進化する地球惑星システム 東京大学地球惑星システム科学講座編
東京大学出版会 ISBN4-13-063703-7 2,500円 2004年5月
まえがき
1 地球惑星システムとは何か
2 太陽系の原物質とその進化
3 地球惑星システムの誕生
4 冷却する地球の進化
5 スノーボールアース 凍りついた地球
6 カンブリア紀における生物の爆発的進化の謎
7 二億年の地球のリズム
8 天体衝突と地球システム変動
9 アイスエイジの気候変動−氷期と間氷期の繰り返し
10 地球とアジアモンスーン
11 地球温暖化に対する生物圏の応答
12 進化する地球惑星システム科学
地球惑星システム科学を理解するための参考書
索引
図表出典一覧
執筆者紹介・執筆分担一覧
東京大学の理学系学科の組織改編、すなわちこれまで地球物理学、地質学、鉱物学、地理学に別れていたものを、地球惑星システム科学という一つにまとめた。この本は、この意味を本にしたものといえよう。
自然を要素にわけて、その要素を研究するというのが従来の近代物理・化学を主体とする自然科学の研究態度であり、一定の成果を上げてきた。しかし、要素を単純に合わせれば全体になるというものでもない。
そこで、要素どうしの関係を全体として捉えるという作業が必要になる。この本はこうした観点で、地球、さらには惑星を見ていこうとするものである。この試みはある程度成功していると思う。
だが、正直いって「従来のシステム地球科学とは違う、もっと大きな空間スケール、時間スケールを扱い、対象も広い。」と、主にNASA1988年の諮問会議報告書でいわれている地球システム科学との違いを強調している。そして、例のラブロックのガイア説を高く評価している。これらには違和感を覚える。
すでに1969年(昭和44年)に「現代地球科学−自然のシステム工学」(竹内均・島津康男、筑摩書房)により、そうした問題意識で(当時まだ惑星の知識は少なかったという限界はあるが)地球科学をシステム的構築する試みがなされている。こうした歴史が無視されている。そればかりか、人類の社会活動が自然界に与える影響も同等に組み込むという姿勢は弱くなっている。
またこれと同根だと思うが、ラブロックのガイア説に対する評価である。正負のフィードバックを供えたシステムとして生物を捕らえることはできるが、地球を生物と捉えることとでは意味が違う。とくに、若い人に向けたメッセージを書いたと思われるこの本では、ガイア説を評価することは危険な側面もあると思う。
「新しい地球学」参照。
2004年10月記