琉球処分 塩出浩之 中公新書 ISBN978-4-12-102860-0 1,000円+税 2025年6月
明治政府による「琉球処分」(1872年〜80年)の過程を詳しく追う。「琉球王国」は1609年の薩摩藩軍事侵攻により、明(→清)と薩摩藩(幕府黙認)の二重朝貢を強いられることとなった。明に対してはできるだけ薩摩藩の姿を見せないように。
この二重朝貢は琉球王国−明(清)−薩摩藩(幕府)の三者にとって危ういバランス、その危ういバランス上で260年以上存続した琉球王国、見方によっては三方一両損といえるかもしれない。
だが、清よりいち早く“近代国家”の仲間入りした日本(明治政府)は、強引に琉球の領土組み入れを図る、それに対して琉球王国は従来の二重朝貢体制を維持しようとする、両者の駆け引きはもちろん武力を背景とした明治政府の思い通りになる。
感想は「固有の領土」という概念(言葉)は非常に曖昧なものだということ。とくに東〜東南アジアにとってときの中国王朝に朝貢しているという王国は独立国なのかという問題。まして、二重朝貢していた「琉球王国」をどう見るのか、位置づけるのか。これは「北方領土」にも通じる問題。
もう一つ、この本ではさらっと扱われているが、二重朝貢するために琉球王国は先島諸島(宮古列島、八重山列島)の人たちには過酷な税(人頭税)を課していてという問題もある。つまり、「琉球王国」」が望んだ二重朝貢は、「琉球王国(琉球王朝)」を守るということが第一義だったということ。先島諸島の人たちは「琉球処分」の後どうなったのだろう。
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2025年11月記