第1章 地震
1. 地震の観測の補足説明のさらなる補足
電磁誘導について
a.電流と磁場
電流が流れると磁界(磁場)が生ずる。その磁界の向きは、電流が進む向きに右ねじを回わしてくいこませるときの、右ねじを回す方向(右巻き、時計回り)になる。
b. コイルと磁場
導線をコイル状に巻いて、そこに直流電流を流すと、そのコイルは磁石(電磁石)になる。その磁界の向きは電流の向きによって決まる。導線の一部の電流の向きを考えると、コイル全体の磁界の向きがわかる。
電磁石の強さは、電流の大きさとコイルの巻数に比例する。コイルの真ん中に鉄芯(焼きなましした軟鉄がよい)を入れると、さらに磁石の強さは強くなる。
c.電磁誘導
コイルの近くで磁石を動かすと、磁界が変化する。そのとき、コイルのまわりの磁界の変化を少なくするような電流がコイルに生ずる。これが電磁誘導であり、そのときに流れる電流が誘導電流である。下図のように、磁石がコイルに近づくときは電流は矢印の向きとなる。磁石が遠ざかるときは、逆向きの電流になる。これを連続的に行うのが交流発電機である。このとき、電流の向きは周期的に変化する。
この図では磁石(磁界)を動かしているが、磁石を固定して、コイルを磁石に近づけたり遠ざけたりしても、コイルのまわりの磁界が変化するので、コイルに電流を生ずる。
モーターは発電機とは逆に、コイルを流れる電流と磁界の間で生ずる力を利用するものである。発電機は何らかの方法で磁石かコイルと動かすこと、モーターは何らかの方法で電流を流すことが必要である。いずれにしても、エネルギーを与えなければ発電機にもならないし、モーターにもならない。
d. 電磁式地震計
例えば振り子やばねのおもりにコイルを巻いておき、両側から磁石ではさんでおく。地震のとき、おもりは不動点になり、その両側の磁石が動く、つまり磁界が変化するので、コイルに誘導電流が流れる。これが電磁式地震計の原理である。いわば、地震の際の振動をエネルギー源として発電を行っているのが、電磁式地震計といえよう。