大陸の誕生 田村芳彦 講談社ぶるーバックスISBN978-4-06-535249-6 1,100円+税 2024年4月
海洋地殻は玄武岩(玄武岩と斑糲岩)、大陸地殻は安山岩と、海洋と大陸はたんに地球表面の高低ではなく、構成している岩石から違う。玄武岩質マグマは、マントル上部でのマントルの主要構成岩石かんらん岩(主要構成鉱物はかんらん石と輝石)の部分溶融で生じる(初生マグマ)。では、安山岩は?
この本では、未だよく解明されていない安山岩質マグマの発生ついて考察する。すなわち、既知の学説(定説)を解説するのではなく、筆者の考えを提示する。
従来の安山岩質マグマの発生の一つの説明はマグマの分化(晶出温度の高い鉱物ほど早く結晶になるので、残りの液体(マグマ)の組成が変化して玄武岩質マグマから安山岩質マグマになる)、もう一つは既存の大陸地殻の再溶融、ただ、これだけでは安山岩質マグの少ないし、大陸はそれ以上成長しない(地球の歴史的には大陸地殻は増えていることがわかっている)、という矛盾があった。
モホ面は地球のどこでもあるのではなく、はっきりしない場所も多いといっている。
筆者は、マグマはマントルで発生するといっても、深さによってその組成は変わり、深さ30km以上だと玄武岩質マグマ、30km頼も浅いと安山岩質マグマになる、つまり、玄武岩質マグマが分化したのではない初生マグマが安山岩質の場合もあると主張する。さらに、海底火山の溶岩から、玄武岩質マグマから分化したのではない、初生マグマとしての安山岩質マグマ由来の安山岩を見つけた、それも2種類とする。
西之島新島が安山岩の溶岩を噴き出しいているが(伊豆諸島の多くは玄武岩質)、これは初生マグマらしい。日本列島の火山の多くは安山岩質マグマだが、これは大陸地殻の再溶融なので性質が違う。うまり、西之島新島は大陸の卵ともいえるので、注目されている。ただ、西之島浸透が大陸になる可能性は低く、玄武岩質マグマが混じり、カルデラ噴火を起こす可能性が高い。
筆者は最後に、地球上での生命の発生の場も提唱している。すなわり、地球には早くからプレートテクトニクスがあり、つまり海水がマントルに持ち込まれることによって岩石の融点が劇的に下がってマグマが発生する、さらにプレート同士の押し合いでマントルが露出する場所も出来る、その地表でマントル(かんらん岩)と水が反応して出来る、強アルカリの泉が生命発生の場であると。現段階では、否定する材料もないが、肯定する材料もない。ちょっと我田引水が強い気もする。
※ 筆者は最後に安定した職を得るまでの苦労も書いている。こうした現実が、若い人が科学者への道を選びにくくなっていることは明らかだと思う。
目次
序章 岩石学者なのに“海の研究所”に入ってみた
第1章 大陸とは何だろう? 地球の層構造を知ろう
第2章 地殻の材料はどうやって生まれる? マグマの生成条件を知ろう
第3章 大陸地殻の材料はどこで出来る? 安山岩マグマの生成条件を知ろう
第4章 西之島は大陸の卵か 安山岩生成モデルを検証しよう
第5章 最初の大陸はいつ出来たのか? 40億年の歴史を復元しよう
終章 岩石学者が大陸と生命の起源を考えてみた
2024年8月記