古代アメリカ文明

古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像 青山和夫編 講談社現代新書 ISBN978-4-06-534280-0 1,200円+税 2023年12月

 まず、「世界四大文明」(※)とは学説でも何でもなく、たんなる「教科書用語」にしか過ぎないことから始める。

※ これを使い始めたのは江上波夫で、「ほんとはいろいろあるさ、わっはっは。語呂がいいだけ。」ということらしです。

 アメリカにも他から導入されたのではない一次文明が栄えた(日本は中国の影響下での二次文明)、しかも「四大文明」のよう大河のほとりでもない。それがメソアメリカ(中米)のマヤ・アステカであり、南米のナスカ・インカである。

 これらが取り上げられるとしても、興味本位(生け贄、人類の滅亡、オーパーツなど)のものが多く、正確なイメージが伝えられていないという怒り、また「新」大陸を発見したのは、コロンブスや、またバイキングのエイク・エリクソンという勝者史観の束縛を指摘する。「新」大陸の発見者は、それらより遙か前にベーリング海峡を渡ったアジア系の狩猟採集民であるのにという思い。

 彼ら開発した食料、トウモロコシ、ジャガイモ、トマト、トウガラシなどが今日の人類社会を支えているのに、彼ら自身はヨーロッパ人による収奪・虐殺・虐待、さらには持ち込まれた病原菌による大量死という目に遭ってるという義憤。だから、最後に高校歴史教育への働きかけも紹介している。
 これらがこの本を書く駆動力になっているようだ。古代アメリカ史を俯瞰できる本だと思う。

マヤ文明:前1100年〜16世紀、複雑な文字体系、20進法、暦。
アステカ王国:1428年〜1521年、簡単な文字体系
インカ国家(←“帝国”でないことに注意):1400年頃〜1532年、キープ(ロープの結び目)で情報伝達・保存
ナスカ:地上絵は前400年頃〜、地上絵の最盛期は後100年〜300年)

目次
序章 古代アメリカ文明 メソアメリカとアンデス(青山和夫)
第一章 マヤ文明 マヤ文字・神殿・ピラミッド(青山和夫)
第二章 アステカ王国 テノチティラトンのモニュメント・絵文字を読む(井上幸孝)
第三章 ナスカ 地上絵はなぜ制作されたか(坂井正人)
第四章 インカと山の神々(大平秀一)
終章 古代アメリカ文明の実像に迫る(青山和夫)

 

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2024年4月記

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