人類進化の700万年

人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」 三井誠 講談社現代新書
ISBN4-06-149805 760円 2005年9月

目次
まえがき
第1章 人類のあけぼの
第2章 人間らしさへの道
第3章 人類進化の最終章
第4章 日本列島の人類史
第5章 年代測定とは
第6章 遺伝子から探る
終章 科学も人間の営み 

 筆者は読売新聞科学部所属の記者。記者だけあって新しい情報の入手と、そのまとめは手際がよい。人類の進化の歴史を概観するのにいい本だと思う。

 すごく細かいことをいうと、「第6章の遺伝子から探る」の<見える世界の違い>の節は私と認識の違いがある。ほ乳類を除く脊椎動物は光センサーとして赤、緑、青、紫外線を感じるものがある、ほ乳類はこのうち青と緑のセンサーを失ったと書いてある。しかし、齧歯類を除くほ乳類や鳥類の中には紫外線に感受性のピークを持つのではなく、紫〜青にピークを持つものもいる(多い?)。魚類・両生類・は虫類での「紫外線センサー」の最大吸収波長はよくわからない。人間の色センサーは紫外ではなく紫(415nm)、それと緑(531nm)、赤(571nm)である。人間では紫外センサーでなく、紫センサーなので、少し誤解を招く表現だと思う。各センサーの最大吸収波長は、一部の動物を除いてまだよく調べられていないというのが実情だろう。

 大きな流れとしては、魚類からは虫類までは紫外〜紫、青、緑、赤の4つの色を見分ける視物質があったのが、ほ乳類はそのうち青と緑を失い(紫外〜)紫と赤の2つになってしまったが、霊長類に至って赤から分岐した緑を見る視物質が復活して3つになったというストーリーはその通りだと思うので、この本の記述でも大きな問題ではない。

 視物質(光センサー)の感受性を「色」で表現すると誤解を招きやすい。上のような場合は短波長(紫外〜紫)、中波長(青と緑)、長波長(赤)とした方がいいかもしれない。

 この件については、筆者の三井氏と意見を交換することができたので、これを踏まえて下の私のWebも少し書き換えた。

 http://www.s-yamaga.jp/nanimono/seimei/seibutsunoshinka-04.htm#相似(目)

 また上のページからも飛べるが、ヒトが電磁波のなかで、特定の波長を「可視」できるのはなぜかについては下のページを参照。

http://www.s-yamaga.jp/nanimono/uchu/kousei-3.htm#恒星のスペクトル

 

 また、まったく同じ頃に出版された違う筆者による「われら以外の人類」も参照。

2006年2月記 2006年3月修正・加筆 

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