地球について、まだわかっていないこと

正誤表(第1刷&第2刷)
 
※ (第2刷)とあるのが、第1刷、第2刷共通部分、何もないのが第2刷で修正済みの部分です。

p.37 ナトリウムインの総量(5.21×105kg/年)で割ると → ナトリウムイオンの総量(5.21×108kg/年)で割ると(第2刷)

p.128 5300分の1 → 530分の1(第2刷)

p.137 外核は発電機
 自己励起型の発電機なっている → 自己励起型の発電機なっている

p.149 ニューヨークまで迫りました。 → ニューヨークまで達しました。(第2刷)

p.150 現在は氷河期の中の間氷期
 バイキングがグリーランドの → バイキングがグリーランドの

p.166 IPCCの警告
 いま日本はじめ → いま日本はじめ 

p.178 気候変動の予測は難しい
 気温上昇によりツンドラが融けると → 気温上昇によりツンドラの永久凍土層が融けると

p.178 気候変動の予測は難しい
 二酸化炭素の量と地球の気温の変化の関係は逆で、温暖化すると二酸化炭素が増えるという関係だという人もいます。
  →二酸化炭素の量と地球の気温の変化の因果関係は逆で、温暖化すると二酸化炭素が増えるという関係だという人もいます。

p.194 確認可採埋蔵量は真の埋蔵量ではない
 すでに3000の深海から石油を汲み上げている → すでに3000の深海から石油を汲み上げている

p.211 原子炉の構造はどうなっているのか
 ジルコニウム … 1000℃を超えると水と反応して水蒸気の発生が始まってしまいます。
  → ジルコニウム … 1000℃を超えると水と反応して水素の発生が始まってしまいます。

p.222 継続的な低線量被曝の影響がわからない
 一方、爆弾の爆風・熱風を受けることが被曝です。 → 爆弾の爆風・熱風を受けることが被爆です。

p.226 放射線の単位と限界線量(被曝線量限度)
 Bqで量るとてつもない量に → Bqで量るとてつもない量に

p.232 「直ちに健康に害はない」の本当の意味
 放射影響協会によると → 放射影響協会によると

p.235 原発は地球温暖化防止に役立っているのか
 最近は地球温暖化防止が大義名分なって → 最近は地球温暖化防止が大義名分なって

p.237 原発は地球温暖化防止に役立っているか
 電気エネルギーの変換できません → 電気エネルギーの変換できません

p.246 原子力発電は安いか
 独立行政法人核燃料サイクル開発機構が行なっています。 → 独立行政法人原子力研究開発機構が行なっています。

p.247 原子力発電は安いか
 撤退線では殿部隊(しんがりぶたい)が → 撤退では殿部隊(しんがりぶたい)が

※ その他

p.59で「宇宙の差し渡し」を137億光年としたことに対し、国立天文台の「宇宙図」のルール3、4 では「宇宙の膨張のため、137億年前に光が放たれた場所は470億光年の彼方にまで遠ざかっている」とあるというご意見を頂きました。ただ、その470億光年の彼方からの情報は光・重力などもう何もわれわれには届かない、われわれに影響を与える範囲ということとで137億光年という値を使いました。

p.150で「バイキングが … 北アメリカ大陸まで到達したといわれています。」という表記に対し、「ニューファンドランドバイキング遺跡が世界遺産に指定されている。」というご意見を頂きました。確かにニューファンドランド島にバイキング遺跡(ランス・オ・メドー遺跡)があるので、アメリカ大陸にまで到達していたことはほぼ確実と思われます。ですから、「…いわれていいます。」という表記は、次行の「…50年間ほどかなり寒くなったといわれています。」と同じで、このような表記で「ほぼ確実」なこととしていると意味です。

 


本の紹介

地球について、まだわかっていないこと 山賀進 ベレ出版
ISBN978-4-86064-301-0 1,500円+税 2011年11月

目次
はじめに
第1章 地球と月の関係について
第2章 海水の起源と変遷について
第3章 生命の誕生と進化について
第4章 生物の大量絶滅について
第5章 プレートテクトニクスについて
第6章 地震予知とアスペリティ・モデルについて
第7章 マグマの発生について
第8章 地球内部について
第9章 過去の気候変動について
第10章 二酸化炭素の増加と地球温暖化について
第11章 石油の可採年数について
第12章 原子力の諸問題について
第13章 地球の定員につて
おわりに

はじめに
 科学の発展を振り返ってみると、何かがわかったとすると、そのわかったことがさらに新しい疑問を生む、そしてそれが解決すると、それがまたさらなる疑問を生むという繰り返しだったと思います。つまり無限の追いかけっこのように見えます。そうであるなら、アキレスとカメのように、アキレス(われわれ)はカメ(真理)にだんだん近づいているのでしょうか。それとも、追えば追うほど新しい疑問は大きく深くなって、真理はますます遠ざかっていくのでしょうか。

 数学・物理学史上空前の天才であるあのニュートンも、「私は真理の大海原を前に、浜辺できれいな小石や貝殻を拾って遊んでいる子供に過ぎない。」と言っています。できる人ほど、自分がどこまでわかっていて、逆に何がわかっていないか、そのわかっていないことの方が圧倒的に多いということを、よくわかっているということだと思います。

 2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震は、予測もされていなかったマグニチュード9という超巨大地震でした。またこの地震によって発生した「想定外」の大津波に襲われた福島第一原発は、爆発・メルトダウン(炉心溶融)という重大事故を起こし、大量の放射性物質を放出してしまいました。放出された放射性物質ために、多くの人たちが長い避難生活を、それも住み慣れた場所に戻れる保証がない避難生活を強いられています。

 東北地方で起こる地震は、最大でもマグニチュード8程度だろうという地震学者たちの予測が外れたのです。さらには、政府・電力会社が、原発は日本の優秀な技術でつくられ、またしっかりと維持・管理されているので、事故は絶対に起こらない、もし起こったとしても放射性物質は外に漏らすことは万が一にもないと言っていたことが、事実をもって覆ったのです。

 後者について言えば、人が作り、維持・管理しているものに事故がない、事故があってもその影響は出さないということは、そもそもあり得ないことなのです。でも、歴代の政府・各電力会社は、原発は「安全・安心」であるということを、無謬の神話として地域の人々、あるいは全国の児童・生徒に対して信じられない大金を使って宣伝してきました。その責任は重いと思います。

 だいたい、政府・電力会社が「絶対安全・安心」と保証していたことが破られた以上、あとはどう撤退するのか、その道筋を具体的に考えるしかとる道はないはずです。しかし、電力不足キャンペーンなどを見ると、言外に「原発は必要」と言っているように聞こえます。ですから私たちは、原発とは何か、政府・電力会社の言っていることは、どこまで本当なのか、あるいはどこがおかしいのかを見極める必要があると思います。

 前者の超巨大地震について言えば、予測ができなかったということは、結局まだ地震についてはよくわかっていなかったということです。地震に限らず、まだよくわかっていない自然現象は多いということでしょう。

 この巨大地震と原発事故は、人類がこれまでに獲得してきた知識と生きる術、言葉を変えれば科学と技術は、まだまだ大自然の前では取るに足らないものであるということを、再確認させるものであったと思います。

 巨大地震と原発事故は、いま一度、われわれは自然に対しては謙虚な姿勢に戻る必要があるという警告だったと思います。私は、この警告がレッドカードではなく、イエローカードであってほしいと思っています。

 この本では、非力を省みずに、地球−人類社会について、ここまではわかった、でもここはまだわかっていないということを、いくつかの事柄について簡単にまとめてみました。とくに、まだ何がわかっていないのかということを、整理することは非常に大切なことだと思います。少しでもこの本が、その整理の役に立てれば幸いです。

おわりに
 前著、「1冊で読む地球の歴史としくみ」(ベレ出版)をまとめるときにお世話になった、ベレ出版の板東一郎氏から、世の中の科学解説本はわかっていることしか書かれていないものが多い、でもわかっていないこともたくさんあるはずだから、今度はそれに焦点を当てた本を書いてみませんかというお誘いを受けました。

 たしかに、中学校・高等学校の理科の教科書では、とくに物理・化学の教科書では、わかっていることを中心に書かれているので、子供たちは自然のことはもう解明できていると思ってしまうかもしれません。これは無批判な科学信仰につながります。でも逆にこれは、少しでも科学で説明できないことがあることがわかると、それだけで「科学不信」に裏返ってしまう可能性があるということです。あるいは表面的に科学を装う似非(疑似)科学、たとえばマイナスイオンとかに簡単に魅了されてしまうという場合もあります。

 自然界にはわかっていることはもちろんたくさんあるけれど、それ以上にわかっていないことの方が多い、だからこれらを整理して、若い人に対してきちんと、まだわかっていない問題を提示できるのが理想的だと思います。数学の世界では、1900年にパリで開かれた万国数学者会議で、大数学者ヒルベルトが当時未解決だった23の問題を示し、「新しい世紀における天才たちと、気高い情熱に燃える多くの若人たちよ、立ち上がってほしいものである!」と締めくくりました。その後、この問題に多くの若い数学者たちが挑戦することになり、それが数学の発展に大きく寄与したと思います(23の問題の中にはまだ未解決の問題もあります)。

 私も本当はこのようなかっこいいことを言いたいのですが、大学卒業後の数十年間、大学の研究室や研究所とは一切関係がありませんでした。つまり、科学の最前線の場に立っていないし、その雰囲気すらわかりません。ですから、この本で書いたことについても、専門家から見れば、なんだ、まだそんなことを言っているのかというものもあるかと思います。この辺はご批判をいただければ幸いです。

 このように限界が多い本だし、それ以上にここに取り上げたこと以外にもたくさんわからないことはあるのですが、あえてその一部でもまとめて取り上げた方がいいと思い、このような本を書くに至りました。もしこの本を読んで、未解決の問題に挑戦しようとする若い人が出てくれれば、それ以上の喜びはありません。そうでないとしても、いま一度、自然界に対しては常に謙虚な姿勢で向かうことが大切だ、ということをわかって頂くだけでも十分だと思います。

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