各国の少子化の状況
先進国の出生率の変化のグラフ(下)を見ると、日本とイギリス以外では少し出生率が上向いていることがわかる。各国それぞれの事情に応じた「少子化対策」がとられた結果のようである。長い間日本を下回っていたイタリアの出生率も少し上向きに転じ(2005年は1.33)、日本のそれ(2005年は1.26)を上回った。その結果、下の先進国諸国の中では日本が最低の水準となった。
※ 各国の対策は「各国の少子化の事情と対応策」(国立社会保障・人口問題研究所、少子化情報ホームページ
http://www.ipss.go.jp/syoushika/seisaku/html/211_2.htm)参照。
日本も1989年のいわゆる「1.57ショック」(1966年の丙午の年の出生率1.58を下回った)以後、それなりの対策がとられているが、実効をあげているとはいえない。現在の年金制度が、現役時代の年金拠金(国民年金・厚生年金・共済年金等への支払い)の貯蓄よって維持されているのではなく、現役世代の拠金(支払い)が現役を引退した年金受給者の年金となっているという、「世代間扶養システム」をとっているので、将来の年金水準の維持に暗い影を投げかけている。また、老齢人口の増加に伴い、医療費・福祉費の増大も懸念され、そしてそれをいかに負担するのかという難しい問題もある。
ただ、日本の適正人口はどの程度かということは、それ以上に難しい問題でもある。一つの考え方としては、日本という範囲で自給自足できる程度というものがあろう。江戸時代末期よりは農業技術が進んでいるとはいえ、当時の人口の倍以上のの7,000万人を養えるかどうか(日本の定員参照)。だから、人口が減っていくこと自体が問題ではなく、その減り方があまりに急激なことが問題であるというとらえ方もできる。
図1-11 欧米のの合計特殊出生率の変化 http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2008/20webhonpen/html/i1112000.html#clm 少子化社会対策白書平成25年版 |
アジアの出生率の変化 http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2008/20webhonpen/html/i1112000.html#clm 少子化社会対策白書平成25年版 |
右のグラフに出ているように、日本以上に少子化が急激に進んでいるのが韓国である。1970年代前半には4を越えていたのに、2000年から04年にかけて、合計特殊出生率が1.47、1.30、1.17、1.19、1.16(2005年の日本は1.26)と急激に低下している。その原因の大きな一つが、世界一高い教育費にあるといわれている。その他アジア諸国も大きく出生率を低下させている。ただし、最近は低いところで安定し始めたようである。
一人っ子政策をとっている中国は、毎年ごとの統計はないようであるが、1992年に2.0、2002年に1.8という数字がある。漢民族以外は一人っ子政策から除外されていること、またそれ以上に、子供が多い方がいいという長い間の価値観を打ち破るのは大変ということかもしれない。