アメリカはなぜ日本より豊かなのか?

アメリカはなぜ日本より豊かなのか? 野口悠紀雄 幻冬舎新書 ISBN978-4-344-98743-2 1,020円+税 2024年8月

 かつて一世を風靡した“超”整理法などの“超”シリーズの著者。1940年生まれということなので、すでに80代半ば。人生の最終局面を迎え、日本の現状を憂いて提言をする。

 通奏低音としてはアベノミクス+日銀の金利政策に対する批判がある。一人あたりGDPでは一時(1990年代前半(IMF統計))はG7の中ではトップだった日本、それがいまでは最下位、まさに一瞬だけ繁栄した奇妙な国(「21世紀未来圏 日本再生の構想」寺島実郎 岩波書店)になってしまったという現実。その原因と対策を探る。
資料:GLOBAL NOTE 出典:IMF
https://www.globalnote.jp/p-data-g/?dno=8870&post_no=1339

※ 添付のグラフは上記サイトで作成、G7+ルクセンブルグ+ノルウェー

 それは一時の成功に酔いしれて、さらなる技術革新を行えなかったこと、その原因は企業の現状維持の姿勢(いつまでも、いつも「鵯越え」に固執するしか能がなかった旧日本陸軍と同じ)と、それに基づく優秀な人材の確保を怠ったことを挙げる。つまり、優秀な人材を確保するような給与水準から離れていること。

 さらに優秀な人材の確保は、人口減の今日、「開かれた世界」からでしか得られないことも主張する。そういう観点から、これは日本ばかりではなく、(習近平政権(中国共産党政権)の)中国や、これまで成功してきたアメリカでさえトランプ政権になれば、日本と同じ道を歩むだろうと予測する。

 かつての日本の成功は、欧米の先進的な技術を学び(盗み)、それを細かく改善してきたことにあるという。これはその通りで、中国を「技術泥棒」と評する向きもあるようだが、それは過去の日本もやってきたこと(明治・大正時代の日本製品の評価「安かろう悪るかろうコピー製品」を克服した努力)。今後いかに独創性溢れることができるか、それが問題だと思う。

 あと、賃上げの評価も、単純な賃金上昇率ではなく、定期昇給を除いた純粋ベースアップ(ベア)で見なくてはならないということも、その通りだと思う。

 世界経済は得体の知れない生き物だという印象があるので、こうした現状認識は正しいとしても、それにいかに対応・克服するのかについては、正直なところよくわからない。

 この本では、各章の最後に章のまとめが出ている。ありがたい。

※ マルクス主義経済学で、現実的“もの”を生産しない「教育(労働)」は、どのような価値(剰余価値)を生産しているのかという問題があり、その一つの答えが「労働力の質」というものであった。日本の教育は、その点あまり質のいい労働力を生産できなくなっているのかもしれない。これは資本家にとっても大きな問題のはずだが、彼らの答えは「人づくり」という曖昧なもの、そしてその人は、企業・政府にとって従順な人と同義であることが多い。これでは将来はまっ暗。

目次
はじめに
図表目次
第1章 日米給与のあまりの格差
第2章 先端分野はアメリカが独占、日本の産業は古いまま
第3章 円安に安住して衰退した日本
第4章 春闘では解決できない。金融正常化が必要。
第5章 アメリカの強さの源泉は「異質」の容認
第6章 強権化を進める中国
第7章 トランプはアメリカの強さを捨て去ろうとする
おわりに
索引

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2024年11月記

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