第二部−2− 地球の科学

第12章 地質構造と地質調査(3)

目次
3. 地質構造と地質図
a. 露頭
b. 地層の走向と傾斜
c. クリノメーター
c−1 クリノメーター
c−2 クリノメーターの使い方
d. ルートマップ
e. 地質図
用語と補足説明
このページの参考になるサイト

3.地質調査と地質図

a.露頭

 岩石や地層が地表に露出しているところを露頭という。ふつう地表は表土におおわれていたり、人工的におおわれていたりしていることが多い。だから地質調査の第一歩は、露頭を探すということになる。切り開いたばかりの切り通し、川沿い、海岸沿いなどで露頭を探す。人跡未踏で(道がなく)登山の技術が要求されるような所もある。

b.地層の走向と傾斜

 堆積したときは水平であったはずの地層も、その後の地殻変動のために傾いていることが多い。傾いた地層が、どのように傾いているのかを表すものが走向と傾斜である。

 走向は地層面(層理面)と水平面(高さはどこでもよい)の交線の向きである。その線が北を基準として何度東、または西にずれているかで表現する。たとえば、その線が北から東に30°ずれていれば、N30°Eと表す。もし地層が同じようにずっと続いているとすれば、この高さのまま同じ向きに(もちろん南から西に30°の向きにも)同じ地層が出てくるはずの方向でもある。

 なお、走向が南北であれば、たんにNSと書けばよい。また、地層が水平であれば走向も傾斜もなく、たんに水平とすればよい。

 傾斜は地層面(層理面)が水平面から何度傾いているかで示す。当然、傾斜を測る向きは走向に対して垂直の向きである。

走向と傾斜の表し方(記号)

特殊な場合の表し方(記号)

戻る  このページのトップへ  目次へ  home

c.クリノメーター

c−1 クリノメーター

 地層の走向と傾斜を測る道具がクリノメーターである。図や写真のように、クリノメーターの面が水平になったかどうかを確認する水準器、走向を測方位磁石、また傾斜を測る傾斜計がついている。方位磁石のメモリは走向を直接読むために、わざと東西(EW)が逆に目盛ってある。

クリノメーターの模式図 クリノメーターの例、こちらのタイプも参照。

※ 地質調査の三種の神器というものがあった。クリノメーター、ハンマー、地形図である。ハンマーは岩石のサンプルを採集するときや、新鮮な表面を出すために岩石を割るときに使う。地形図はもちろんどの地点を調査し、どの地点からサンプルを採集したかを知るためである。昔は地形図上で、自分の位置を特定するのはなかなか技術が必要であったが、現在では携帯GPSが安価になってきたので、ダイレクトに自分の位置を知ることができるようになった。調査地点のGPSの位置情報を、パソコンで地形図上に入れることもできる。

c−2 クリノメーターの使い方

 走向を測るには、地層面(層理面)に、クリノメータの表の面が水平になっていることを水準器で確認しながら長い方の辺を当てる。そして、方位磁針で目盛りを直接読めばよい。下の右の図を見ると、クリノメーターではわざと東西(EW)が逆に付けてある意味がわかると思う。つまり、何も考えずに単に目盛りを読めばいいようになっている。

 なお実際には、磁石が指す北は偏角のために真北ではないので、その分の補正が必要である。

 傾斜は、地層面(層理面)上で走向の方向に垂直な向きにクリノメーターを下の図のようにあて、傾斜を読む方の目盛りを読む。走向や傾斜が目の高さと異なり読みにくいときは、ストッパーで止めて手元に持ってきて読めばよい。

戻る  このページのトップへ  目次へ  home

d.ルートマップ

 調べた露頭の情報を地形図に書き込んでいったものがルートマップである。地形図上では書ききれないことはフィールドノートに書いたり、写真を撮っておいたりする。

e.地質図

 ルートマップをもとに地質図を作成する。地質図は表土を取り除いたとして露出する地表の岩石の種類、不整合、断層、褶曲などの地質構造、さらに岩石や地層の年代を書き込んだものである。地質図が書けていれば、その地域の地質断面図を書くこともできる。

 地質図上で地層面(層理面)や断層は線で現れる。この線のことを露頭線という。下に地質図の実例を示す。産業技術総合研究所地質調査総合センターの地質図は下に紹介したサイトを参照。

1994年度センター試験地学IB

戻る  このページのトップへ  目次へ  home


用語と補足説明

露頭線と地質断面図露頭線が地質図上ではどのように現れるのだろう。もし地層面(層理面)や不整合面が水平ならば、その露頭線は当然等高線に平行(つまり同じ高さ)になる。また、地層面(層理面)や断層面が垂直であれば、その露頭線は地形図(等高線)に関係なく直線になる。

 地層面などが傾いているときは複雑である。谷の地形と尾根の地形について、地層面(や断層面など)が地形の傾斜と逆向きに傾斜している場合、地層面の傾きが地形と同じだがより急傾斜の場合、地層面の傾きが地形よりゆるい場合の計6とおりのパターンとなる。下の左が谷の地形、右が尾根の地形であり、a(青)が地層面と地形の傾きと逆向きの場合の露頭線、b(緑)が地層面の傾きと地形の傾きが同じだが、地層面の傾斜の方がゆるい場合。c(赤)が地層面の傾きと地形の傾きが同じ向きだが、地層面の傾きの方が急な場合である。

地質断面図断面図の書き方を知っていると、上のようなパターンを憶える必要もない。たとえば下上図のような地形図上での露頭線があったとする。

 まず地層の走向を求める。地層面(地質図上では露頭線)とある高さの水平面の交線が走向である。だから、下図ではa−b(500m)、c−d(400m)、e−f(300m)のどの高さでも、露頭線とある高さの露頭線が交点を結んでやれば、それがそれぞれの高さの走向である。下の図では走向はおよそN30°Eとなる。

 ふつう地質断面図は走向に垂直な方向で書く。下図ではX−Yの断面図を書いている。最初に地形の断面を書いておく。X−Yと等高線が交わったところを、下の断面図を描く場所に持って行く。下図では茶色の線が地形の断面図である。水平距離と高さのを同じ縮尺で書いておけば、傾斜もこの断面図から求めることができる。500m、400m、300mの走向線は地層面のそれぞれの高さを意味しているわけだから、下の断面図の500m、400m、300mの高さに持って行く。これらの高さをなめらかに結べば、それがその地層面の断面図となっている。

 こうしたことを根気よく、各露頭線で作図をすれば地質断面図が描ける。地質断面図は地表の状態が地下まで続いているとした図であるので、地下で急に変化している場合もあるが、ふつうは地下500m程度まではこうした方法で描けるという。

 

戻る  このページのトップへ  目次へ  home


このページの参考になるサイト

産業技術総合研究所地質調査総合センターの地質図のホームページ:http://www.gsj.jp/geomap/

戻る  このページのトップへ  目次へ  home