生命と非生命のあいだ 小林憲正 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-535672-2 1,100円+税 2024年4月
生物学(生物化学)の立場から生命の起源に迫る。筆者はRNAワールド説の派生形「がらくたワールド説」の提唱者。
生命の起源についての過去の説を振り返り、また宇宙からもたらされる(存在している)有機物の意味を解説する。
「生命の定義」は難しい、その一つの原因が我々が地球の生物しか知らないためというのは、その通りだと思う。そこで、筆者は最近は男女の区別もじつはなかなか難しい、そこで、性ホルモン、性指向、性辞任の3次元スペクトルをとれば、個人個人をプロットできる、それと同じように生命と非生命を1:0で区別するのではなく、中間的存在も認めた方がいいとする。
いずれにしても、現在のところ、化学進化と生命進化の溝はまだ大きいといわざるを得ない。
※ この本でも宇宙人とであるかについて、ドレークの方程式が出てくる。結局の所、(我々人類が生きている間に)宇宙人とである得るかどうかは、我々人類が(文明を保ったまま)どれだけ生きながらえているのかという結論は同じ。
※ 「大陸の誕生」(田村芳彦、講談社ブルーバックス)では、生命発生の場としてプレートの運動で持ち上げられたマントル(かんらん岩→蛇紋岩)が地表で水と反応して強アルカリの泉を作った、そこで高分子が合成され、やがて生命が誕生した(→現在の好強アルカリ微生物)という説を出しているが、根拠はこうした環境は有機物の高分子化(脱水)を起こしやすいという点だけなので、この本のように総合的に考えていない、だから説得力が弱いと思う。
目次
序章 生命は奇跡か必然か
第1章 生命はどこから来たのか、生命は何者か
第2章 「RNAワールド」への道
第3章 「生命の起源」は宇宙にあるのか
第4章 いつ生まれたのか、どこで生まれたのか
第5章 「がらくたワールド」という考え方
第6章 地球外生命から考える地球生命
第7章 生物進化から考える化学進化
第8章 生命のスペクトラム
あとがき
索引
参考文献
2024年8月記