二部−2− 地球の科学

第3章 地球の構造-2- 付録:地球内部の地震波速度分布を求める

(1) 地震波の経路と平均速度
(2) 深さと地震波速度の関係

 地球内部を伝わる地震波の速さを求めてみよう。計算はMicrosoft Excelを用いた。直接Excelファイルを参照したいときはこちらをクリック。なお、下の表はExcelの表を直接コピーしているので、少し乱れている。

(1) 地震波の経路と平均速度

 まず震源Fから観測点Pまで地震波は地球内部を直進して進むものとする。震源Fから角距離θ(θ)の観測点Pまでの直線距離は、下図のようになる。そこで、P波、S波の走時(地震波が震源から観測点までにかかった時間)のデータから、直進したとしたP波、S波の平均速度を求めたのが下の表である。さらに下にそれをグラフ化したものを載せてある。

 角距離110°まではP波、S波ともに、遠くなるほど速くなっていることわかる。120°以降ではP波は急に遅くなり、S波のデータはなくなる。

 遠くなるということは、より深いところを通るということである(この図を参照)。だから、角距離110°に相当する深さまでは、地震波は深さとともに速度を増していることがわかる。そして、120°との間で地球内部の性質が急に変わることもわかる。この付近でP波は急に遅くなるし、S波は伝わらなくなる。S波が伝わらないということは、ある深さでS波が伝わらない液体の層があるということである。

 では、もう少し詳しく深さと地震波速度の関係を見てみよう。

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地球 内部 わる 地震波 走時 データ
震源 からの 距離 (°) P 走時 (s) 走時 (s) 直線 距離 (km) 最深 (km) P 平均 速度 (km/s) 平均 速度 (km/s)
0 0 0 0 0 0 0
10 150 270 1116 24 7.4 4.1
20 276 504 2223 97 8.1 4.4
30 378 684 3313 218 8.8 4.8
40 462 836 4378 386 9.5 5.2
50 534 972 5410 600 10.1 5.6
60 606 1104 6400 857 10.6 5.8
70 672 1230 7342 1157 10.9 6.0
80 726 1338 8228 1497 11.3 6.1
90 786 1440 9051 1875 11.5 6.3
100 828 1530 9805 2286 11.8 6.4
110 876 1614 10485 2729 12.0 6.5
120 1128   11085 3200 9.8  
130 1152   11601 3695 10.1  
140 1170   12028 4211 10.3  
150 1182   12364 4744 10.5  
160 1194   12606 5289 10.6  
170 1206   12751 5842 10.6  
180 1212   12800 6400 10.6  

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(2) 深さと地震波速度の関係

 実際には、地球内部を進む地震波は速度が違うところが通るときには屈折する。だから、本当は地震波は地球内部では中心に向かって凸の曲線を描きながら進む。しかしこの扱いは大変に難しい。そこでここでも第一近似として、地震波は地球内部を直進すると仮定する。

 観測点Pθ(震源からの角距離θ)と、次の観測点Pθ+10(震源からの角距離θ+10)を比べてみる。Pθ+10に届いた地震波はABの部分だけ、FPθを伝わった波よりも深いところを伝わっている。だから、この部分を伝わる地震波速度を求める。つまり、FPθ+10を伝わる地震波はFAとBPθ+10の部分は、その前のFPθを伝わった地震波の平均速度で伝わり、ABの部分だけ違う速度で伝わると考えるのである。実際の求め方を下に示す

 これらを使って下の表をつくる。また、深さとP波速度、S波速度の関係をグラフにしたものもその下に載せる。深さはθとθ+10の平均をとった方がいいかもしれないが、ここでは全体の傾向を見るだけので、下のようにしている。

震源 からの 距離 (°) P 走時 (s) 走時 (s) 直線 距離 (km) 最深 (km) 平均 速度 (km/s) 平均 速度 (km/s) より 部分 距離 (km) までの フカ さの 距離 (km) までの さを わる 時間 (s) がより 部分 わる 時間 (s) までの さを わる 時間 (s) がより 部分 わる 時間 (s) 部分 わるP 平均 速度 (km/s) 部分 わるS 平均 速度 (km/s)
0 0 0 0 0                 0 0
10 150 270 1116 24 7.4 4.1 1116 0         7.4 4.1
20 276 504 2223 97 8.1 4.4 1932 291 39 237 70 434 8.2 4.5
30 378 684 3313 218 8.8 4.8 2487 825 103 275 187 497 9.0 5.0
40 462 836 4378 386 9.5 5.2 2932 1446 165 297 299 537 9.9 5.5
50 534 972 5410 600 10.1 5.6 3307 2102 222 312 401 571 10.6 5.8
60 606 1104 6400 857 10.6 5.8 3633 2767 273 333 497 607 10.9 6.0
70 672 1230 7342 1157 10.9 6.0 3919 3423 324 348 590 640 11.3 6.1
80 726 1338 8228 1497 11.3 6.1 4172 4056 371 355 680 658 11.8 6.3
90 786 1440 9051 1875 11.5 6.3 4395 4656 411 375 757 683 11.7 6.4
100 828 1530 9805 2286 11.8 6.4 4591 5214 453 375 830 700 12.2 6.6
110 876 1614 10485 2729 12.0 6.5 4762 5723 483 393 893 721 12.1 6.6
120 1128   11085 3200 9.8   4910 6175 516 612     8.0  
130 1152   11601 3695 10.1   5036 6565 668 484     10.4  
140 1170   12028 4211 10.3   5139 6889 684 486     10.6  
150 1182   12364 4744 10.5   5221 7142 695 487     10.7  
160 1194   12606 5289 10.6   5283 7323 700 494     10.7  
170 1206   12751 5842 10.6   5324 7428 704 502     10.6  
180 1212   12800 6400 10.6   5344 7456 705 507     10.5  

 下のグラフは現在正しいと思われている深さと地震波速度の関係である。地震波が直進すると単純に考えても、傾向としてはほぼ正しいものが出ていることがわかる。

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