第二部−2− 地球の科学

第13章 年代測定法(1)

目次
1. 時(とき)を刻むもの(1)
a.1日のリズム
b.1月のリズム
c.1年のリズム
用語と補足説明
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 化石などを使って地層の新旧を決めることはできても、その地層や岩石がいったい何年前のものだったのかということをどうやって調べたらいいのだろう。自然界には規則正しいリズムを持った現象があり、それが地層や岩石中に残されていれば、それを利用して年代を求めることができる。

1.時(とき)を刻むもの(1)

a.1日のリズム

 成長の早いサンゴの中には、昼に大きく成長し、夜はそれほど成長しないで、木の年輪のように日輪を刻むものがある。下の写真はサンゴ礁を造らない単体サンゴというものであり、横に細かい筋が見える。この筋が1日ごとの成長の記録、日輪である。さらに1年の中では夏にたくさん成長し、冬にはあまり成長しないので、夏に成長した部分は太く、冬の部分は細くなる。だから太いところから次の太いところまでが1年間ということになり、その間の筋の数を数えると1年の日数がわかる。

 地球の自転は、潮汐による海底と海水の摩擦によりごく少しずつではあるが、だんだんと遅くなっている。一方公転に対してブレーキをかけるものはないので、公転の周期は変化しない。だから、過去にさかのぼると自転が速くなる分、1年の日数が多くなる。だから、いつの時代の1年が何日かがわかっていれば、逆にサンゴの日輪の数を数えて1年の日数を求めることで、そのサンゴの化石を含む地層が何年前のものかを知ることができる。

 ただ、実際は地球の自転は時代と共に規則的に遅くなっているのではなく、そのときの大陸の配置などにも左右されるので複雑である。時代ごとの1日の長さ(時間)や1年の日数は下のブラフのように変化してきたと考えられている。このような下のグラフのような時代ごとの1年の日数が求まってしまえば、このグラフを使って年代を求めることができる。

 しかし、こうした日輪を刻むサンゴを含む地層は限られているので、このような方法で地層の年代を求めるのは一般的とはいえない。またもしこうしたサンゴの化石を含む地層があっても、細かい年代を決めることもできない。

単体サンゴの日輪:名古屋市科学館
http://www.ncsm.city.nagoya.jp/cgi-bin/exhibits/exhibit.cgi?no=3207
サンゴの日輪の模式図。横の筋が日輪。太い部分から次の太い部分までが1年。この間の筋の数が1年の日数。

 

過去の1年の日数:名古屋市科学館
http://www.ncsm.city.nagoya.jp/exhibits/L/L2/3207.html#pagetop

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b.1月のリズム

 潮汐は約1ヶ月(正確には朔望月)の周期で、大潮(干満の差が大きい)−小潮(干満の差が小さい)−大潮をくり返している。こうしたリズムが地層中に残されることがある。たとえば、山口大学宮田氏のページ参照。大潮から次の小潮までの干満の数は、地球の自転が速いほど多くなる。年代と干満の数の関係が求まっていれば、干満の数から年代を求めることができることになる。ただし、おおざっぱにいって昔ほど大潮−小潮間の干満の数が多いといえる程度で(地球の自転は確かに過去には速かったといえる程度)で、まだ年代測定に用いられるほどではない。

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c.1年のリズム

 木の年輪は1年のリズムを刻んでいる。切られた時がはっきりしている木の切り株が残っていると、これを手がかりに過去にさかのぼることができる。例えば下の例では、切られた年のわかっている木の切り株があり、若いころに大きな山火事で表面が損傷を受けた痕(赤い点線の1000年前の年輪)があった。また埋もれていた倒木にも同じ山火事で損傷を受けた痕(赤い点線の年輪)があったとすると、さらにこの年輪から木の中心まで1200本の年輪があれば、此木は1000年+1200年前から成長を始めたことがわかる。山火事の痕などは特殊だが、成長に適した天候が続いた年では年輪の間隔が広いなどという定性的なものも手がかりになる。このようにして、数万年前までさかのぼることができることもあるという。

 年輪年代学については国際日本文化研究センター安田氏のページを参照。

 もちろん、これまたどこでもこのような方法がつかえるわけではないし、数万年前までということでは考古学の範囲ではあるが、地史を調べるにはあまりにも短い時間である。

 氷河地帯には氷縞粘土(ひょうこうねんど)というものがある。これは氷河末端から流れ出る水に含まれる、氷河が細かく削った岩石の屑が堆積してできる。この岩石の屑のために氷河の末端から流れ出る水は濁っていることが多い。しかし当然、夏には氷が融ける量が多く、冬には少ない。このために夏に運ばれる岩石の屑は少し粗粒、冬に運ばれてくる岩石の粒は細粒のものだけになる。こうして、その堆積物は1年を周期とする縞模様をつくることになる。この縞模様を数えればよい。

 氷縞粘土の写真は岐阜大学地学教室参照

 同じようなことは湖沼のそこに堆積する堆積物でも見られることがある。こうしてこの縞模様を1枚、2枚、3枚、…、…、1万枚と数えればいいのだが、労力も大変だし、こうした方法でも過去数万年前までしかさかのぼることはできないので、これまた地史の編纂には不十分である。

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