夢を叶えるために脳はある 池谷祐二 講談社 ISBN978-4-06-534918-2 2,200円 2024年3月
2000年卒同期会に行った際、講談社に勤めているMさんに、最近面白い本はないかと聴いたときに、この本を紹介されたばかりではなく、出版されたら早速送ってくれた。
700ページ近い大部の本だが、高校生との対話という形式なので、読む分にはすらすら読める。しかし、内容はとても高度、知覚、意識、考えるって何だろう、それ以上に自分とは何だろうという迷宮に入っていく。その脳内の作業の実体は、シナプス間で走る電流(ナトリウムイオンの流れ)に還元されるが、それがどうなったら“自己”になるのか。
AIとの比較も出ている、というか現在はもうAIがどうやって一つの考えを出すのか、その過程がすでにブラックボックスになっていて、それを研究対象にしている人もいるらしい。一部ではまだ、「創造、芸術、発明、ひらめき、直感、気遣い、気が利く、カウンセリング」などは「人ならでは」のものと思っている人も多いと思う。だがそれも、風前の灯火というより、すでにAIの方が優れているのも出始めている。
思えば、初めてコンピュータを習った50数年前は、コンピュータは単純計算は得意だが、画像処理はできない(できっこない)ということだった。現在では、画像処理も得意分野の一つになっている(X線画像診断、顔認識など)。囲碁のAIもすべての手を読んでいるのではなく(これは計算機でも大変)、“直感”というべき部分もあるという。
結局最後は、人は脳を使って自分やまわり、そして宇宙までを認識している、つまり脳が認識するから自己や宇宙があるという、宇宙論における「人間原理」(我々の宇宙は我々の存在にきわめて都合よくできている→我々が意識しているから宇宙がある)につながっていく。
※ この本で紹介されているレーヴン漸進的マトリックス検査(IQ検査)はこちら。
2024年4月記