生命はゲルでできている 長田義仁 岩波科学ライブラリー ISBN978-4-00-029725-7 1,400円 2024年3月
固体でもなく、液体でもなく、気体でもない不思議な状態であるゲル。ゼリーやこんにゃくのようにぷよぷよぷるぷるしていて、水を大量に含んでいるのに水が流れ出てこない。
※ 固体と液体の境界は曖昧、この本にあるように、時間と空間を特定しないと区別はできない。
生命の体はこのゲルの状態になっている。それは弾性的でもあり、粘性的でもあり、つまり粘弾性である。引っ張りにも耐え、衝撃を和らげ、摩擦を減らすことことができる。水を蓄え、化学反応の場を作り、物質・エネルギーの運搬の役も担っている。
たとえば赤血球、広い血管内では中央が凹んだ円盤形をしているけど、毛細血管を通り抜けるときは、瞬時にその形を通り抜けやすい形に変えることができる。心臓の拍動の力学的エネルギーのうち、血液の流動に使われるのはほんの一部で、大半のエネルギーは赤血球の弾性エネルギーとして蓄えられている。
ゲルにはまだ未解明のことは多いが、将来的にはヒトの器官・組織を作ったり、薬の体内での運搬に利用したり、再生医療における細胞増殖の足場(スキャホールド)にも使えるようになるかもしれない。
※ ガラスは長時間かけると流れるという実例に、ヨーロッパの古い教会のステンでグラスを挙げ、その下部の方が厚くなっているとしているが、どうなのだろう。この程度の時間では流れない(流れたことが確認できない)、当時の技術の限界のため(均一なガラスができなかったので、厚い方を下にした)なども異説もある。
2024年4月記