第15章 高層天気図
目次 | |
1. | 高層天気図 |
2. | 偏西風の波動と地上の高気圧・低気圧 |
用語と補足説明 |
1.高層天気図
上空は地形などの影響が少ないので、単純な天気図が得られる。このような上空の天気図を高層天気図という。高層天気図は、ある気圧(850hPa、700hPa、500hPa、300hPa)の等しい高さの等高線として表す。この高さが高いところが高気圧、低いところが低気圧ということになる。高層天気図では、風はほぼ等圧線(高層天気図においてはある気圧の等高線)に平行に吹いていることに注意。上空を吹く風(1)、上空を吹く風(2)参照。
高層天気図は地上天気図よりも大きな傾向を読みやすいので、気象庁などの専門家には便利である。
なお、高層の気象観測を行う具体的な方法については福岡管区気象台のサイトを参照。
2005年8月21日9時の地上天気図
気象庁:http://www.jma.go.jp/jp/g3/wcAsia.html
2005年8月21日9時の高層天気図(700Paの等高線)
日本気象株式会社の地球気:http://n-kishou.com/ee/
2005年8月21日9時の高層天気図(500Paの等高線)
日本気象株式会社の地球気:http://n-kishou.com/ee/
2005年8月21日9時の高層天気図(300hPaの等高線)
日本気象株式会社の地球気:http://n-kishou.com/ee/
高層天気図では、北極や南極の上空はつねに低気圧となる。ジェット気流は極地方の冷たい空気と低緯度の暖かい空気の境界で吹く風である。だから、北半球の上空においてはジェット気流を境に北側が気圧が低く、南側が気圧が高くなる。ジェット気流が下のように蛇行していると、北側に膨らんだところは上空の気圧の尾根、南側に張り出したところは上空の気圧の谷となる。
気圧傾度力が同じならば、高気圧のまわりに吹く傾度風の方が、低気圧のまわりに吹く傾度風よりも強い風となる(V1>V2)。そこで、上空の気圧の谷の西側(図のA)では、吹き込む風(V1)が吹き出る風(V2)より速いので空気量が多くなり、その下の地上では高気圧が発達しやすい。逆に、上空の気圧の谷の東側(図のB)では、吹き出る風(V1)の方が吹き込む風(V2)よりも速いので空気が少なくなり、その下の地上では低気圧が発達しやすい。
北極を上から見た高層天気図を見ると下の図のようになっている(北極の上空はつねに低気圧)。このようにジェット気流(偏西風)の蛇行の形、移動に伴い地上の高気圧・低気圧の分布、移動に関係していることがわかる。下の図ではジェット気流は地球を取り巻く4波形の形をしているが、時と場合によっては2波形、3波形、5波形、6波形、あるいははっきりとした波には見えない形などをとる。
実際の北極を中心とした500hPa高層天気図(2005年8月20日12時)。北極を中心とする低気圧のまわりをジェット気流が流れている。弱い3波形。
北海道放送:http://www.hbc.co.jp/pro-weather/
偏西風の蛇行と異常気象:偏西風(ジェット気流)の蛇行が南北に大きくうねり、それが固定されることがある。こうした状態をブロッキングという。ジョット気流の北側(北半球では)には寒気、南側には暖気があるので、ジェット気流の蛇行が大きくなると、場所によっては通常よりも暖気が北上し、別な場所では通常よりも寒気が南下する。またジェット気流が南下した気圧の谷の東側に低気圧、西側に高気圧が発達する。つまり、下の図のように青い地域では寒波や豪雨の可能性が高く、赤い地域では熱波や干ばつの可能性が高い。しかもそれが長時間続くことになる。こうしたことが異常気象を引き起こす一つの原因となる。ただし、どうしてブロッキング型が現れるのかはよくわかっていない。
異常気象:気象庁の解説では、「その地点、季節として出現度数が小さく平常的には現れない現象または状態。統計的には30年に1回以下の出現率の現象。」となっている。