ダーウィン

ダーウィン 鈴木紀之 中公新書 ISBN978-4-12-102813-6 2024年7月 1,000+税

 ダーウィンの生涯と業績を簡潔にまとめる。業績としては、「種の起源」(進化論)だけではなく、もちろんすべて進化論につながっているのだが、地質学、植物学、動物学、家畜やペットなどの幅広い研究と、その基礎となる実験方法、たぐいまれなる観察眼も解説する。あと、在野の科学者でありながら、当時の一流の科学者との人脈もあり、さらには研究に於いて、大勢の協力を仰ぐ(クラウド・ファンディン方式)も特徴かもしれない。

 ダーウィンの天才は、この本ではあまりはっきりと書いていないが、当時の他の人たち(進化を論ずる人、あるいは他の科学者)との決定的な違い、すなわち人類も動物の一員であること、そのすべてが(認識力なども)動物からの進化の結果であるとはっきり認識して、その立場を明らかにしていることだと思う。たしかにウォレスはダーウィンよりも先行していたり、また素晴らしいアイデアを出したりもしているかもしれないが、人類を特別視してしまったところが、進化論における今日の彼の評価であり、それは妥当だと思う。

 生命の定義(特徴?)について、日本では「膜で囲われていること」、「代謝すること」、「繁殖すること」の3つを挙げる人が多いと思うが、欧米ではこれに加えて「自己と他者を区別する」「熱力学平衡でない状態を保つ」も挙げられ、さらに「ダーウィン進化する」を加えている人が多いような気がする。とくに「ダーウィン進化」は、「進化」だけではなく、これに「ダーウィン」がついていることが味噌だと思う。つまり、ヨーロッパの近代科学は、キリスト教といかに対峙するかということが、(たぶんいまでも、潜在的かもしれないが)大問題なのだと思う。

 近代科学に於いて、その礎を築いた二人、ニュートンとダーウィンが、ともにイギリス人であることも不思議。また、あれだけの天才でありながら、二人とも生きている間に既に科学者としての名声を受けたいたことも驚き。

 それにつけても、一生高等遊民で暮らせたのはうらやましい。もちろん自分なら、何ら業績を残さず(残せず)、一生を終えただろうけど。

目次
まえがき
序章 ダーウィンが変えたもの
第1章 ビーグル号の航海
第2章 『種の起源』の衝撃
第3章 人間の由来と性淘汰
第4章 植物と生きた晩年
終章 もしダーウィンが現代に生きていたら
あとがき
参考文献
図版出典
ダーウィン関連年表

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2024年9月記

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