世界一シンプルな進化論講義

世界一シンプルな進化論講義 更科功 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06538292-9 1,200円+税 2025年1月

 進化論を体系的に解説するのではなく、いろいろなトピックを解説して、全体として進化論を総合的に解説する形。そのテーマは目次を参照。
 重要と思ったのは、「進化は進歩ではない」とか、「生存競争は生存闘争でない」ということ。

 前者はやはり進化系統樹でヒトがその真ん中の頂点に位置するという図のイメージが強いのだと思う。ヒトが一番進化した動物=一番進歩した動物=一番優れた(エライ)動物という誤解。本当は系統樹それぞれの末端が40億年近い生物の進化の結果、それぞれの現時点の到達点である、そういう意味で現在の生物の進化上の位置はみな同じ。

 後者はダーウィン自ら誤解される可能性が高いと心配していたという。これは「世の中のマルクス主義は私と関係ない。」と生前のマルクス自身がいっていたことに通じるものがある。実際に自民党広報誌の4コマ漫画「 教えて!もやウィン」でも、 「変化できるものだけが生き残る」と進化論を誤用しつつ、憲法改変を正当化していた。

 用語として、「優性」「劣性」は「顕性」「潜性」というようになっているのは知っていたが、「対立遺伝子」を「アレル」というようになっているのは知らなかった。「対立」だと敵対関係を連想するからなのだろうか。それなら「同座遺伝子」の方が直截でいいと思う。

 「ミトコンドリアイブ」の誤解についても解説してる。人類の一人を取り上げると、彼(彼女)は2人の親、4人の祖父母、8人の曾祖父母という具合に過去に遡れば、祖先はどんどん増えてきて、その中の一人がイブというだけ、つまりイブがアフリカで発見されてということだけでは、アフリカが人類発祥の地ということにならないこと。

 この本では宇宙生命についても少し言及している、。何しろ、地球型生命しか知られていないので、地球型生命に似てるのか、まったく違うのか、現段階ではわからないとしかいいようがない。自分も筆者同様に、生命の定義・イメージが変わる可能性が高いと思う。

 生命の定義について日本では、「膜によって内と外に別れる」「代謝を行う」「繁殖する」の3つを挙げる人が多いと思うが、欧米ではさらに「自己と他者を区別する」「熱力学的平衡ではない状態を保つ」「ダーウィン進化する」も上げる場合が多いようだ。とくに最後はたんなる「進化」ではなく、「“ダーウィン”進化」とするところが味噌だと思う。

目次
まえがき
第1講義 進化とは何か 『種の起源』をめぐる冒険
第2講義 自然淘汰とはなにか もっとも曲解されたダーウィンの主張
第3講義 さまざまな生物から進化を考える
第4講義 遺伝子から見た進化論 ヒトはいかに誕生したのか
第5講義 さまざまな生命現象と進化論
第6講義 ヒトをめぐる進化論
あとがき
さくいん

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2025年3月記

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