16 13.6 18.2 13.6   36 44.6 59.4 41.7
17 14.5 19.4 14.5   37 47.1 62.8 43.9
18 15.5 20.6 15.4   38 49.7 66.3 46.2
19 16.5 22.0 16.3   39 52.5 69.9 48.6

  気温が0℃以下に下がった場合は少し複雑で、氷の近くでの飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)と、過冷却水(0℃よりも温度が低い水、不安定である)の近くでの飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)を比べると、過冷却水の近くでの飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)の方が少し大きい。つまり、氷と過冷却水の近くでは、過冷却水の近くの方が水が蒸発しやすい。これは、雨の成因にとって重要な役割を果たすことになる。  

気温

水蒸気圧

 hPa

気温

水蒸気圧

hPa

気温

水蒸気圧

hPa

気温

水蒸気圧

hPa

気温

水蒸気圧

 hPa

気温

水蒸気圧

hPa

気温

水蒸気圧

hPa

0

6.11

-10

2.60

-20

1.03

-30

0.38

0

6.11

-10

2.86

-20

1.25

-1

5.62

-11

2.37

-21

0.93

-31

0.34

-1

5.68

-11

2.64

-21

1.14

-2

5.18

-12

2.17

-22

0.85

-32

0.31

-2

5.28

-12

2.44

-22

1.05

-3

4.76

-13

1.98

-23

0.77

-33

0.28

-3

4.90

-13

2.25

-23

0.96

-4

4.37

-14

1.81

-24

0.69

-34

0.25

-4

4.54

-14

2.07

-24

0.88

-5

4.02

-15

1.65

-25

0.63

-35

0.22

-5

4.21

-15

1.91

-25

0.80

-6

3.68

-16

1.50

-26

0.57

-36

0.20

-6

3.90

-16

1.75

-26

0.73

-7

3.38

-17

1.37

-27

0.51

-37

0.18

-7

3.61

-17

1.61

-27

0.67

-8

3.10

-18

1.24

-28

0.46

-38

0.16

-8

3.34

-18

1.48

-28

0.61

-9

2.84

-19

1.13

-29

0.42

-39

0.14

-9

3.09

-19

1.36

-29

0.55

氷の近くでの飽和水蒸気圧 過冷却水の近くでの飽和水蒸気圧

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2.露点(露点温度)

 空気の温度(気温)が高いほど飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)は大きい。そこで、水蒸気を含む空気を冷やしていくと、気温が高いうちはすべて水蒸気のままでいられる。しかし、さらに気温が下がりその空気が含んでいる水蒸気が飽和に達すると、水蒸気は凝結をはじめて、ものの表面に水滴としてつくようになる(磨いた金属の表面などが曇ることでわかる)。この水滴ができ始める気温、つまりその水蒸気量(水蒸気圧)を飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)とする気温を露点(露点温度)という。

 水蒸気を含む空気は、露点まで気温が下がると水蒸気の凝結が始まる。さらに気温が下がるとその気温の飽和水蒸気量以上の水蒸気は水となる。例えば、下の図で、Aという気温の空気に青点線の水蒸気が含まれていたとする。この空気の温度を下げていくと、Bという気温で水蒸気が飽和に達する。このBがこの空気の露点となる。さらに気温をCまで下げると飽和水蒸気量以上の水蒸気(青実線)は水蒸気のままではいられないので水となる。

 露点は気温とは関係なく、その空気が含んでいる水蒸気量(水蒸気圧)を示す。例えば露点が15℃ということは、気温に関係なくその空気は128g/m3(17.05hPa)の水蒸気を含んでいることがわかる。

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3.湿度

 空気の湿り具合を湿度という。湿度が低いということは、まだたくさん水蒸気になれるということであり、汗が蒸発しやすいので感覚としては空気が乾いているということになる。また湿度が高いということは、もうあまり水蒸気になれないので、空気がじめじめしているという感覚になる。湿度は下の式で求める。これは飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)に対する割合なので、相対湿度ということがある。

 例えば、気温25℃の空気の露点が15℃であるとすると、その空気実際に含んでいる水蒸気は上の表から12.8g/m3(17.05hPa)であり、飽和水蒸気量(圧)は23.0g/m3(33.60hPa)なので、湿度(%)は(12.8g/m3÷23.0g/m3)×100=56%、あるいは(17.05hPa÷31.670hPa)×100=54%ということになる。

 気温が同じならば、露点が高いほど(その空気が含んでいる水蒸気が多いほど)湿度は高い。また露点が同じなら(その空気が含んでいる水蒸気が同じなら)、気温が高いほど湿度は低い。

 また、露点からはその空気が含んでいる水蒸気量(水蒸気圧)がわかるし、さらにその空気が何℃まで気温が下がったら、その空気中の水蒸気が凝結(雲が発生)するかわかるので便利なこともある。つまり、露点でも湿度を表すことがあり、それを露点湿度という。

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用語と補足説明

飽和水蒸気圧の測定下図のように、トリチェリーの実験で得られた「トリチェリーの真空」の部分に、水を送り込む。スポイトでガラス管の中に水を少しずつ注入すると、水銀よりも密度の小さい水滴はガラス管の中の水銀の中を上昇し、トリチェリーの真空部分で蒸発する。発生した水蒸気の圧力で、ガラス管の中の水銀面は少し下がる。水を注入し続けると、そのうち水が蒸発できなくなって、水銀面の上にたまり出す。つまり、水蒸気が飽和に達したことがわかる。このとき、はじめの水銀柱の高さと比べて、どのくらい水銀面が下がったかを測れば、その長さが水蒸気の圧力(mmHg、水銀柱ミリメートル)である。X(mmHg)とY(hPa)の換算は、Y=(1013/760)X、さらにY(hPa)とZ(g/m3)の換算は、そのときの気温をT(℃)とすると Z=217(Y/(T+273.15))となる。気温(℃)に273.15を足しているのは、絶対温度(K)に換算しているのである。

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飽和水蒸気量と飽和水蒸気圧飽和水蒸気量をa(g・m-3)、飽和水蒸気圧をe(hPa)、気温をT(K)とすると、a=217×(e/t)。(「気象の辞典」(平凡社)のp.259)

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Tetensの式E(hPa) =6.11 × 10 at/( b + t ) ( hPa ) tは温度(℃)
水面の場合a= 7.5、 b= 237.3 、氷面の場合 a= 9.5、b = 265.5

飽和水蒸気圧を求める式としては他にWagnerの式、さらにJISやWMO(世界気象機関)で使われているというSonntagの式などがある。たとえば100℃のとき、Tetensは1022.31hPs、Wagnerは1013.81hPs、Sonntagは1014.05hPaという値の違いが生ずるが、気象現象を考える0℃〜40℃の間ではほとんど差はなのでTetensの式で十分である。それぞれの細かい値はこのExelファイルを参照。

Wagnerの式:E(hPa)=Pc*exp((a*x+B*x1.5 + C*x3 + D*x6)/(1-x))
  t(℃)
 Pc=221200(hPa)  臨界圧
 Tc=647.3(K)  臨界温度
 x=1-(t+273.15)/Tc
 A=-7.7645
 B=1.45838
 C=-2.7758
 D=-1.2303

Sonntagの式:E(hPa)=(exp(-6096.9385×T-1 + 21.240942 - 2.711193×10-2 +1.673852×10-5×T2 + 2.433502×ln(T)))/100
 T(K)

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不快指数気温が高くても湿度が低ければ比較的過ごしやすい。気温がそれほど高くなくても湿度が高いとやりきれない。人間の快・不快の感覚はこのように気温と湿度の両方に関係している。そこで考え出されたのが不快指数である。不快指数(D)は下の式で計算される。

D=0.81T+0.01U(0.99T−14.3)+46.3 T:気温(℃) U:湿度

D>75でやや暑い、D>80で暑くて汗が出る、D>85で暑くてたまらないと感じる人が多いという。

 例えば、気温30℃、湿度80%だと不快指数は83となり、多くの人が不快を感じるが、同じ気温30℃でも湿度が25%になれば、不快指数は74となりそれなりに快適に過ごせるだろう。

 もっとも、不快指数だけで快・不快を決めることはできないし、感覚の問題なので個人差も大きく、気象庁では正式な統計対象とはしていない。

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