地球と一緒に頭も冷やせ!

地球と一緒に頭も冷やせ! ビョルン・ロンボルグ 山形浩生訳 ソフトバンク
ISBN978-4-7973-4 2,000円 2008年7月

目次
はじめに
謝辞
第1章 ホッキョクグマは警告のカナリアだろうか?
第2章 熱を帯びて:手短に説明すると
第3章 地球温暖化:主な心配事
第4章 地球温暖化をとりまく政治
むすび

 地球温暖化論に的を絞ってロンボルグが再びほえる。

 「環境危機をあおってはいけない」と同じように、CO2削減のコストとその結果得られる成果と、緊急課題(たとえば発展途上国の伝染病、飢餓、水、貧困など)を解決するコストとその成果をきちんと比較検討すれば、CO2削減(=地球温暖化防止)のためのコストがいかに無駄な経費であるかということを力説する。そもそも、平均的には人類は豊かになってきている、飢餓や貧困、病気だって減ってきているという。

 だがそのもととなるデータの評価がないし(いくら統計の専門家といっても、自然科学の論文の評価・判断まではできないだろう、だから平均的データといいながら自分の考えと調和的なデータを持ってくる)、あるいは結論もこれは間違いでこちらが正しい(気温の変化や海水面の上昇など)と断定する。本当はまだどれもよくわかっていない、結論(これできまり)と断定するには誤差が大きすぎる段階だと思う。

 コストの計算も、一見説得力があるようだが、どのようにそのコストが算出されたのかを評価・判断しないと危険なものになってしまう。

 また、彼は極端な自由貿易論者、さらには極端な成長論者(現在の経済成長を続ければみんなお金持ちになって矛盾を解決していける)だが、コントロールなき市場経済が矛盾を解決できるだろうか。そしてたとえば、完全自由貿易にしたとすると日本の農家(牧畜家を含め)の多くはほぼ崩壊するだろうから、崩壊した彼等に対する援助というコスト(二次的なコスト)がかかってくることになる。あるいは現在の発展途上国への援助が、直接的には一番困っている人々のところに行っていない、あるいはずれている(親切の押し売り、価値観の押しつけなど)など、コストに見合う成果を上げているとは言い難いという現実もある。

 だが、問題意識(何でも地球温暖化のせいにはできない、ほかにもっと緊急にやらないことがあるのではないか)は私と共通するものがある。

環境危機をあおってはいけない ビョルン・ロンボルグ

2008年7月記

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