7つの人類化石の物語 リディア・パイン 藤原多伽夫訳 白揚社 ISBN978-4-8269-0210-6 2,700円 2019年6月
この本は人類史の解説書ではなく、有名な人類化石7つ(7体)にまつわる物語である。それぞれの人類化石については帯(裏表紙側)にごく簡単な説明がある。
このなかで、ラ・シャペルの老人、タウング・チャイルド、フロー、セディバというニックネームは知らなかった。
なんとなく人類化石をめぐる社会(学界)は、利権とか、頑迷なボス教授とか、さらには国の威信(中国とかエチオピアに典型、なにしろ中国ではいまでも北京原人を現漢民族の祖先とする“学者”もいるらしい、つまり我々こそがもっとも古い歴史を持っている人類・民族という意識?)とかまでが絡むどろどろした世界をイメージしていた。でも、最後のセディバ(アウトラロピテクス・セディバ)の発見者のリー・バーガー(厳密には第一発見者は9歳の息子のマシュー)は、できるだけデータをオープンにする姿勢のようで、人類学も変わりつつあるのかなという感想をもった。
ダートが発見したタウング・チャイルド(アウトラロピテクス・アフリカヌス)が発掘された一体は“南アフリカの人類化石遺跡群(人類のゆりかご)”として世界遺産になっている。その一つ、スタルクフォンテイン洞窟には2018年7月に訪れたことがある。附設されている博物館は立派なものだった。中心はもちろん人類の進化で、この本にも出ているピルトダウン人も展示されていた。記憶ではピルトダウン人(じつはねつ造化石)のレプリカが展示されていたというものだったが、そのときの写真を見直すとピルトダウン人の写真だけだった。
更新世(258万年前〜11700年前)という用語が出てくるが、その絶対年代はやっとp.238にならないと出てこない。そもそも更新世とか洪積世(更新世とほぼ同義だが現在は使われていない)などの地質年代はなじみがないので、アウストラロピテクスが登場したころからの地質年代表をつけておいた方がわかりやすいと思う。
※ 3枚目がスタルクフォンテイン洞窟博物館に展示されていたピルトダウン人。”fake skull”とある。
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2019年6月記