保守のための原発入門

保守のための原発入門 樋口英明 ISBN978-4-00-061650-8 2,500円+税 2024年8月

 筆者は大飯原発運転停止判決(2014年)、高浜原発再稼働差止決定(2015年)の判断をしたもと裁判官。みずからを“保守”であると称し、原発問題は“国防”問題であるという認識を持っているともいっている。

※ 福島原発重大事故については、運がいいことが何回も重なって東日本が壊滅を免れたといっている。個人的には最大の幸運は、爆発後3日間ほど海に向かって風が吹き続けたことだと思っている。あれが北寄りの風だったら、東京を含めた関東も人が住めなくなっていたはず。

 なぜ筆者は原発稼働に反対する立場なのか、そのもととなる原発の認識、さらに電力会社が説明するその安全性や経済性への疑問、だがこれらは原発を知っている人ならそれほと新鮮なものではない。

 やはりなんといっても同じ法曹界のトップである、最高裁判事に対する具体的な批判が注目される。 つまり東京電力の責任を認めながら、国の責任は認めないというその判決(2022年6月17日、4人中3人)に対しては、判事としての能力もないと言い切る(反対意見を述べた1人の意見は高く評価)。

 あと「国防」についてはぼんやりとしか考えたことはなかったが、筆者がいうように戦争状態になったら(あるいはテロリストにとっては)、原発は格好の攻撃対象になる可能性がある。国際法なんて関係ないわけだし。それも原子炉本体を狙わなくても、周辺施設、たとえば2011.3.11で明らかになった電源の脆弱性を狙うとか、冷却水取り入れ口を狙うとかすれば十分だし。

 筆者のように原発は事故→爆発(それに伴う放射性物質放出)の可能性があるから危険、だから原発はダメという人も多いと思う。でもそればかりではなく、原発は事故を起こさず「正常運転」を続けたとしても、その間ずっと放射性廃棄物を作り続けること、その量が膨大になっていくことが最大の問題だと思う。つまりそれは、負の遺産、ツケを子々孫々に回していくことだから。

目次
はじめに
第1章 原発の実態
第2章 原発の本質
第3章 原発と司法
第4章 保守と原発
終章

本文に記した以外の参考文献
あとがき

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2024年9月記

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