ルポ人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から 三井誠 光文社新書 ISBN978-4-334-04410-7 840円 2019年5月
筆者(読売新聞科学部)から送られてきた本。筆者とは筆者の「人類進化の700万年」(講談社現代新書)で、とくにほ乳類−ヒトの視覚についてやりとりをした縁がある。
筆者が科学記者として2015年夏から3年間アメリカに赴任した期間は、たまたまアメリカ大統領選挙と重なった。この機会を利用して、おもに「地球温暖化懐疑論」「創造論」の二つを軸に、その現場を取材し(トランプの支持基盤でもある)、さらにはなぜ「地球温暖化懐疑論」「創造論」が受け入れられるのかを研究している研究者も取材する。
「地球温暖化懐疑論」「創造論」を信じる人たちがトランプの支持基盤ということは、科学的な結論もその人の世界観によって左右されるということだ。
なので、第4章で科学をどう伝えるかを議論しているが、非常に難しいと思う。アメリカ(やヨーロッパ)は宗教的な背景もあるということから、これと絡んだことは難しいことは簡単にわかる。だが、日本のように宗教のくびきがあまりきつくない国でも、なかなか難しいと思う。いや、逆に「科学」を装うものにはさらに無抵抗に受け入れる素地があるかもしれない。
そもそも科学って何だろう。一生懸命研究する、あるいは熱心にその成果を伝える、こうしたことの意味は何だろう。真剣に考えるとよくわからない。
目次
まえがき
第1章 自分が思うほど理性的ではない私たち
1・1 人は学ぶほど愚かになる?
1・2 科学のない時代に進化した脳
1・3 科学者の声を聞く必要はあるか
コラム 「ノーベル賞学者」というラベル効果
第2章 米国で「反科学」は人気なのか
2・1 米国の科学不信の底流
2・2 トランプ政権の誕生と科学
コラム UFOに感じる米国の多様性
第3章 科学不信の現場
3・1 創造論
3・2 地球温暖化懐疑論
コラム ローマ法王の声は届くか
第4章 科学をどう伝えるか
4・1 研究者はコミュニケーターではない
4・2 新しい伝え方を探る
あとがき
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2019年5月記