島はどうしてできるのか 前野深 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-536465-9 1,200円 2024年7月
火山島は、火山噴出物の量(とくに溶岩)>海(おもに波)の侵食量のときに成長するというのは当たり前。
西之島新島のマグマの組成が、当初の安山岩質から変化していて、現在は玄武岩質に近づいているという。安山岩は大陸を構成する代表的な岩石、玄武岩はハワイやアイスランド、日本では伊豆大島などの海の火山、さらには海洋プレートの岩石。だから西之島新島は大陸の誕生ではなく、普通の海の火山になり始めたということなのか。つまり、当初はマグマの分化が進んだものが噴出していたけど、最近はマントルで発生した玄武岩質マグマ(初生マグマ)が混ざってきたということなのか。
ただ、この本ではそこまではっきりいっていない。あと、火成岩の分類とその意味について、ほとんど知識がない読者も多いだろうから、その辺の解説もあるといいと思う。
これまで講談社ブルーバックのWeb記事をまとめたものだという。そのためか全体の統一感があまりないので、上に書いた火成岩のことや。全体をつらくぬ火山学の解説も欲しいところ。いちおうコラムで断続的に触れられているが。
著書がこれまでに訪ねた様々な火山島(6月に行ってきたばかりのサントリニ島もあった)の記事は楽しいが、これらももう少し火山学的な解説が欲しい。
それにつけても、火山国といいながら、火山の専門家があまりいない、かつて火山学者は(火山学会は)40人学級と自嘲していたが、現在は30人、下手すると20人学級になっているのではないか、こうして現状が心配。インドネシアなどはもっと層が分厚いと思う。
それにつけても、火山学者たちはあっさり「破局噴火」(超巨大噴火、カルデラ噴火)をいうけど、どの程度知られているのだろう。一端起これば、南海トラフ巨大人どころではない、日本(の社会)が“消滅”するし、対策もない、考え出したら夜寝られなくなるものなのに。
目次
第1部 島の誕生から成長へ 〜「若い島」では何が起こっているのか
第1章 目のあたりにした火山島の誕生 〜西之島ができていくプロセスを目撃できる幸運
第2章 成長し続ける火山島 〜西之島噴出したての岩石から見えてきたもの
第3章 海底火山の爆発的噴火 〜派手な噴火と短命だった福徳岡ノ場
第4章 薩摩喜界ヶ島に出現した新島 〜人が住む場所近くの海域噴火に目を向ける
第5章 何が噴火の様式を決めているのか
第6章 噴火による破壊と創造
第7章 古代文明滅亡の謎を秘めたエーゲ海の火山島 −サントリニ
第8章 巨大化した火山島「西之島」
第9章 溶岩流・噴煙・火砕流 〜火山の成長を支える、多様な表面現象
第2部 島の成長から崩壊へ 〜「変化し続ける島」を探る
第10章 町を丸ごと飲んでしまう火山灰 −活動を続けるモンセラート
第11章 江戸時代の山体崩壊と大津波の痕跡 −日本海に浮かぶ絶海の孤島「豊島大峰島」
第12章 噴火で再び無人島に −戦争から立ち直った小島、アナタハンの災禍
第13章 海域火山の密集地帯で何が起きているのか −北マリアナ諸島
第14章 岩屑なだれ・津波・カルデラ崩壊 −火山が生み出す破壊的に表面現象
あとがき
参考文献
さくいん
2024年9月記