新しい地球学 渡邊誠一郎・檜山哲哉・安成哲三編著 名古屋大学出版会
ISBN978-4-8158-0590-6 4,800円 2008年3月
目次
はじめに
地質年代表
序章 地球学 太陽-地球-生命圏相互作用の理解
序.1 地球学とは何か
序.2 太陽-地球ー生命圏相互作用とは何か
第1章 太陽-地球-生命圏相互作用の動態把握
1.1 太陽−地球系とその変動
1.2 大気と水循環
1.3 地球生命圏 海洋
1.4 地球生命圏 陸域
第2章 古環境記録から見た太陽−地球-生命圏相互作用系
2.1 古環境復元のためのプロキシー
2.2 花粉分析 東アジアの過去200万年間の植生変遷
2.3 陸域古環境変動分析 バイカル湖に見る、北東ユーラシアの環境変動
第3章 太陽-地球-生命圏相互作用系のモデリング
3.1 大循環モデルとシンプルモデル
3.2 シンプルモデルによる気候変動メカニズムの解析
3.3 海が関わる気候変化
3.4 生命が気候を調整する
3.5 山岳上昇とアジアモンスーンの成立
3.6 氷河時代における気候変化 AOGCMによる研究からの考察
あとがき
記号リスト
事項索引
略語索引
この本には二つの不満がある。新しい地球学=シームレスなシステムといいながら、固体地球の部分はほとんど眼中にないこと、もう一つは地球(とうぜん地球−太陽)は生命圏を含むシームレスなシステムなどという視点は、すでに(あとがきでも触れられているように)1969年(昭和44年)に「現代地球科学−自然のシステム工学」(竹内均・島津康男、筑摩書房)という一般向けの本でも述べられている(内部的には1966年から)。とくに後者については、熊澤峰夫氏の紹介でつい先日に初めて知ったということは驚きでしかない。同じ大学の同じ理学部で(他大学から移ってきたにしても)、しかも編著者の一人安成氏は年齢的にも当然島津氏グループの考え方を知らない方がおかしい。自然が生命圏(さらには人類社会も含めて)シームレスなんて当たり前で、今さらそれを強調するほどのことではない(半世紀近く前からいわれている概念)。そして、そのシステムには生命のはたらきをも含めた様々な正負のフィードバックが着いていることも。こうしたことを何か新しい視点といわれてても…。このような人たちだから、あの珍奇なラブロックのガイア説にもコロッといってしまうのだろう。
具体的なこととしては、IPCC(とくに第4次レポート)に対する批判があるのなら、もう少し詳しく展開してほしかった。私は変動する地球の中で、人類の影響がどのように出てくるのかはまったく未知だと思っている。その変動する地球の実態さえわかっていないわけだから。
「進化する地球惑星システム」参照。
2008年11月記