「アプト線」を歩く

2019年8月30日、高校同期のハイキングクラブで旧信越本線のアプト区間を歩いてきました。

 八王子組は6時20分に改札前(2名)に集合でした。。この日はJRの青春18キップを利用しました。途中八高線の東飯能で1名が合流、高崎駅でさらに1名が合流。この日は男性4名というコンパクトなものになりました。車窓から見る外の雨の様子は、なかなかやみそうにありません。でも、「雨雲レーダー」を見ると、横川付近は雨雲と雨雲の間に入っています。

 9時57分、現在の信越本線の終点、かつてのアプト式電気機関車と交換の駅横川に着きました。駅前と、駅から少し下った国道中山道脇のドライブインに峠の釜めしの「おぎの屋」があります。雨はやんでいました。10時過ぎに出発。

 まず碓氷関の跡を見学です。ボランティの案内の人が常駐しているようです。丁寧に説明してくれました。このあたりで雨が降り出しました。その後雨は降ったりやんだりの天気でした。でも、雨といっても小雨で、風もないのでレイン・ウェアを着るまでもなく、傘だけで十分でした。

 碓氷関を見学後、アプト線の跡地を整備した遊歩道に入ります。鉄道文化むらにたくさん集められた列車が下に見えます。すぐにサルの群れに遭遇しました。先頭は群れのリーダーらしく、あとに子供を抱えた雌ザルがたくさん続いてきます。地面を見ると、フクラスズメの幼虫がたくさんいます。途中から明らかに傾斜がきつくなります。確かにここを鉄道が登るのは大変そうです。途中でトロッコ列車「シェルパくん」に抜かされました。鉄道文化むらと峠の湯を結ぶトロッコ列車です。運賃は500円ですが、別途鉄道文化むらの入場料500円も必要です。

 旧丸山変電所跡は立派なレンガ造りの建物二棟です。かつては内部も見学できたようです。窓から中を覗くと、いろいろなものが雑然と残っていました。ここまで来ると、峠の湯は近い。 

 峠の湯には11時半ころに到着しました。中を覗いて営業していることを確認します。帰りに時間があれば汗を流すことができます。少し休んで出発。次は、碓氷湖です。アプト線の道から少し離れて下ります。四阿があるので、ここで昼食となりました。11時50分ころでした。

 碓氷川をせき止めた坂本ダムの堰堤まで行ってみました。なかなか大きなダムです。また、湖畔を一周(1.2km)できるように遊歩道がつくられているようです。その遊歩道のオレンジ色の橋二つが四阿からも見えます。ただ、ダムの先は「野生動物に注意」「山ビル注意」とあり、手入れもあまりされていないようでした。

 昼食後、アプト線の道に戻ります。すぐに、中尾小屋という四阿がありました。ここからトンネルや橋梁の混じる道になります。トンネルは全部で10ありました。照明が暗い(それも18時消灯)ので、足下に注意しながら歩きます。トンネルの壁には、作業員の待避に使った窪地がたくさんあり、そこを信号線を上に迂回させるための金具が残っていたりします。また側面が外に開けている窓があるものや、天井に煙り抜け用の穴が空いているものもあります。下に空いている穴もありますが、用途は不明です。

 第3橋梁が人気のめがね橋です。12時40分ころになっていました。記念写真をここで撮りました。ここで戻れば、峠の湯にゆっくりと入れます。思案するところですが、最初の計画通り熊ノ平まで行くことにしました。熊ノ平までは第6号トンネルから、最後の第10号トンネルまでの5つのトンネルがあります。

 平地になっている熊ノ平(熊ノ平駅→熊ノ平信号場跡地)に着いたのは13時10分ころでした。ここはかつて、スイッチバックで列車の行き違いを行っていたために、また、その後の線路の付け替えなどもあり、横川側に4つ、見えませんでしたが軽井沢側に3つのトンネルがあり、それぞれその外側がこの路線の最大斜度66.7‰(パーミル、1000mで66.7m登る、約3.8°)の傾斜だそうです。ただ、後の鉄道技術の進歩もあり、アプト式(滑り止め用歯車付き)は1963年に廃止されました。それでも、専用の専用電気機関車EF63形2重連で運転(粘着運転)していたようです。このEF83形の愛称が「峠のシェルパ」だったので、現在のトロッコ列車の愛称「シェルパくん」になっているようです。

 少し急いで下れば14時40分の「シェルパくん」に間に合いそうだということで、下りはまじめに歩きました。その結果、とうげの湯駅についたのは、14時15分。25分待つなら歩いた方がいいということになり(1,000円かかるし)、歩いて横川まで戻ることにしました。途中、登ってくるシェルパくんとすれ違い、あと少しで横川駅というところで、戻ってきたシェルパくんに抜かされました。帰りにはもうサルの群れは姿を消していて、でもあいかわらずフクラスズメの幼虫はたくさんいました。

 アプトの道の入り口に戻ったのは15時、横川発高崎行きは16時02分です。1時間ほどの時間がありますが、横川の町は寂れていて入るようなお店がありません。かろうじて1軒残っていたお酒屋さんも戸が開かない。しかたなく、お店脇の自動販売機でビールをゲットして、横川駅前に設置されているテント内のテーブル・ベンチで時間をつぶします。

 高崎駅でも乗り換えに30ほどの余裕があったので、各自飲み物とつまみをゲットして、少し早めの15時50分集合となりました。早めにホームに降りていて正解、高麗川行きの八高線ではボックス席を確保できました。さすがに、ベンチシートで飲み食いは恥ずかしい。

 八高線といいながら、高崎−八王子直通はもうないらしい。高崎−高麗川が非電化区間(ディーゼル)、高麗川−八王子は電化されています。高麗川で川越からの電車に乗り換えということになります。2両編成のディーゼル列車から、4両編成の電車に変わるので、すくかと思いましたが、結構混んでいいました。でも、3人並んだ席を確保(こちらはベンチシート)。一人は次の東飯能で乗り換えということです。拝島でさらに一人降り、19時35分に到着した八王子で最後のメンバーと別れて、この日の行動を終わりました。

 利用した青春18キップはJR普通・快速の自由席にしか使えません。ですから、往復に少し時間がかかります。この日は八王子−横川が往復で7時間弱かかりました。でも、通常のキップだと往復約4,000円の運賃が、2,370円と圧倒的に安くすみます。 青春18キップが高齢者御用達のキップの所以です。 

 アプト式は、かつて信越線が横川から先へ、直江津や新潟へと続いていた時代、まだ高崎付近で蒸気機関車が当たり前に走っていた時代、軽井沢からは草軽電鉄という軽便鉄道が走っていたもう60数年も前のころに何回か乗ったことがあります。そういう意味では、遊歩道になってしまったとはいえ、このアプト線の道はちょっと懐かしくもありました。 

※ アプト式のようなラック式の登山電車にはいろいろな種類があり、フランスのシャモニーで乗ったモンタンヴェール登山電車(ここは斜度110〜220‰、220パーミルは約12.4°というケーブルカー並みの傾斜)はラック式はシュトループ式というもので、頭の大きなレールの形をした鋼材に歯をつけてラックにしたもの、アプト式は2〜3枚のラックレールを歯形をずらして設置したものということらしいです。
https://www.s-yamaga.jp/ryoko/Alps2015/aug04/alps2015aug04.htm

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2019年8月記

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